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映画の武器は“想像させる”こと。中野量太監督が語る『長いお別れ』
(2019/05/30更新)

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『チチを撮りに』『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野量太監督の最新作『長いお別れ』が31日(金)から公開になる。本作は、認知症になった父と家族が“長いお別れ”をするまでの7年間を描いた作品で、家族はゆっくりと記憶を失っていく父と向き合いながら、自身の“これまで”と“いま”と“これから”を見つめるが、「映画の最大の武器は観客に“想像させる”ことだと思う」と語る中野監督は、観客の想像力やそれぞれの記憶を刺激するドラマを積み重ねて作品を完成させた。
本作は、中島京子の同名小説が原作で、オリジナル作品が続いた中野監督にとって初の“原作あり”の作品だ。「いつも映画を撮ろうと思う理由はふたつあります。ひとつは“いま撮るべき映画”を撮りたい。原作になった小説を読んだら認知症がテーマで、僕の祖母もそうでしたし、日本でこの先、認知症と関わらない人はいないような時代が来るわけですよね? だから、これはいま撮るべき作品だろうと。もうひとつは“厳しい状況の中で右往左往している人の姿が愛おしいし、時には滑稽だったりする”……そういうものをずっとやってきています。この物語の家族も、お父さんが認知症になって厳しい状況にはあるんだけど、家族が右往左往していて、原作を読んでいて笑っちゃうところもありましたし“ここに僕の描きたいものが書いてある!”と思いました」
東京の郊外で暮らす東(ひがし)家は、70歳になる父・昇平と母・曜子が暮らしており、長女の麻里は夫の転勤で息子ともどもアメリカで暮らし、次女の芙美はカフェの経営を夢見ながら、スーパーで働いている。昇平の70歳の誕生パーティの日、娘たちは母から父が認知症になったことを知らされる。家族は少しずつ記憶を失っていく父のことを想うが、それぞれの暮らしも問題やうまくいかないことが多い。映画は、東家の7年に渡る父との“長いお別れ”の物語が描かれる。
本作の脚色は監督と大野敏哉が共同で手がけたが、中野監督は「すんなりとはいかなかったです」と笑顔で振り返る。「そもそも原作は短編集なので、これがどうしたらひとつの物語になるのか? その答えが見つかるまでに時間がかかりました。最終的には縦軸と横軸をつくって、縦軸は“時間”の流れで認知の状態を4段階に分けました。そして横軸はおじいちゃん・おばあちゃん/娘たち/孫の“世代”に分けて描くことにして、そこに原作のエピソードを入れ込んでいって、足りない部分にオリジナルのエピソードを入れ込んでいきました」
監督が語る通り、本作は4つのブロックに分かれていて、それぞれのエピソードで父と母、娘たち、その子どもたちの三世代のドラマが重層的に描かれる。そこでは少しずつ父の記憶が失われていく過程や、家族がこれまでにたどってきた道のりも描かれるが、そのすべてが明示されるわけではない。それぞれの物語の間に何があったのか? 家族はこれまでにどんな経験をして、どんな出来事があったのか? つまり、父は“どんな記憶”を失うのかは観客が想像するしかない。
「映画の最大の武器は観客に“想像させる”ことだと思うんですね。描かれていない部分を観客に想像させることで、小さな映画がいくらでも大きな映画になる。だから、自分のこれまでの映画も“どれだけ想像させることができるのか?”を常に考えていて、今回の作品でも観客が想像しやすいように描いています。それこそが映画の醍醐味だと思いますし、すべてを描いてしまうとつまらないですからね」
ちなみに中野監督の作品はどれも家族のドラマを描いているが、自身は「家族とは何か? について語る気はない」という。
「僕には“人間はひとりで生きられるものじゃない”って想いがあって、他者がいることで自分がいる。こうして話していても、話す相手がいるから自分のことを確認できるわけですよね? それを一番教えてくれるのが“家族”だという気がしているんです。だから家族といってもそれぞれだし、定義できるものではないので“家族とは何か?”について語れないし、語る気はないんですけど“家族って集合体は悪くないよね”ってことは言いたいんです」
観客は東家の7年間を見つめながら、スクリーンに描かれていない時間を想像し、自身の家族についても想いを巡らせることになるだろう。そしてそれは“映画を観ている自分自身”について考える時間にもなるはずだ。「自分たちが生きていることを教え合っているこの集団は、血がつながっていようが、いなかろうがいいよねってのはずっと描きたいと思ってやっている感じがするんですよ。そこに尽きる……のかなぁ」
『長いお別れ』
5月31日(金) 全国ロードショー
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