白波さん さん
男性
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86件中31-40件
2020年12月2日 to 佐々木、イン、マイマイン
これだけストレートに熱を感じる青春映画なかなかないと思う。
キャストは皆良い味を出していて、中でも佐々木を演じる細川岳がすごい自然で良かった。
映画全体的には乾いた荒っぽさを残してて、それがまたこの世代にフィットしていました。
カメラも荒いようで、カット事にはすごい綺麗だったりと何だか奥行きのある絵。
全編を通して、この世代の匂いというか空気が感じられ、それが懐かしくもあって実に心地良いんです。
線路沿いを4人で駆け抜けるシーンなんか最高でしたね。
ただバカやってるだけでなく、そこにはチリチリとした気持ちやもがき苦しむ様もきちんと描かれていて目が離せなくなります。
佐々木の「好きなことやれよ」の言葉の後の涙はすごい刺さりました。
ラストは何じゃこれを通り越して、もう物凄い爽快感です。
そう、佐々木は泣いて欲しくなんて無いんですよね。
最後の最後までみんなの背中を押してくる佐々木には、スクリーン越しに自分もコールを送りたくなりましたよ。
しばらくは佐々木コールが頭から離れそうにありません、本当に良い作品を観ました。
2019年9月12日 to メランコリック
長編第一作目とあって全てが新鮮でした。
まず作品の骨子となるワンアイディアがすごい。
その視点が素晴らしく、成る程と唸らされます。
ジャンル的にクライムムービーなんでしょうけど、見終わるとサスペンスコメディといった感じでした。
キャストもそれぞれのキャラがちゃんと立っており、メインキャストの3人に至っては実に魅力的でした。
冴えない主人公は本当に冴えない(でも眼鏡を外した時イケメンがバレてます)空気出てますし、吉田さんが本当にどこにでもいそうな女の子役なんですが実にキュート。
そして何より松本が格好良いんですよね。屈託の無い可愛さもありながら、アクションでは凄い魅せてくれます。
本作ではアクションの構成・演出も担当しているようで、その動きにも納得でしたよ。
この三人は今後の活躍も予感させてくれますし、是非見てみたいと思いました。
タイトルのあるように実に憂鬱な空気から始まり、とてものんびりとした中で物語が進みます。
このゆるい感じが後から効いてくるんですね。
後半での展開の速さが心地よく、どんどんと引き込まれていきます。
そして最初の憂鬱な食卓から、最後の食卓へ繋いだのは本当に見事。
あんなラストになるとは思いもしませんでした。
バイトを始めた事で目まぐるしく世界が変わって行く様は、一歩踏み出せばこんなにも世界が変わるという鬱屈した若者へのメッセージとも取れました。
と同時に、監督が自分へ向けたエールだったのかもしれません。
カメラや少し粗めな部分も見受けられたが、だからこそこのチームの次作が気になるとも言えます。それにしても10日で撮り切った情熱が凄いですよね。
この作品はきっと彼らスタッフにとって、とても大きな一歩となった事でしょう。
実に小気味良い作品、本当に面白かったです。
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2020年12月10日 to ウルフウォーカー
ポストジブリと評されるカートゥーン・サルーンの最新作、「ブレンダンとケルズ」「ソングオブザシー」に続くケルト三部作の完結編ですね。
もうとにかく美しい。
絵本がそのまま飛び出したような色彩と、美しいケルト音楽で織りなす世界がとにかく美しいのです。
独特なグラフィックとタッチは奥行きがあり、終始目を奪われていました。
物語は二人の女の子と、その成長を描いた作品。
女の子の目線で描かれている為複雑さは無く、とても真っ直ぐな気持ちで紡がれます。
しかしながらその物語は意外と深く、人間と森とのあり方や女性の開放といったテーマも見られ、大人は観ていて色々考えさせられる部分もあると思います。
その独特な作画もですが、物語を彩るKiLAの楽曲がどれも素晴らしく、とても作品に深みを出していました。
またAURORAの歌う挿入歌も素晴らしいんですね。
楽曲が物語に実にフィットしており、このシーンは忘れられないくらい幻想的でした。
話はテンポも良く最後まであっという間に過ぎ、何とも心温まる作品でした。
また、どうしてもテーマや狼というモチーフから「もののけ姫」を想起させる(監督自身がもののけ姫のような作品にしたいとコメントしてるからしょうがないかと…)部分はありますが、これはトム・ムーアなりのアンサーと見ることもできるのではないでしょうか。
2021年1月8日 to おおかみこどもの雨と雪
「時かけ」「サマウォ」とは作風を変えてきているので、少し面食らった人もいたと思います。
自分は前情報も無く観に行った事もあってか、特に抵抗も無くすっと入れました。
本作は親子の愛をとても丁寧に描いていて、特に「母」の強さを感じました。
冒頭の風にそよぐ描写がとてもきれいで、全体を通しても画面の美しさが素晴らしかったです。
音楽も良かったですね。
場面場面を盛り上げるでは無く、映像に寄り添うような、風が通っていく感じ。
キャスティングもとても合っていて、特に幼少期の雪と雨が本当にうまい。
そして、何度も心に触れてくる演出があり、その度に涙が溢れてきます。
キービジュアルを見ると「お母さんが頑張る話」と思いがちですが、むしろ「それぞれの自立の話」でした。
母と子の両方の視点がちゃんとあって、それぞれの苦しみや悩みがよく描かれていたと思います。
雪は愛する人達とともに人間として生きる事を決め、雨は山を守るべくおおかみとして生きる事を決める。そして花は子が選んだ道をちゃんと笑顔で見守ると決める。
それぞれが離れて暮らしていても、皆が家族をちゃんと大事に思っていいる。
何だか毛布に包まれたような気持ちになる、そんな暖かい作品でした。
2017年10月7日 to 三度目の殺人
私は是枝監督の作風が好きで、今回は何と言っても役所広司がどのように絡んでいくのかがとても楽しみでした。
始まってみるとやはり役所の演技が一歩深いところにあり、凄みすら感じます。
途中から福山雅治が役所の芝居に引っ張られている感じがするのですが、それが作品の中の二人の関係性ともリンクしていてとても面白いのですね。
そうした「重なってしまいそうになって重ならない二人」を、面会室のアクリルを使い見事に表現しています。
この手法が本当に見事で、見ていてこちらも引っ張られるのを感じました。
監督は作品の中で全ての答えをはっきりさせない描き方をしますが、本作も同様な作りでどこか引っかかりがあります。
が、そうした「フック」が作り手の狙いでもあるのでしょう。
それでいて最後に「三度目の殺人」に気づくように作っていたりもするんです。
真実そのものの意味とは?と言った監督の問いかけが、心にいつまでも残る作品でした。
2020年11月13日 to TENET テネット
ノーランの新作、それだけでも期待しちゃいますね。
物語と絡めた色使いが巧み、とてもスピーディに進行して行くので考えながら観ると置いて行かれそうになります。
逆に感じたままに観ていると、グイグイ物語に引き込まれる。
細かく散りばめた伏線が、後半からどんどん回収されるのも気持ち良いですね。
それにしても順行と逆行を使ったアイディアが秀逸。
なんだこれは?の連続で最後まで本当に面白かった。
劇中、主人公に逆光を説明する中で「理解しようとしないで感じるの」といった台詞があったが、それは正にこの作品を観た人に向けられた言葉でもあるのだろうなと思いました。
2021年1月16日 to トップをねらえ! OVA後編
前後編トータルでのスコアとレビューになります。
2021年の今、スクリーンで「トップ」しかもOVA版を観れるとは思いもしませんでした。
時代を感じる部分も所々ありますが、やはりとんでもなく面白い。
特撮やSFなど随所に散りばめられたオマージュにパロディ、トリプルノリコや端々に映り込む小物などにも本当にこだわりを見て取れます。
監督を始めスタッフの熱量が、画面からすごい滲み出ている作品なんですね。
演出とともに劇盤も物凄く熱く、相乗効果的にどんどん胸が熱くなってくるんですよ。
特に「ガンバスター」は本当に最高。
設定や入口は緩めなスポ根風味ですが、後半からかなりシリアスな展開に急に持っていくためメリハリがあります。
最終回近くの絶望感はより緊張感を増していき、迎えたラストシーンは今見ても本当に感慨深い。
こういった作品が劇場で観れる機会が、もっともっと増えれば良いなぁと心から思いました。
こんな大変な時だからこそ、上映してくれて本当にありがとう。元気をもらえました。
2020年11月18日 to 罪の声
未読で申し訳ないのだけれど(当時の新聞を全部読んでいたらしいし、作者の並々ならぬアプローチがあった事は知っていた)原作が秀逸なのだろう。
事件の解釈の仕方が見事で、観ていてとても引き込まれる内容だった。
「声」に焦点を当てた点も素晴らしく、事件当時同じような年だったこともあり実に興味深かく観れた。
また当時は何とも思わなかったが、「声」によって狂う人生は確かにあったであろう。観ていて本当に怖いと思いました。
また主演の二人も良いが、脇を固める役者達が実に良いんですね。
梶芽衣子や宇野祥平などの存在感が強く、よく集めたと思います。それとキツネ目の再現度は見事。
当時の事件を知る人には、時代を経て全て解決してくれたような爽快感すらあるでしょう。私にはありました。
謎だった部分や不可解な行動が段々と紐解かれる様は、脚本の素晴らしさを感じます。
ただ、事件を知っていると知っていないでは作品の受け止め方がだいぶ違うと思うので、知らない世代は軽くでも調べておいた方がより楽しめると思います。
骨太な作りで実に見応えのある作品でした。
2017年9月23日 to 光
それは、とてもとても美しい作品でした。
視覚障害者と向き合う重いテーマでしたが、監督らしくというか、とても柔らかく魅せてくれます。
主演の二人がとても際立っていて、芝居の密度や存在感がすごい。
アップが多めのカットも視覚障害を扱う演出として、とても効果的だったと思います。
「近づけないとみえない」や、「見ずらい」といったジレンマが少し感じられました。
今回は都合が付かず見逃してしまっていたのですが、どうしてもスクリーンで観たく、かなりタイトな時間ではありましたが無理やりリバイバルで鑑賞してきました。
ですが、そうして本当に良かった。
きっとスクリーンで無ければ、あの浴びるような、全部を包むような夕日の光は感じれなかったと思います。
カットに役者の演技に物語や音楽に漂う空気や光、その全部が美しい。
起伏に富んだ物語では無いのですが、寄り添うようなこの作品は優しくてとても心地良いんです。
とても、本当にとてもステキな映画でした。
2016年10月19日 to 映画「聲の形」
最初に読み切りがマガジンに掲載され、反響が大きくその後連載漫画になったこの作品。
原作を好きだった事もあり、ちゃんと物語がおさまるのか少し不安な心持ちで劇場に向かいました。
始まってすぐOPがあるのですが、何と歌に「My Generation」を持ってきたのには面食らいました。
しかしこの歌、無自覚で無軌道な子供達と実にマッチするんですね。ちょっと驚きました。
また、よく考えたら監督は「けいおん」内でもフーを出していたのを思い出し、なんだか妙に納得してしまいました。
この作品は障がいといじめという少しデリケートなものをベースに、人と人との繋がりを描いた物語。
映画でもその描写は良く表現されていて、京アニならではのやわらかな作画や背景も心地よかったです。
そして音楽が実に良かった。
全般的にとても穏やかできれいな音なのですが、彼らがそれぞれ抱えている心の奥にある鉛のような部分も表現されていて、とても素晴らしかったです。
作中のいじめに対し各キャラクターそれぞれの関わり方をしているので、見ていてどこか物語とは思えないチクリとした気持ちになる方もいるのではないでしょうか。
二時間ちょっとの尺ですがきちんと原作をなぞっており、無くすところはスパッと切るのですがその切り方がうまいのでしょう、観ていてストレスを感じませんでした。
それでいてペドロやマリアは出るけど、姉が顔を出さなかったりする設定はそのままだったり、随所にこだわりが見えます。
そしてラストなどのオリジナル部分への繋がりも良かったです。
淡い気持ちと尖った空気、少年達が抱えるものが丁寧に描かれており、原作好きでもとても良い作品に仕上がっています。
そして、帰ってからふと目にした入場特典の書き下ろし漫画。
ストンと落ちたようで、読んでいて涙が出てきました。
短いながらもとても素晴らしい内容なので、映画と合わせて読む事を是非お勧めします。
だんだん上映回数が減ってくる頃ではありますが、できればスクリーンで観て欲しい素敵な作品でした。す。