白波さん さん
男性
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2019年5月29日 to 鉄男/TETSUO THE IRON MAN
シネマシティの30周年記念リバイバル上映を観てきました。
リバイバル自体は時々やってたりしますが、これだけ大きなスクリーンでみる機会はなかなか無いでしょう。しかも極上音響上映です。
少し遠いのですが足を伸ばしてきました。
予告など入らずいきなり始まるのも良いですね。
それにしても久しぶりに見る「鉄男」は、やはりとんでも無かった。
ギラギラとした白黒の世界、怪音とも異音とも取れる音楽、襲いかかるかのような映像表現、それらが絡み合ってできた作品。
サイバーパンク作品で、そこにエログロと血吹雪とホラーと愛が合わさっています。
きっと開始2〜3分で、これが尋常じゃ無い作品だと感じるでしょう。
田口トモロヲと塚本晋也の怪演にも魅せられますし、ストップモーションを多用した映像にも目が離せなくなります。
初見だとその映像と音に圧倒され、訳がわからなくなってしまうかもしれません。
それでも最後には、ズッシリと残るものがあると思いますよ。
30年経っていますが、これだけの熱量のある作品は余り見かけません。
今尚全く色褪せない怪作、是非一度体感してほしい作品です。
2019年10月4日 to ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
なんと堂々の2時間40分という長尺。
しかし全く飽きさせずに仕上げているのが、さすがタランティーノと唸らされます。
しかもそれがかなり面白い。
音楽は相変わらず素晴らしいです、このセンスはすごいよなぁ。
物語自体はあるような無いようなだらだらとした展開だが、それが実に味わい深いのです。
全体的に映画に対する愛が強く出ていて、随所でクスリとさせてくれます。
そのエピソードなどの差し込み方も絶妙なんですよ。
それと今回はディカプリオの芝居が素晴らしかった。
ジャンゴの時は割と無難な感じでしたが、今回のはしっかりタランティーノ作品らしいアクターでした。
そういえばブラッドピットとディカプリオって初共演だったんですね?
この二人がまた、色々なところが実にハマってたんですよね。本当に役にぴったりなんです。
気がつくと彼ら二人の人生に魅せられていました。
少しほろ苦い感じになってくるのですが、テート事件のくだりから急に緊張感が出てきます。
そして色々なピースが繋がって来るんですね。
ラストの置き方も素晴らしかったです。
練り込まれた脚本、エッジの効いた音楽、深い芝居、散りばめられた映画のエピソード、胸にしみる物語。
これだけ面白い作品はそうは無いでしょう。
本当、素晴らしい作品でした。
※オープンになっているので触れますが、作品はシャロン・テート事件(ハリウッドであった実際の事件)がベースとなっています。
事件を知らない方は事前に知っておいた方が良いと思いますよ。
タランティーノの気持ちを知ることができ、より面白く鑑賞できるでしょう。
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2020年1月9日 to AKIRA〈デジタルサウンド・リニューアル版〉
昨年の暮れの鑑賞になります。
オリンピックを控えた2019年の東京、シネマシティがこの奇跡のタイミングで極音上映にラインナップ。なんて粋なことするんでしょうか。
約2週間ほどの公開なのですが、初日とかでも無なく平日月曜のレイトタイムなのにほぼ満席。未だ衰えぬ人気の程が伺えます。
やはり皆んなでかいスクリーンで観たかったんでしょうね。
改めて振り返ると当時としては破格の10億という制作費、アフレコでなくプレスコ、会話の口の動きは通常3種に対して日本語の母音に合わせた5種類、総セル枚数15万枚に色彩数327色(もののけ姫 97年:14.4万、200色※もののけも相当な枚数です)、3DCGにシンクラヴィアの採用など物凄いこだわりがあります。
さらにメディアにする際には監督自ら200カットの修正に音響を向上させる為、追加費用1億投入するするなどとんでもない事になっています。
それにしても今観てもこのクオリティには驚かされますね、冒頭からゾクゾクします。
バイクチェイスとか本当格好良い、当時テールランプの再現にびっくりした記憶があります。
そして流石はシネマシティです音が素晴らしい、特に山城組の音の粒が実にクリア。
とても臨場感がありました。
今回鑑賞して感じたのは、未だAKIRAよりよく動いている日本のアニメーションは出てきてないのでは?と感じるほどでした。
スクリーンで観るネオ東京崩壊のシーンとか、もう圧巻でしたね。
いや本当に面白かったです。
上映後なんですが、会場で拍手がおこったのは驚きました。
壇上に誰かいるわけでも無いんですよ?純粋に作品に対して拍手が湧き出たんですね。ちょっと感慨深かったです。
来年には4Kリマスターのソフトが出ますし、新アニメプロジェクトなど再び動きが出てきたアキラ(ハリウッド版は再び企画凍結のようです)、色々楽しみが増えました。
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2017年3月27日 to 沈黙−サイレンス−
それは予想を超えたものすごい作品でした。
時代の逆を進むような堂々の160分、私が観に行けた頃は既に1日1回のみ上映になっていたので、時間を作るのがとても難しかったです。
でも監督は自分の撮りたいようにするのが一番だと思っているので、こういった尺の長い作品はこだわりを感じて好きです。
そしてタイトルにあるように音楽がありません。
虫の声、風の音、潮の音で構成されているのですが、退屈どころか「だからこそ」胸に迫るものがありました。
OPからそれらの演出が効いていて、スタッフロールまでそれで締める。実に素晴らしかったです。
スコセッシなので遠慮のない演出で、弾圧している様は観ていて苦しさを感じるほど。
また当時の考察をきちんとしているのでしょう、日本人が観ていても違和感を感じずにスッと入ってきました。
またキャストも気になる人が多く「スコセッシの作品に塚本晋也が出演している」ってだけで、観ないという選択はありませんでした。
その塚本晋也演ずるモキチが真っ直ぐで素晴らしい。特に聖歌を歌っているシーンはかなり胸にくるものがあり、作品の中で一番印象に残りました。
そしてイッセー尾形の怪演。この作品を支配するかのような、ものすごい芝居を観せてくれます。
物語は基本ひたすらに重いのですが、それでいてどんどん引き込まれていくんです。
そして話が進むにつれ深く深く潜って行き、宗教そのものを超え、命の根元に迫るような内容でした。
スコセッシはこういった「誰かの生涯」を描くのが本当上手いですね。
70を過ぎても未だ衰えぬ素晴らしい作品、まさに傑作です。
2019年12月12日 to アイリッシュマン
とにかく素晴らしかった。
スコセッシがメガホン取って、デニーロとジョーペシとハーヴェイカイテルが出てるってだけで最高過ぎです。そしてパチーノまで。
こんな自分好みの座組み、どうしたって観るしかない。
しかしながらこれはNETFLIX配信作品。
東京国際映画祭では出遅れてしまった為チケットは当然取れず、劇場公開が発表された時は本当に嬉しかったです。
ただやはりハードルが高い作品でした。
3時間30分の長尺なので、時間が取りずらいんですよね。
2〜3回見送ってなんとか平日の仕事終わりに行ってきました。
それにしても面白かった、とても密度の濃い3時間30分を堪能できましたよ。
その豪華なキャストは想像以上にすごかった、皆その演技が素晴らしいんですね。
今回のペシはキレる感じでなく重鎮な役所なんですが、それでもやはり怖いのですよ。さすがですね。
音楽も当時の楽曲で彩られていて、こういった所もさすがスコセッシといったところでしょう。
その中でもやはりロビーロバートソン(ザ・バンド)によるテーマ曲ですね。重厚なサウンドが実にマッチしています。
ロビーとは自身の作品「ラストワルツ」繋がりなのも面白いですね。
物語は当時のアメリカの情勢や事件なども上手く絡めており、独特の解釈も興味深かったです。
VFXによる若返りもスムーズで、これを導入する大胆さにも驚かされました。
さらにこの膨大な企画を受け止めたNETFLIXもすごいですね。
頼まれ仕事とは違うスコセッシのものすごい気迫を感じる本作、マフィア映画の最高峰と言っても良いでしょう。
この作品が観れた事を本当に嬉しく思います。
2020年2月19日 to サタンタンゴ〈4Kデジタル・レストア版〉
やっと観ることができました。
私が今まで観てきた作品で一番長かった作品は、ベルトルッチの「1900年」の5時間でした。
しかしそれを大きく上回る7時間18分の長尺作品。
二回のインターミッションを含めると、8時間という驚異的な上映時間。
そしてその長い尺に反してカット数は約150。
この時点でこの作品が尋常でないのがわかります。
舞台はハンガリーの貧しい村で、ひたすらに陰鬱な世界が広がります。
しかしながらスクリーンに映された映像は実に美しい、吸い込まれるようです。
そしてひたすらに長回しによって村人の生活が映し出されます。
それは物語を追うのではなく、観客を作品に同期させていくような感じでした。
驚異的な長回し、遠く聞こえるうねりのような音にいつまでも続く時計の音、吹きすさぶ風に雨。
いつしか思考する事が無くなり、何だか作品に潜っていくような感覚でした。
ひょっとしたら所々軽く意識が飛んでたのかもしれないです。
けど各章のタイトルやインターミッションの文字が出るとハッと我に返るので、寝ていた感じもなかったんですよね。
モノクロ作品なんで完全に錯覚なのですが、途中から空などに薄い色がついてるようにも見えていました。
説明するのが難しいのですが、そんな何とも言えない貴重な体験でした。
今まで自分が観てきた映画とは明らかに異質で、まさに作品に入り込んでいたよう。
劇場までの往復を考えると一日を使ってしまう事、公開するとソールドアウトが多い事、正直ハードルはかなり高い作品でしょう。
しかしリバイバルの機会があるのならば、私は必ずまた観に行くと思います。
囚われた円環の中で、永遠に悪魔とタンゴを踊り続ける。
私の映画観を塗り替える、もの凄い作品でした。
※あの猫。何でも獣医立会いの元撮影され、そのまま監督が飼ったらしいですね。
色々すごいです。
2020年11月12日 to ひとくず
児童虐待がテーマのとても重い作品。
虐待に繋がる負の連鎖を、じっくりと見せつけられるのが本当に苦しかった。
しかしその連鎖を断ち切ろうと、どうしたら?ともがいていく様に心を奪われます。
愛された事がないから愛し方がわからない。誕生日を祝ってあげたいエピソードなど、なんて寂しいのだろうか。
この作品は虐待される子どもだけでなく、虐待をする大人側にもアプローチしている所に深みを感じました。
メイン三人の演技が実に生々しく、特に子役の小南希良梨は本当に素晴らしかった。
歌やメイクにギラっとした色味等、どこか昭和の匂いがする世界も物語にマッチしていたと思う。
演出や小物などもリアリティがあり、音が荒かったのも狙っているのだろう。
物語の締めくくりは最初予想していたものと違い、それが何だかとても嬉しかった。
正直子を持つ親が観るとかなり辛いです、でも絶対観てほしいとも思うんですね。
私は終始震えるように涙しながら、絶対目をそらすまいと観ていました。
上映館が少ないのが残念ですが、できるだけ多くの人の目に触れる事を願ってます。
今でもずっと心の中で反芻している、本当に素晴らしい作品でした。
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2020年3月23日 to ヘレディタリー/継承
これが長編デビュー作品だというから驚きます。
その位とんでもない作品でしょう。
張り巡らせた数々の伏線、様々なホラー要素も綺麗に詰め込まれており、現代ホラーの頂点も頷けます。
また、私は海外ホラーはそこまで怖く感じない方(あの驚かす演出は別)で、宗教的な文化の違いからだと思っています。
でもこの作品は本当に怖かった。日本人でも実に神経に触ります。
あと、軸が家族という人間だからでしょう。
グロ描写はほぼ無いのですが、その「ほぼ」の1カットが結構重いです。陰鬱な音楽も良く、とても効果的でした。
音楽なのかSEなのか入り混じってますけど、とても気持ちがざわざわしました。というか終始ざわざわしっ放しです。
そして何より舌を鳴らす音、あれは劇場を後にしてからも頭から離れませんでした。
話の視点が何度も切り替わる様に作られているので、先が見えにくく不安だけがずっと続くんです。
先がどうなるのかよく分からない、でも絶対悪い事が起こる事だけはわかるんですね。
カメラワークもよく、スクリーン端を使った演出も素晴らしかったです。
観客に「え?」とさりげなく気付かせるところ、うまいですね。
また母親役のトニ・コレットの演技が素晴らしかったです。
だんだんと崩れていく様は本当見事でした。
終盤の畳み掛けるテンポも良く、観客の自分も逃げられない恐怖に取り込まれてました。
ラストこそは見えてしまいましたが、散々伏線を出していたので敢えてそうしたのでしょう。
逆に、絶対に覆る事の無い運命がひしひしと伝わってました。
終始作品に圧倒されてしまい、こんな監督が出てきた事に驚きです。
「ミッドサマー」の話題性からポツポツとアンコール上映が出てきているので、是非この機会にスクリーンでの鑑賞をお勧めします。
狂気に満ち溢れた、とんでもない作品です。
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2020年3月13日 to ミッドサマー
もの凄く作り込まれた作品で、ホラーとはジャンルが違うかな?
ビジュアルが公開された時から、その美しい中に漂う狂気に心引かれていました。
全編にに漂う不穏な空気と狂気性、細部にも大変拘り抜いていて伏線もパズルのように散らばっています。
そのピースが自分にピタッとはまると、それがまた狂気を増して行くんですね。
もちろんその度物語に引き込まれます。
この作りが本当に緻密で素晴らしい。
何かをかくとバレに繋がりそうで短めなレビューですが、今年一番のインパクトでした。
ディレクターズカット版も新たに気づくことがあるでしょうし、実に楽しみです。
本当、傑作でした。
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2020年1月20日 to この世界の(さらにいくつもの)片隅に
前作ですっぱり切り取ったリンのエピソード。
個人的に寂しかったがあれはあれで英断だったとも思うし、物語としてとても綺麗にまとまっていました。
そのリンのエピソードを加えた本作。
ディレクターズカット版なのか、完全版というべきなのか、ともかく嬉しかったです。
そしてやはりというか、リンが入る事で物語にとても深みが増していました。
前作はとてもふわふわしててそれがまた心地良いのだけど、そこに人々の巡り合わせや生と死の重さが増したような印象でした。
前作も何度か観る機会があったのですが、回数を重ねる度じわじわ沁み入ってくる感じですね。
特にその台詞一つ一つが心に残ってくるんです。
それと桜の木のシーン、再現度の高さというか演出が本当に素晴らしかった。
全体のつながりも良く、新しい作品としてまとまっていましたね。
逞しくて、悲しくて、嬉しくて、寂しくて、そして暖かい。
只々愛おしい作品です。