えり蔵 さん
男性
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2019年2月15日 to 運命じゃない人
この映画、本当によく出来ている。
今までに映画でその日に2度観したのは、『燃えよドラゴン』の他2、3本くらいしかない。その内の1本
がこれ。
ネタバレになるので余り多くは語れないが、「まずは観よ」である。
ほとんど無名の役者ばかりである。しかし彼らは、監督の蜘蛛の巣のような緻密な脚本や演出に十二分に応えている。
この映画を観ているうちに近年ヒットした映画の構成と似ていることに気づくと思う。
しかし絶対にその映画の題名をこの映画を観ていない人に言わないでください。
私はその映画より断然この映画の方がよく出来ていると思うが、皆さんいかがでしょうか。
内田監督のような才人が、今までに3本しか映画を製作していない。これは日本映画界の損失ではなかろうか。
2020年11月7日 to 朝が来る
"映画の教科書″のような映画である。
太陽の光の上手い使い方(主人公の名前であるひかりをかけていると思う)、脚本の素晴らしさ(特に台詞)、ピアノによるシンプルな音楽、主要な登場人物4名の演技の自然さなど凄く良く出来ている。またドキュメンタリーの要素を取り入れ、少しミステリー仕立てで緊張感がある。
これだけ整い過ぎると逆に欠点を探したくなる。例えば養子縁組の場面など少しPRのやりすぎではないかと感じるときはあった。しかしこの場面も浅田美代子のホンワカした雰囲気がやりすぎ感を救っている。
他にも少しあざといと感じる場面はある。しかしその幾つかのマイナス面をカバーしているのがひかり役の蒔田彩珠なのである。
この映画蒔田が実質的な主人公といって間違いない。主人公のひかりは予期しなかった妊娠出産という経験からトマス・ハーディの『テス』の主人公のように人生の坂を転げるように落ちていくのである。純粋な中学生だったひかりが世捨て人のようのような女に変貌していく蒔田の演技が素晴らしい。出産してから数年間で彼女の表情や姿から廃れた生活を送ってきたことが想像できるのである。
2年前の『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』で共演した南沙良と蒔田の心に迫ってくる演技を観て感心した。それから2年蒔田彩珠という才能が順調に開花しているのを確認した。次回の映画の出演作が今から楽しみである。
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2018年9月28日 to クワイエット・プレイス
これは良く出来ている。
俳優も大熱演で上映時間も丁度いいし、ラストシーンも「オッ」というところで終わる。
手話があんなところで効果を出すとは、松山善三の『名もなく貧しく美しく』を思い出した。
昨年は『ゲット・アウト』その前は『10クローバーフィールド・レーン』、『イット・フォローズ』など低予算で、アイデアと演出力で勝負するホラー映画が、年に1・2本上映されている。
喋りすぎる映画は多いが、無声映画ではないのにある理由でセリフを抑え、どうやってこんな発想を得たのでしょうか。脚本家の才能を感じる。
音響やCGを上手く使い、こんな映画大好き!
しかも、スプラッタホラーとは一線を引いている。
細かい突っ込みどころがあるが、余り気にならない程度である。
『10クローバーフィールド・レーン』が好きな人は、特にお勧めです。
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2018年11月11日 to ボヘミアン・ラプソディ
フレディ・マーキュリーを中心に描いた伝説のロックバンド"クイーン"の伝記映画である
フレディ・マーキュリーに扮するラミ・マレクは、本物より少し小柄であるが、本物が乗り移ったようだった。他のメンバーもそっくりだが、その中でもブライアン・メイは特に似ていた。
このような伝記映画の場合、ドキュメンタリー風に、マキュリーに関係した存命者或いは存命者に扮する役者がフレッド・マキュリーの思い出を語りながら、メンバーとの出会い、成功、衝突、解散、再生という構成(ジャンルが違うが、今年公開された、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』が当てはまる)をとるパターン、あるいは、時代を追って映画が展開されるオーソドックスなパターンがある。
この映画は後者に当てはまる。
それでは、この映画としては成功したかというと、必ずしもそうではないと思う。
天才フレディ・マーキュリーにも光と影があるのは当然である。しかし、彼の名声を傷つけまいとするためか、マーキュリーばかりではなくメンバー全体の影の部分の描き方が中途半端で、「結局、皆いい人だったのよ。」という感じで終わってしまい、そこのところが残念だった。
その欠点を差し引いても、名曲が誕生する場面する場面は感動的である。
特に、作品全体を通じて『ボヘミアンラプソディー』誕生のシーンやデビューする時から最後のコンサートまで(チャリティコンサート“ライブエイド“のライブシーンは凄い迫力で、CGを使っているのかよくわからないが、あの大観衆はどうやって撮影したのでしょうか)のラミ・マレクの気合の入り方は半端ではない。来年のアカデミー賞の有力候補になると思います。
ライブエイドでの最後の“あの曲”は映画を観ながら一緒に口ずさんでしまいました。よく見ると隣に座っている男性も歌っていました。
ブリティッシュロックが好きな人ばかりではなく、クイーンを知らない若い世代の人にも是非観てほしいと思います。
2018年11月11日 to バッド・ジーニアス 危険な天才たち
面白さでは、本年度観た中でもトップ3に入る映画である。
今までタイの映画というとムエタイか怪奇映画のジャンルしか観たことがなかった。
今回、それ以外のジャンルの映画を初めて観たことになる。
しかし、それがあなた傑作なのですよ。
確かに少しあざとい演出だと感じる場面はある。しかしカンニングという題材でこれだけのサスペンスを生み出すとは恐れ入った。
成功の要因との一つとして、出演者の適材適所があると思う。特に主演の女の子は、いかにも秀才らしい風貌で、製作者や監督の目の確かさを感じた。
今の日本映画だったらこうはいかないと思う。知性とは無縁なタレントが、主人公に抜擢されるのではないだろうか。
モーツアルトの名曲からカンニングを思いつく場面など上手い。もしモーツアルトが生きていたら自分の作品がカンニングに使われたことに怒ったかも。
それからカンニングが不可能な国際試験で時差を使って思いつく場面もいい。特にオーストラリアでのカンニング場面は凄い緊迫感で、試験会場から出て監督官から追われるシーンなどブライアン・デ・パロマの映画を思い出しました。
結局国際試験のカンニングは成功したのか。それは、映画館でお確かめください。
仏教国であるタイらしい終わらせ方だと思う。
最後になるが、自国の悪い部分を大げさに表現して映画祭で大賞を取ったあの日本映画より何倍も好きです。
2018年11月26日 to 日日是好日
私には全くお茶の知識がない。
そのため、観る前はお茶の世界の人生論だとか出てきて説教臭い内容かなと想像していた。ところがそうではなかった。
所作は考えようとするのではなく手で覚えなさい、五感を使ってお茶を楽しむこと、人との出会いは一期一会であるとか、自然に茶の世界を味わえた。
また、セリフも必要最小限度に留め、四季折々の映像から人生の移ろいを感じた。
樹木希林はやはり芸達者である。でも彼女に負けないくらい、黒木と多部も表情が豊かで、彼女達を観ているだけで楽しかった。
特に黒木の演技は、年齢やお茶の経験を重ねることで、所作に成長の跡を感じさせるなど素晴らしかった。
大森監督の演出も、彼女たちの人生とお茶の世界を重ねながら落ち着いた映画に仕上げていた。
見終わった後、心の中を何か暖かいものがフッと通り過ぎていった。
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2018年9月9日 to マガディーラ 勇者転生
『バーフバリ』よりのめり込み度は低いが、ハリウッドのCGまみれの映画よりずっと面白いし、輪廻転生のインド哲学を活かした脚本はなかなかのものです。
公開している映画館は少ないみたいだけど、是非劇場でご覧ください。
2016年9月22日 to シン・ゴジラ
古今の日本のSF映画の中でも最高の1本だと思う。
今回のゴジラはこちらが攻撃してこなかったら、ただ移動するだけなのに劇中に核とかウラニュームというセリフが出てくるが、そうかゴジラは壊れた原子力発電所なんだと改めて思った。
なんで東京ばかり出現するのか、ウラニュームが欲しければ福島でしょと突っ込みたくなるがそれでは洒落にならんですものね。
ゴジラのあんなところから殺人光線が出てくるとは…。昔子どもの頃観た初期のガメラに出てきた怪獣を思い出し、思わずニヤリとしました。監督さんよく勉強してます。
脚本も良く出来ているし、役者のセリフが棒読みだという意見もありますが、逆にリアルが増しこれでよし。
で問題はですね、あの石原さとみ。ありゃ何ですか、物語ぶち壊しじゃないですか。
実は当初の段階では違うキャラクターで別のアメリカの俳優だった。それが上からの圧力で急きょ石原さとみのキャラを合わせるために無理やり変更したとしか思えない。
おばあちゃんが日本人といっていたが、どう見ても白人の血が入っていないし、演技が余りにも○○していますよというのが出すぎて鬱陶しい。
いくらアメリカが日本を軽く見ているとしてもあんな奴寄越すわけないでしょ。あのアホ丸出しが大統領になるだって、ヘソが茶をわかすぞ。
途中からゴジラに早く殺されればいいのにと願うようになった。
100点満点の映画なのに石原キャラのためにマイナス10点です。
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2018年5月13日 to アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル
今年アカデミー賞の作品候補になった“半魚人”や“立て看板”より気に入った。
フィギアスケートの天才が頂点に登り詰めたのに、周りの人間が事件を起こしてしまい転落してしまう。本人も事件を起こすことを知っていたのではないかと思うが、そこのところは明白にしていない。
ホワイトプア等のアメリカ抱える問題を優れた構成力とユーモアで、2時間以上全く飽きさせない内容にしたのは見事である。
出演者が観客に話しかけるシーンなど、『デッドプール』を思い浮べ思わずニヤリとした。
主演の俳優は、皆上手いが、特にトーニャを演じたマーゴット・ロビーは、主人公に同化したような演技だった。
チャーチルを演じたゲーリー・オールドマンに匹敵するといったら褒めすぎかもしれないが、それぐらいの素晴らしかった。
彼女はフィギアスケートの猛特訓をしたそうだが、技術的に難しいところはプロが代役をやったと思う。しかし編集と撮影が良く出来ていて区別はできなかった。
他の配役も適切で、無名でも力のある役者がアメリカには沢山いるのだということを改めて感じた。
2019年2月17日 to 女王陛下のお気に入り
18世紀初頭の英国の話で、日本では江戸時代の中期の頃である。
私のアン女王に対する知識といったら、大英帝国が19世紀末まで全世界を席巻することになった中興の祖ぐらいの知識しかない。
ところで、イギリスの王室が舞台になった映画は多い。例えば『冬のライオン』『エリザベス』、『わが命つきるとも』のように真正面から王室の出来事を描いたものがある。
しかし、この映画は、歴史の教科書に載るような綺麗なものではなく、もっとドロドロした部分(性的なものを含めて)を描いている。
そのために、中学生以下にはお見せ出来ないようなシーンがいくつも出てくるのである。
それを差し置いてもこの映画は面白い。
演出にリズムがあり、舞台となる王宮のセットが素晴らしい。パーセルの『ひとときの音楽』を重要なシーンで使うなど当時の音楽の使い方もうまい。(少し小うるさいと感じるところもあったが)
撮影も昔『バリー・リンドン』が薄明りのシーンが評判となったが、その頃より比べようのないくらいカメラの技術が進歩して、暗闇のシーンなどより自然に感じた。
特に、主演の女優3人が素晴らしいのである。
レイチェル・ワイズはブラックジャックのような傷を美しい顔につけ、オリヴィア・コールマンは一目ではコールマンとはわからないような肥満体の体になり、一番すごいのはエマ・ストーンで旦那の手コキはするは、オッパイは見せるは、放送禁止用語は連発するは、アカデミー賞を取ったような俳優がまさかこんなことはせんよなと思えることをしてみせるのである。特に3女優の一つ一つの表情が見逃せない。改めて向こうの俳優の凄さを感じてしまった。
正統派の歴史劇を期待している人にはお勧めできないが、捻りのある歴史ものが好きな人は満足を得ることができると思う。