すずらん さん
すずらんさんのレビュー一覧
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64件中1-10件
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痛々しいけれどひきつけられる(0)
2017年7月25日 to ウーナ
どうにもモヤモヤしてしまって二度映画館へ足を運びました。一回目は痛々しい展開だったけれど、この作品を恋愛映画として捉えた自分がいました。その一方で結局どうなの?という疑問は残り、数日悩んでしまった。
二回目は少女にとっては恋愛だったものが外側から見た時は明らかに虐待で、その溝を埋めるものを大人になったウーナは求めていたのかな、と。レイの卑怯なところは今も昔もウーナの純粋さ、まっすぐさを利用した/しようとするところだ。自分の性癖を隠し、新たな人生を守ろうとするレイに反吐が出そうだった。
ウーナ役は少女時代のルビー・ストークスもルーニー・マーラもとにかく素晴らしい。大人っぽさと気だるさを体現する少女時代のウーナと、過去を断ち切れず今を彷徨うような成長したウーナは外見と内側がそれぞれ逆のような印象で、この子が成長したらこうなるというのが納得がいくというか…外見がそっくりというわけではないのが怖いくらい。
レイ役のベン・メンデルソーン。さえない中年男性に見えるのに、不思議と魅力的に映るバランスがよかった。彼も本気だったのでは?いや、やっぱりちがうよな…と何度も迷わせる演技には参りました。
直接的な描写の少なさはセリフの過激さにつながりつつ、二人の繊細な演技が見る側の想像力をこれでもかと刺激するのがおもしろかった。閉鎖的で張りつめた空気に息が詰まってしまい、喉がカラカラになってしまった。
あと個人的に大好きなPJ Harveyの曲が使われているのですが、よく探してきたなあというかこの作品で使われるための曲だったのでは?と思ってしまうくらいぴったりで鳥肌が立ちました。
リズ・アーメッドもよかった。良くも悪くもウーナとレイだけで進むストーリーの中で、彼が「現在」を思い出させてくれるというか…存在感が光ってました。 -
さあ、言ってみよう!(0)
2017年6月12日 to 20センチュリー・ウーマン
Menstruation!(一番笑ったシーンでした)
私はシャツが大好きでよく着ている。ここ数年流行りの“前だけイン”するスタイルがしっくりきて、最近はずっと“前だけイン”していた。
映画を見た後、“前だけイン”をやめみた。開襟も堂々としたいが、ラッシュ時間に通勤する身としてはそれはちょっと難しいので休日には大好きなシャツを、好きなように、自由に着たいと思った。
この作品に流れる優しい雰囲気はなんだろう。それぞれが抱える問題、悩みも描かれていて、それをぼかすわけではないのに、光の輪郭みたいにふんわりした感覚で包み込まれている。
登場人物全員が愛おしくて愛おしくてしかたない!みんな大好き!ジェイミーとジュリーの切ないやりとり、アビーの繊細さと自由さ、ドロシアのユニークさと親としての葛藤、ウィリアムのモテっぷり…
監督は自身の母の物語を撮りたかったとインタビューで読んだ。ラストシーンのセリフがまたちがった響きに聞こえる。そしてアビー、ジュリーのその後の人生も改めてきらきらして見えた。
この作品に出会えてよかったなあと素直に思える作品。 -
私は、(0)
2017年4月17日 to わたしは、ダニエル・ブレイク
鑑賞前と後でタイトルの意味がまったく異なって響く。
弱い人を、困っている人を、助けを求めている人を助けられない、支援できない世の中なんておかしいのに、何かがおかしい。人としての尊厳を守ることは決して難しいことではないはず。
映画の中で描かれるイギリスだけの問題なんかじゃない。“その人”が自分だったら、自分の大切な人だったらという想像力をもっと働かせないといけない。
重いテーマだけど、ユーモアにあふれていて優しい雰囲気に包まれた作品。ケン・ローチ監督、引退撤回したまま、どうか長生きして映画を作り続けてください!共感:2人
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うつむく視線、月の光り(0)
2017年4月17日 to ムーンライト
自分ではどうにもできない、どうにもならない環境の中、うつむく主人公のまなざしが訴えるものに終始胸を締めつけられた。けれど、したたかに生き抜こうとする人々のたくましさも描かれ、セリフにあるように、どう生きるかは自分で決める、しかないのだろう。
淡々と描かれる彼の人生に、寄り添い、秘めた思い、熱に涙がこぼれた。
主人公役の3人は撮影中には一度も顔を合わせていないという事実にただただ驚いた。監督、すごいです。 -
初ゴーストバスターズ(0)
2016年8月22日 to ゴーストバスターズ
旧作を見ないまま、鑑賞し、その夜テレビ放送で旧作を見て、おお!と思うことが盛りだくさん!旧作へのリスペクトと愛情を感じました。
女性4人のゴーストバスターズ、それぞれの個性を発揮してゴースト達に立ち向かう姿がおもしろおかしいのに、すごくかっこいい!
物理学を駆使して超常現象に挑む姿、MI6のQもびっくりしそうなガジェットの数々…どれもとても魅力的。主人公たちはみなアメリカでコメディエンヌとして活躍しているそうですが、演技の幅を感じさせます。すごくよかった!
秘書役の彼も、いい味出してましたww
想像力とエンターテインメント性のバランスが抜群で子どもから大人まで楽しめる!
そして込められたメッセージはたぶん、すごく大きい。アメリカ本国では抗議もあったようだが、その抗議に対しては本当に残念に思います。そういう意味では勇気あるリメイクだったのかもしれません。この作品はおもしろさや笑いだけじゃなく、元気や勇気も伝えてくれます!
おもしろかった! -
Go now!(0)
2016年8月17日 to シング・ストリート 未来へのうた
このような作品に出会うと、生きていくということは厳しく大変なことだと改めて思う。不満や悲しみ、時には絶望を感じながらも生きていくしかないこともある。
それでも現実を受け入れた上でそれに屈せず、腐らず、現状を打破できる、打破したいと願い、行動することの尊さをシング・ストリートは教えてくれる。Go now!と。
青春時代、様々な出来事があった時に音楽がそばにあり、それは自分を助けるものだったという監督のインタビューを読んだが、とても共感できる。そしてその音楽の「力」が存分に生かされ、作品の中でその輝きを最大限に発揮している。
オーディションで選ばれたという若い俳優達はみなきらきらしてとっても可愛い!個性的な役柄が彼らひとりひとりの魅力を際立たせているのが素晴らしい。コナー役のフェルディアくんは元々ボーイ・ソプラノとして活躍していたそうですが、その歌声に心をつかまれました。エイモン役のマーク・マッケンナとの相性がまた抜群で、二人が音楽を通して友情を育む過程に温かい気持ちになりました。温かい気持ちと言えば、いじめっ子との決着のつけ方も最高だった。泣けました。
コナーが憧れる女性はルーシー・ボイントン!わー、こんなきれいな女性になってー!!と親戚のおばさんみたいな気持ちになってしまった。
「はじまりのうた」はチャンスを逃してまだ見ていないのですが、「ONCE」もこの作品も問題が解決したわけではないし、彼らのその後も想像するしかないのですが、その余白が未来、希望のある未来に見えることが私の心をつかんで離さないのだと思う。
劇場で販売されているパンフレットがレコード風だったので勢いで購入。これは見た後だったらつい買っちゃうでしょう!商売上手ですww 後日、いてもたってもいられずサントラも購入。映画の余韻だけでなく、音楽の引力ってやっぱりすごいなと感じます。共感:1人
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時代が無視できなかった男(0)
2016年8月16日 to トランボ ハリウッドに最も嫌われた男
アメリカでの赤狩りについては今年、同じく嫌疑をかけられたとされるアーサー・ミラーの「るつぼ」を読み、ダニエル・デイ・ルイス主演の「クルーシブル」を見て、NYで舞台を見る機会にも恵まれたので偶然とはいえ深く考えさせられることとなった。
アメリカで共産主義の支持者がそんなにいたの?というのがそもそも疑問だったのですが、トランボではその流れも説明されたので、そういう歴史があったのか!と目からウロコでした。
思想を危険とみなし、社会から排除する。
この動き、背筋がぞっとするほど「今」と重なります。映画を見る限り、共産主義を掲げるトランボ達の仲間がしていた活動は決して過激とは言えないと感じた一方で、それに反発する人たちの反応の方がよほど過剰なのにそれをよしとしてしまう社会。社会的に孤立させ、経済的に追い詰める、集団的いじめのような展開は決して遠い世界での出来事ではないからこそ不快感が募り、不安を煽る。
息苦しい時代だ。自分の思想とはちがうことを正しいと言わなければならない、ひとつの言葉が揚げ足取りになりかねない。こんな時代にトランボは自分の信念を曲げることなく、楽観的に生きる。楽観的という言葉が正しいかはわからないが、トランボの時代に屈しない生き方は暴力的だったり押しつけがましいことがなく、人を愛し、仕事を愛し、人生を楽しんでいるように見えた。家族や才能に恵まれたことは大きいだろうが、失ったものもたくさんあるからこそ、苦難の時も乗り越えられたのだと思う。
印象的だったのは娘の一人から「私もコミュニストなの?」という問いかけられる場面。彼女への答えはユーモアたっぷりでわかりやすくとってもチャーミングでその人柄が伝わってきた。また、ガンでなくなった脚本家仲間の死には深く傷ついたのだと思う。残された家族とのやりとりに涙が止まらなかった。最後のスピーチも彼の人間性、深さにやはり涙が止まらなかった。
俳優達のそれぞれの力演がとにかく光る。トランボ役のダルトン・クランストンはこういう人はどんな時代でも時代が無視せずにはいられないだろうというチャーミングさ。時折見せる悲しげな表情がまた素晴らしかった。弾圧する側、裏切った仲間に見せる表情は特に秀逸だった。
妻役のダイアン・レインの美しさは外見はもちろんですが、にじみでる美しさに目が眩む。トランボにとってこの妻と出会えたこと、家族になったことがどれだけ幸せなことだったか、たくさんのシーンでそれがわかる。
ハリウッドでの赤狩りを主導する元女優のコラムニスト役ヘレン・ミレンは嫌な女!と思ったのもつかの間、彼女自身の口から過去が語られた時、彼女の敵は果たして共産主義者だったのかと。現在も男女で待遇に格差のあるハリウッド、当時の女性はもっと大変だったにちがいない。その反動とも取れる彼女の盲目的で厳しい赤狩り活動は虚しいものに見えた。そう見せるヘレンに拍手。
オースティン・パワーズなどコメディ作品も得意とする監督ということなので、シリアスな中にあるユーモア、明るさのバランスは監督の力も大きいと思います。また当時の衣装、街並み、雰囲気などもクラシックかつモダンでとても素敵で見応えがありました。監督とダルトン・クランストンは次回作でもタッグを組む予定とのこと、待ち遠しいです。 -
問い続けることの大切さ(0)
2016年8月12日 to ニュースの真相
再選を目指す現役大統領の軍歴査証疑惑をめぐる、ジャーナリズム対国家権力を描いた作品。アカデミー賞作品賞に輝いた「スポットライト」と比べられている感想や批評をいくつか目にしたが、内容的にそれも当然だろう。どちらの作品にも共通する、報道の難しさと強い権力に立ち向かう様。結果が真逆なだけに、映画として観た時の“余韻”がまったく異なる。この作品は「それで、真実は?」と思わずにいられないし、原題「TRUTH」が重く、何度も自分に問いかけてきた。
番組プロデューサーのメアリーは非常に有能な人であるのは伝わってきたが、自分が信じることに対して少し前のめりなところがあって、それが結果的に隙に繋がったように思う。肝心な質問に答えられないというのは致命的。映画はメアリー視点で描かれていて応援したくなるのに完全にはできなかったのはやはり、この一点に尽きる。
ただ、問題は大統領の軍歴査証疑惑であるのに、問題の主旨がどんどんずれていく様は理不尽でこうやって真実は隠されていくのかと無力感を覚えた。特にメアリーの個人的な問題に注目がいくのは許せなかったが、日本でも同じようなことはいくらでもあり、平気で個人を潰しにかかるのだ。
ケイト・ブランシェットが見せる、敏腕プロデューサーとしての顔、母親としての顔、妻としての顔、そしてダン・ラザーに見せる娘としての顔、どれもが本当に魅力的。
ロバート・レッドフォードが演じた名アンカー、ダン・ラザーは温かさがあり、言葉通りの「勇気」を与えてくれる。
同僚の一人が吐き出す本音が虚しく社内に響くシーンや真向からケンカを挑んではダメだと諭す弁護士、ダンが質問し続けろと鼓舞するシーンなど報道に対するメッセージが全編を通して散りばめらている。真実を伝えるということがいかに難しいか、考えさせられた。
いくつかある「スポットライト」との共通点のひとつがメアリーを支える理解ある夫。レイチェル・マクアダムズの夫もそうだったが、女性が社会で活躍するためには理解ある夫が不可欠だ。互いに支え合うことが当たり前になるといいと強く願う。
メアリー側の視点ではあるけれど、偏りすぎていない内容でとてもおもしろかった。共感:3人
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裸の学生様(0)
2016年8月10日 to ライオット・クラブ
英国の名門大学を舞台に、一握りの選ばれた学生しか入ることの許されないクラブ、The Riot Clubのメンバーの腐りきった実態を描いた作品。名前も活動内容も異なるそうですが、実際にこういうクラブは多数存在するとのこと。
後味の悪さ、満点越え。
イギリスの若手俳優達を揃えて、それぞれがその個性を発揮して演じる「腐りきった」学生達。ストーリーが進むにつれて募るのは嫌悪感ばかり。彼らが歪んだ意識を持つのにはそれなりの理由もあるのかもしれないが、まったく同情なんてできないし、彼ら自身の背景に触れる描写はほとんどなかった。精神的にも肉体的にも暴力的な描写にこだわったからこそ監督の伝えたいものが浮かび上がってきたように感じた。
「本当は俺たちが好きなんだろ? うらやましいんだろう?」
メンバーの一人がパブ店主に吐いたセリフの虚しさ。相手を貶めるため、言うことを聞かせるために吐いた言葉は逆に口にした本人の胸を鋭く貫いたのではないだろうか。
彼らは裸の王様だ。自分たちは優秀で選ばれた人間で、金も権力もある、将来は国を背負うのだから好き勝手やって構わないと子どもが虚勢を張っているだけだ。なのに…「素晴らしい服を着ていますね」とする人達がいる。権力という透明の鎧に守られて、彼らは過ちも良しとする歪んだ価値観の中で生きていくのだ。
上映後にハリー杉山さんのトークショーがあったのだが、彼の経験から映画で描かれているのは半分事実で半分はフィクションというような感じと話していて、実際に知ることはできない世界だけにあれこれ考えてしまうなあとさらに興味が増した。 -
よくわからない、という魅力(0)
2016年8月10日 to ハイ・ライズ
「よくわからなかった…」
鑑賞後、思わずつぶやいてしまった。
もちろんそれが悔しくもあり、帰り道いろいろ考えた。これも余韻であると考えればこういう映画も悪くない。よくわからなかったけど、嫌いじゃない。
タワーマンションの上層階と下層階。現実社会同様、部屋の価格も異なるんだろう?どのくらい値段に差があるのかな?なんて思いながら、このわかりやすい対比の中で描かれる階級意識はくだらないと一蹴できない何かがあった。それは今生きている世界でも存在するものだからだと思う。
シエナ・ミラー演じるシングル・マザーの息子が時折見せる「目」が大人たちが繰り広げる享楽的な世界と混沌と化す世界を冷静に切り取る。トム・ヒドルストン演じるラング医師が解剖をする場面は効果的に使われていて、グロテスクだけれど、皮肉が効いていた。
よくわからないと思ってしまったのはもしかしたらわからない方がいいと思ったのかもしれないとふと思った。自ら破滅へ向かう、住民たちの暴走に自分はこうはならないはず、と思いたかったのかもしれない。
退廃的でレトロな雰囲気に包まれた不穏な世界、原作を読んでからまた見てみたいです。
最後に…触れておかねばならない?!のが、トム・ヒドルストンのスーツ姿とおしげもなく見せてくれる裸体。彼のファンってわけではない自分も、思わずため息をつく美しさ。また汚れていくのがたまらなかったです。共感:1人
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