FOXHEADS さん
50代前半
男性
誕生日 : 8月7日
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2018年7月30日 to バトル・オブ・ザ・セクシーズ
ミュージック・ビデオ界出身で、映画としては「リトル・ミス・サンシャイン」「ルビー・スパークス」を手掛けたバレリー・ファリスジョナサン・デイトンの監督作品でFOXサーチライト配給、という事で、決してオーヴァーグラウンドな映画では無いと思わせて、主演がエマ・ストーンとスティーヴ・カレルって?それには訳があった。タイトル通り、男女の性別を賭けた闘いではあった。テニスの現役トップ・プレイヤーの女性ビリー・ジーン・キングと、かつて世界王者だったオッサンプレイヤーであり、徹底した男尊女卑主義者で人を舐めまくった行動がセンセーショナルなボビー・リッグスによる、お互いの立場と意地とプライドを賭けた試合を、そこまでに至る過程における各々の心情描写を経て、実際の試合の模様をクライマックスに、比較的事実に忠実に再現した作品。この内容を現代の社会に向けて作り上げる意義と言うのは、ここで語れないが、当初持っていた映画のイメージとはかなり違っていたのは確か。単純な男×女のバトルでは無いのであった...。
特筆すべきは、やはりファリス&デイトンが作り上げるポップでカラフルでフザケてて、しかしながらリアリティも同居する独自の世界でしょう!特にボビー・リッグスの徹底したオフザケの描き方は、実際にそうだったかはさておき、監督の並々ならぬ執念を感じるし、それが変な笑いに昇華されており、意図として成功していたのではと思う。もちろん、人間の陽の部分と、陰の部分の描き方の対比もお見事だった。単純に1970年代の雰囲気を忠実に描いた...と言えば簡単だが、それを超えたヴィジュアル世界が素晴らしい作品でした。それでいて、映像テク偏重の作品に終わらない、社会的なメッセージと意外な裏メッセージも孕んだ巧みな傑作でした。
2018年7月29日 to ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス
ライ・クーダーがリリースしたキューバの老ミュージシャンとのコラボレーション・レコーディングを基に、ヴィム・ベンダース監督がメガフォンを取って製作された1999年の音楽ドキュメンタリー映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」から20年弱の歳月を経た姿を映したドキュメンタリー作品。コンパイ・セグンドなどの前作の中心となった何人かを他界により失い、残されたメンバーと後継者達からなるグループによって行われる最後のツアー「アディオス」ツアーの模様を中心とした、「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」続編であり完結編と言える内容。今作では、前作でスポットの当たらなかったミュージシャンの人生も捉えて、より多くのメンバーの足跡を辿り、志半ばで逝ったメンバー個々のパーソナルな部分にも触れている。これで「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」は終焉するのだろうから、そりゃセンチメンタルな部分はあるが、悲壮感が微塵も感じられないパワフルな演奏は、熱い魂が炸裂する熱すぎる音楽でした。その熱さを感じて意思を継ぐであろう次世代のミュージシャンにより、その後もキューバの音楽は熱く鳴り響いていくのだろうという期待を抱かせる。ちょっと切なくて、でもものすごく熱い作品でした。
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2018年7月9日 to ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー
「スター・ウォーズ・トリロジー」に絡むスピン・オフシリーズ「ローグ・ワン」に続く第2弾は、若き日のハン・ソロを主役に据えた冒険譚「ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー」。これが全米興行振るわないってのが不思議な位、良く出来た冒険ストーリーでした。スラムみたいな所で暴れていた青年時代、外の世界へ脱出しての危険な日々、幼馴染の女性との淡いお話、何より重要な永遠のバディ、チューイことチューバッカとの出会い、大きな組織との駆け引き、そしてチューイと共に外せない相棒、ミレニアム・ファルコンとの運命的な出会い...など、別れと出会いの中で、青年ハン・ソロが成長していく様を冒険活劇と共に描いて、全然飽きさせない2時間超でした。シリーズ全部を観ているけどコアなファンではない僕のような奴には、分からないイースター・エッグがあった様ですが、細かすぎて伝わりませんでした...。全体的に映像に埃っぽさ(?)が無く熱量も少なく感じる(冷房の季節だから?SWと言えば暖房の季節だからなあ...)、キーラがああなっている意味が分からない、チューイとの出会いもサッパリしてたなど、何か色々あっさり感が強かったなー、って印象はあり。もっとネットリとしてても面白いんじゃ。これ以降に絡んでくる濃〜いキャラ、ジャバ(匂わせる部分はあったけど、実名は出なかった)、ボバ・フェット、グリードなどに繋がるエピソードが若干匂わせる程度しか無かったよなあ。続編で描くつもりだったんだろうか。それこそ興行収入的に失敗したために、続編がポシャってしまったら、大きすぎる損失でしょう。巨額な借金をしてでも作って欲しい!あ、でも一番足りなかったのは、フォースですかね!一瞬だけ...。
2018年7月9日 to ワンダー 君は太陽
前作「ウォールフラワー」では、原作・脚本・監督を努め、独特な味わいの青春映画を作り出したスティーブン・チョボウスキーが、R・J・パラシオの児童(だけではないが)小説「ワンダー」を映画化。監督が”原作の忠実な映画化”とインタビューで言っていたが、やはり2時間程度でこの原作の完全映画化は無理か。時間が足りないだけで無く、色々な登場人物の視点で同じ時系列を別々に描いたりするし、続編だってある。だから完全は無理としても、チョボウスキー作品には魅力がある。温かみのあるサニー・サイドな映像、ストーリー、そして「ウォールフラワー」に顕著だった音楽の使い方がイチイチ良い。明るく前向き感のあるパッション・ピットと、原作のインスピレーションの元だというナタリー・マーチャント「ワンダー」は、是非本編中で使ってほしかったけどね。「ウォールフラワー」のデヴィッド・ボウイの様に。肝心の内容の方は、”泣ける映画”である事は間違い無いが、単に”可哀そう””良かったね””感動した”だけでは終わらない。主人公だけではなく、登場する人々の良い事も、悪い事も、悲しい事も、嬉しい事も、どーでも良いことだって、何だか観る側が感情を揺さぶられてしまう、そんな作品。原作もそうだったし、そういう意味では”原作の忠実な映画化”が成功したってことでしょうね。素晴らしいです。
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2018年7月9日 to ファントム・スレッド
監督作品群は傑作揃いだが、取っ付きづらさと理解しづらさが障害になり、一部の熱狂的な支持を受けるものの、世間一般からは”怪作監督”と呼ばれてしまうのがしゃくだが、何はともあれ、PTAこと我らがポール・トーマス・アンダーソンの最新作。盟友ダニエル・ディ・ルイス最後と言われる出演作でもあります。1950年代イギリスのオートクチュール・デザイナーとして華々しく成功を収めた偏屈なデザイナーと、彼がミューズに選んだ元ウェイトレスの女性との心の葛藤と駆け引き、禁断、倒錯、若しくは究極の愛の姿を描く。鑑賞する側の心持ちや性別(こっちが顕著かな)でかなり見方が変わる作品なれど、これを受入れられるかどうかが、映画本編同様に試される作品ではある。すんなり受け入れられる人は少ないかも知れないし、ストーリーが”愛”か”変態”か”ホラー”か、受け取り手の捉え方、下手すれば体調(笑)で変わる作品なれど、PTAの作品として完全にウエルカム。完璧にノックアウトされました。毒のあるストーリーとは裏腹に、英国上流階級の豪華絢爛な衣装やインテリアなどの世界を、どこかもやっとした映像で描く様が美しい。「ザ・マスター」を超えるノスタルジアによって異世界への誘いを拒絶しなければ、至福の時間を過ごせます。こちらも盟友と言えるジョニー・グリーンウッドが手掛けた流麗でゴージャスな音楽も素晴らしい。ジョニーは、直近の「ビューティフル・ディ」で聴かせた鋭角でヒリヒリする様なサウンドから一転、恐るべき振幅のある才能を発揮して豪華絢爛な音世界を作り出した。既に名匠の域に到達している。凄い。誰かが『召使』になぞらえていたけれど、そうは思いませんでしたねー、違いは”愛”の存在でしょうか。
2018年6月18日 to レディ・バード
グレタ・ガーウィグと言えば、「マギーズ・プラン」「トッド・ソロンズの子犬物語」「ジャッキー」「20センチュリー・ウーマン」などなどなど、目下売れっ子真っ最中な女優さん...ではあるけれど、「フランシス・ハ」で、イタくて失敗の連続を繰り返しながらも真っ直ぐ(かなり曲がってはいるけど...)に生きる女性を演じて共同で脚本も書いていた頃が良かったなあ...と本人も思っていたのかは知らないが、自身が裏方に徹した初監督作品である今作は、「フランシス・ハ」に匹敵する魅力に満ちていた!高校最後の日々を描いた青春映画ではあるが、ロマンチックばかりでも、トンチキ騒ぎばかりでも、増してや友情と涙ばかりでもないが、そのすべてを等身大に、受け止める”ダメなアタシ”に好感が持てる。背伸びして失敗、恋がしたい!で失敗、親に逆らって...失敗。そんな、青春なんて良い事とか悪い事ばっかじゃない、しかもはっきり言ってパッとしない。そんなフツーの高校生の日々が何とも愛おしく思えてしまう。「ラブリーボーン」のスージーと言えば分かりやすいシアーシャ・ローナンが演じる主人公”レディバード”に、男女関係なく共感を覚えてしまうから不思議。シアーシャはもちろん、ルーカス・ヘッジズ、ティモシー・シャラメという目下売出し中の男の子を、しれっとさらっと自然体に使ってしまうのも良いなあ。ガーウィグ監督がマンブルコア出身だって事をネガティヴに捉える向きもあったようだが、この自然体で等身大の青春の日常は、マンブルコアの精神そのもの。ガーウィグの出身地のシンシナティを舞台に選んでいるのも、何かイイなあ。大傑作!
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2018年6月18日 to ビューティフル・デイ
リン・ラムジーと言えば、「モーヴァン」「少年は残酷な弓を射る」など、救われない心を救済するかと思わせて突き放す作風が散見されるが、そういった浮遊する心への監督の鋭い眼光がピークに達したと言えるの今作だと思う。淡々としていながら、過激で残酷で、でも魂の救済を渇望する人々を見つめる視線には、微かな優しさも感じられる。少年期のトラウマを引きずりながら、満たされない現在を殺伐と生きているだけの男。人助けの様だが、実際には人殺しという家業に身を投じている彼は、大人にはツラく当たるが、少年少女にはどこか優しい。そんな彼が、大人の勝手な欲と汚さにより、あまりにも過酷な境遇に晒された少女と出会い、何かを共有する事によって、彼の精神は満たされたのだろうか...そのものズバリな邦題(原題は全然違う)に希望を見出したい。PTA作品の常連、すっかり映画音楽作家として成熟したジョニー・グリーンウッドの耳障りなまでに鋭角な音楽は、心に突き刺さるようで痛くて素晴らしい。ホアキン然り、ダイアン・クルーガー然り、昨年のカンヌの審査陣はちゃんとしてたんだなあ、と納得。
2018年6月18日 to ゲティ家の身代金
実際にあった誘拐事件、実際にあった大富豪の身代金拒否...という、実録物という事で、プロット的にはこうなるだろうなーの域を脱していなかったので、若干の肩すかし。でも傑作だった!ケヴィン・スペイシーがスキャンダルを起こして降板、急遽代役で撮り直し...という、色んな苦労話と逸話が絶えない作品なれど、そこばっか強調されたら、この映画の素晴らしさを見逃してしまう!リドリー・スコット爺といえば、やはり「ブレードランナー」「エイリアン」諸作の近未来〜未来か、「コロンブス」「デュエリスト」「グラディエイター」などの古代を舞台にした作品が多いが、今作は1970年代。その描き方がエグイ位に素晴らしい!完璧主義者(だと思っている)のスコット監督が描く70年代は、細かい描写や大物小物、人の仕草に至るまで、完璧としか言いようが無いと思った。そしてその監督のオーダーを完璧に演じたミシェル・ウィリアムズがやはり素晴らしいのでした。プラマーの天然演技もいいし、こんなちょい役(でもいい奴)でフランスの国民的俳優=ロマン・デュリスを使うのも凄い。素晴らしき演技者が入り乱れるが、その根っこには、傑作になりそうもない題材を傑作にしてしまう、リドリー・スコットありきの映画だと分かる。結局のところは傑作です!
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2018年5月18日 to フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法
3台のiPhoneだけで撮影したという革新的な映画「タンジェリン」を作り出したショーン・ベイカー監督の本格長編作。夢の国フロリダ・ディズニーランドのすぐ横、バッタもんのグッズ・ショップなんかが並ぶ地域に建つ観光客向けの安モーテル。公営住宅すら入れずにそこで暮らす母娘を中心に、同じような境遇の貧困層の人々の夏の日々を子どもたちを中心に描く。悪さばっかりだけど、夏休み中の子どもたちの毎日は冒険に溢れている。でもその近くには、激しく往来する車や変質者など、危険がイッパイ。無邪気だからこそ危うい子どもたちの日々を、一定の距離を置きながらも優しく見守っている管理人ボビーを演じた、アカデミー助演男優賞ノミネートのウィレム・デフォーはやはり素晴らしい。ボロボロの安モーテルだが、その内側とは異なり極端にカラフルな建物だったのは、華やかな外見でも必ずしも内側はキレイでは無く、色々な汚さが蠢いているのを表しているかのよう。でも、髪の毛や服や建物の色とフロリダの青い空との対比の映像美はお見事。子どもたちの毎日の無邪気な冒険と、厳しい現実に直面する親たちの暗い面の対比も各々を際立たせていた。ラストを含むストーリーにもぐっときた。
個人的にイマイチ乗り切れなかったのは、日本語字幕の子どもたちの悪態のせいか。特に日本のイマドキの子ども達の言動は非常に汚いが、それに寄せたかのような罵詈雑言のオンパレードが残念。オリジナルは、そこまで酷いこと言ってない&口調じゃないでしょ。ヒアリング力のある人は、字幕なしの方が良いかも知れません。あと、主人公の母親は、毒づきと素行が酷い女性だが、娘をこの上なく愛しているという設定だったのだろうが、それを演じたインスタグラマーの演技ではそこが伝わらなく、最後まで毒親で終わってしまった感があり、そこが一番残念。監督の意図なのかも知れないが...。
マジカルなラストは素敵です。圧倒的に支持します。マジック・キャッスルへ!
2018年5月17日 to ザ・スクエア 思いやりの聖域
スウェーデンの奇才リューベン・オストルンド監督作。前作「フレンチアルプスで起きたこと」同様、些細な過ちのはずだった行動が主人公を追い詰めていくが、今作では悪い方へ悪い方への突き進み方が徹底してすぎており、更にアイロニーとブラックなユーモアとたっぷりの毒の盛り度がやりすぎな位にスゴイ。アートの世界で成功を収めたキュレーターである主人公が、自身の”思いやり”の無い行動を重ねていった結果、これでもかと降りかかる不幸の連鎖。そのすべての元凶は彼にあり、上手く取り繕おうとしてもダメ、反省して償おうとしたって、謝罪したって、辞めたって許されない。裕福な知人や仕事仲間、部下、友人、娘たち金乞いの人たちまで、もしかして...と助けてくれそうな人々が、ことごとく助けにならずにむしろ足を引っ張りまくる。徹底して冷淡で悪ふざけに近いブラックな笑いを執拗に盛り込むあたり、監督はかなり偏執狂的にクドイ性格だなあ...そこが好き!やはり際立つのは悪意のある冷笑の嵐だが、その中に、現代の人間関係の希薄さやネット社会の脆さに対する警鐘を鳴らす。カンヌ映画祭でパルムドールを受賞したが、拍手と共に「恥を知れ!」との怒号も鳴り響いたというが、なるほど確かにけしからん話ではあるなー、と納得してしまう。個人的にはかなり好きだけどねー、大傑作!
はっきり掴めなかったのは、”カオスが訪れる”の件と、アパート住民の先住民族風の男性のところ。この二つって、組みになっていると思っていいんでしょうか?