白波さん さん
男性
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2017年5月23日 to T2 トレインスポッティング
当時英国だけでなく日本でも一大ムーブメントを巻き起こした名作、「トレインスポッティング」の続編です。
ブリットポップ全盛期、その勢いがそのままフィルムなったような作品に皆夢中になっていたと思います。
ボイルはもちろん、ユアンマクレガーとアンダーワールドがこの作品で爆発しましたね。
それが20年の時を経て、しかもオリジナルキャストでの続編です。
「ビーチ」での確執も乗り越え、監督も脚本も同じままでですよ。
これは見逃すわけにはいきません、珍しく初日に行きました。
あのラストから20年後の時間をどう描いていくのか、気になって仕方ありませんでした。
始まりからして実に「トレスポ」で、今回もサウンドが秀逸です。
特に物語の随所随所に入れくる「ボーンスリッピー」のアレンジがものすごいです。
曲はそれを匂わせているものの、全く別物のような化け方をしているんですね。
他にも全体的に曲のチョイスが素晴らしく、「うん、トレスポだなぁ」って感じます。
そ気が経ってもその疾走感はそのまま、そして今回も良く走ります。
カメラワークも実にそれで、観ている自分も思わず懐かしい気持ちになってくるんです。
20年経つも彼らは基本変わらずカスのままなのですが、それがまた嬉しいのですね。
それに罵り合いながらも何だかんだ仲が良いのがわかります。
そやって前作の香りをたっぷり出しながらも、物語が進むにつれ彼らが抱える心のほつれのようなものが見えてきます。
今回の続編で四人の内面をより掘り下げており、ドラマとしてより深みが増していました。
皆時間が経ってあの頃のままで居られるわけもなく、色々な困難に進んで行く彼らの姿は、少し考えさせられる部分もありました。
そしてラスト。聞けなかったレコードに針を落としスィングするレントン。
ここのカタルシスはものすごかったです!声が出そうなほどにでした!
この続編も間違いなく「トレインスポッティング」でした、未見でしたら是非前作と合わせて観てください。最高な作品です。
2020年3月23日 to ヘレディタリー/継承
これが長編デビュー作品だというから驚きます。
その位とんでもない作品でしょう。
張り巡らせた数々の伏線、様々なホラー要素も綺麗に詰め込まれており、現代ホラーの頂点も頷けます。
また、私は海外ホラーはそこまで怖く感じない方(あの驚かす演出は別)で、宗教的な文化の違いからだと思っています。
でもこの作品は本当に怖かった。日本人でも実に神経に触ります。
あと、軸が家族という人間だからでしょう。
グロ描写はほぼ無いのですが、その「ほぼ」の1カットが結構重いです。陰鬱な音楽も良く、とても効果的でした。
音楽なのかSEなのか入り混じってますけど、とても気持ちがざわざわしました。というか終始ざわざわしっ放しです。
そして何より舌を鳴らす音、あれは劇場を後にしてからも頭から離れませんでした。
話の視点が何度も切り替わる様に作られているので、先が見えにくく不安だけがずっと続くんです。
先がどうなるのかよく分からない、でも絶対悪い事が起こる事だけはわかるんですね。
カメラワークもよく、スクリーン端を使った演出も素晴らしかったです。
観客に「え?」とさりげなく気付かせるところ、うまいですね。
また母親役のトニ・コレットの演技が素晴らしかったです。
だんだんと崩れていく様は本当見事でした。
終盤の畳み掛けるテンポも良く、観客の自分も逃げられない恐怖に取り込まれてました。
ラストこそは見えてしまいましたが、散々伏線を出していたので敢えてそうしたのでしょう。
逆に、絶対に覆る事の無い運命がひしひしと伝わってました。
終始作品に圧倒されてしまい、こんな監督が出てきた事に驚きです。
「ミッドサマー」の話題性からポツポツとアンコール上映が出てきているので、是非この機会にスクリーンでの鑑賞をお勧めします。
狂気に満ち溢れた、とんでもない作品です。
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2020年3月13日 to ミッドサマー
もの凄く作り込まれた作品で、ホラーとはジャンルが違うかな?
ビジュアルが公開された時から、その美しい中に漂う狂気に心引かれていました。
全編にに漂う不穏な空気と狂気性、細部にも大変拘り抜いていて伏線もパズルのように散らばっています。
そのピースが自分にピタッとはまると、それがまた狂気を増して行くんですね。
もちろんその度物語に引き込まれます。
この作りが本当に緻密で素晴らしい。
何かをかくとバレに繋がりそうで短めなレビューですが、今年一番のインパクトでした。
ディレクターズカット版も新たに気づくことがあるでしょうし、実に楽しみです。
本当、傑作でした。
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2020年12月24日 to 37セカンズ
ずっと観たかった作品。
都合がどうしても合わず何度も見送ってきたのですが、やっとスクリーンで観ることが叶いました。
そして想像以上に素晴らしかったです。
脳性麻痺の障害を持った主人公ユマを演じるは、実際に障害を持った佳山明さん。彼女の存在感がものすごい。
まず冒頭からギュッと鷲掴みにされ、そこから目が離せなくなりました。
作品全体にドキュメンタリーのような深みがあるのですが、そこに重さを感じさせないのは全体を包むポジティブでポップな演出でしょう。
音楽も含めこういった所は見事でしたね。
また物語が進むに連れ、ユマとそれを演じる佳山明さんが共に成長して行く過程がスクリーン越に伝わってくるんです。
この迫ってくるような感じがこの作品の凄みでは無いでしょうか。
色々と印象的なシーンがあるのですが、何より強く残ったのは物語の終盤でした。
旅を終えた頃に彼女が漏らす「でも、私でよかった…」。
どうしたらそんな優しい言葉が紡げるのか、その何気ない一言に涙が止まりませんでした。
この作品は障がい者を扱ってはいるのですが、障がい者そのものについてではなく、もっとシンプルに一人の少女の成長を描いた作品なのでしょう。
一歩を踏み出す勇気そのものは、皆同じですものね。
少し遅くなりましたが、この作品に巡り合えた事が嬉しかったです。
2017年10月7日 to ベイビー・ドライバー
OPから神がかった作品です。
息をつかせぬカーアクション、そしてそれが溢れるBGMと見事に同期しており、観客を一気に作品に引きずり込みます。
冒頭だけでジェットコースターを乗り終えたような満足感がありました。
そのとめどなく流れる音楽、ジャンルは多岐にわたるのですが選曲が実に良い。
オリジナルに留まらずカバーを積極的に取り入れてくるのも好印象で、観ている途中からサントラが気になってしょうがなくなりました。
随所にオマージュを感じる所があり、そうゆう視点でも楽しめると思います。特に日本人的には。
だからなのか少しコミック的な緩めの展開もあったりしますが、それさえも楽しく観れました。
あと個人的に、歴代のiPodが出てくるのも懐かしくて嬉しかったですね。
この映画、ジャンルでいうとクライムムービーなのでしょうけど、実はとてもキュートな作品となっています。
とにかく一度観てみてくださいすごいですから。本当に最高です。
2016年8月26日 to 君の名は。
ショートながら「クロスロード」を見てから、ずっと待ちわびていたタッグでの作品です。
新海作品ですから、まずその圧倒的な映像美に驚かされます。
毎回その背景にも少しずつ変化があるので、そこに触れるだけでも楽しいんですね。
最初キービジュや予告で見たキャラ絵は少し違和感あったけど、実際に始まると全く気にならなくとても瑞々しかったです。(それでもやはり、作監田中将賀で観てみたかった気持ちはあります。)
役者主体のキャストも神木君はもちろん他の方も想像以上に良く、RADによる音楽・特に歌は実に効果的で作品にとてもフィットしていました。
また今作はよりエンターテイメント性が増しており、特に後半の展開には驚かされます。
「身体入れ替わり物」というキャッチーな入り口だったため、余計にそれが効いてくるのでしょう。
脚本も良くできており、ページをめくるように次々と新しい動きを見せるのも素晴らしかった。
前作「言の葉」で「監督の踏み込みが深くなった」と感じましたが、今作ではさらにまた一歩踏み込みんでおり、また少し膨らみを持った作品になっていました。
いよいよ公開となった本作、その美しさを是非劇場で触れてみてください。
淡く心を突き動かすような物語、きっと心に響いてくると思いますよ。
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2021年1月8日 to 東京ゴッドファーザーズ
昨年は今敏監督の没後十年もあり、規模は小さいながらも各シアターでアンコール上映がありました。
その中でもクリスマスに「東京ゴッドファーザーズ」を上映したキネカ大森、その心意気が素晴らしいですね。
クリスマスにこの作品を観れるとは、なんて素敵なプレゼントでしょう。
監督はどれもエッジの効いた物ばかりですが、これはまた実に心温まる作風でとても大好きなんですね。
物語は天使による奇跡のお話。
出会った事自体もですが、最初から奇跡の連続なんですね。
舞台は新宿というとても小さな場所を巡る、それはロードムービーのよう。
この偶像劇がとてもテンポ良く作られており、それでいてそれぞれの人生を丁寧に描いています。
そしてこの三人の掛け合いが実に子気味良い。
鈴木慶一氏による楽曲もぴったりで、EDなんて何て気が効いてるのでしょう。
とにかく暖かく優しさに溢れた作品、年の瀬に観るには最高の一本だと思っています。
2016年12月5日 to この世界の片隅に
クラウドファンディングでの融資が話題になっていた本作、原作の空気感をどう表現できるかが気になってたのです。
これが見事に再現されていました。
端から端まで細かく描かれていて、何よりカットがとても美しい。
コトリンゴの音楽もとても合っており、作品に広がりを持たせていました。
キャラデ・作監の松原秀典さんも、原作の雰囲気を生かした見事なキャラクターを描き出しています。
戦争がテーマの作品ですが、重く苦しい内容も主人公すずの視点なので、どこかコミカルでふわふわした雰囲気に描かれています。
のんさんの演技もそうさせるのでしょう。
また随所に食べ物をうまく差し込んでいて、当時の食事事情や主人公の心持ちが伝わりやすいのも良かったと思います。
その食べ物というキーに合わせてなのでしょうか、玉音放送を聞いたすずが慟哭するシーンのセリフが変わっていました。
ある意味とても重要なところなので、とても思い切ったシフトだと思います。
そして何と言っても絶対作品を作ると決意した監督の気概でしょう。
静かな作風なのに力強さを感じるのは、そんなところもあるのかもしれませんね。
今回クラウドを使って素晴らしい作品が作れるという、一つの指針になったのではないでしょうか?
同じ戦争の映画で真逆のような作品ですが、塚本監督の「野火」と同様に一人でも多くの人に観てもらいたいと思いました。できるだけ長く上映してほしいものです。
私は今回この映画と出会えた事が嬉しくてなりません。
儚くも強くて温かい、とても喜びに満ちた作品です。
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2020年1月20日 to この世界の(さらにいくつもの)片隅に
前作ですっぱり切り取ったリンのエピソード。
個人的に寂しかったがあれはあれで英断だったとも思うし、物語としてとても綺麗にまとまっていました。
そのリンのエピソードを加えた本作。
ディレクターズカット版なのか、完全版というべきなのか、ともかく嬉しかったです。
そしてやはりというか、リンが入る事で物語にとても深みが増していました。
前作はとてもふわふわしててそれがまた心地良いのだけど、そこに人々の巡り合わせや生と死の重さが増したような印象でした。
前作も何度か観る機会があったのですが、回数を重ねる度じわじわ沁み入ってくる感じですね。
特にその台詞一つ一つが心に残ってくるんです。
それと桜の木のシーン、再現度の高さというか演出が本当に素晴らしかった。
全体のつながりも良く、新しい作品としてまとまっていましたね。
逞しくて、悲しくて、嬉しくて、寂しくて、そして暖かい。
只々愛おしい作品です。
2020年11月19日 to 朝が来る
河瀬監督らしく光を使った絵作りが本当にうまい、実にきれいです。
二つの視点を交錯させるような作りなのですが、ぶつ切りにせず流れるような転換はとても自然で心地良い。監督ならではだと思います。
そして役者陣は実に良い芝居でしたね。
井浦新が居酒屋で同僚と話をする場面があるのですが、個人的にとても印象的でした。
この時の表情が実に良く、やるせない気持ちがとても伝わってきます。ちょっと見てて辛いくらい。
ここ実際に酒飲んでから撮影したようで、ちょっと驚きました。
蒔田彩珠は芝居もだけど、目の描き方が良かった。
何気に浅田美代子も良いアクセントでしたね。
物語は特別養子縁組を軸に、生みの親と育ての親を描いた作品。
この両面の描き方がとても丁寧で、どちらも自分の事のように寄り添ってくるんです。
歌ですが段々と繋がっていく構成も良かったです。最後はちゃんと届くのが嬉しいですね。
そして、エンドロールは最後の最後まで席を立たないでください。
やっと訪れた朝の「光」があるんです。
終焉したのに私は少し席を立てなくなりました。
心に染み入る、本当に素晴らしい作品です。