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大人の映画になるためには
2021/4/2 21:38
by
odyss
TV版は全然見ていません。この劇場版で初めてこの作品に接しました。
過去との連絡をとりながら、現在の事件を解決するという設定。
いささかSF的ではありますが、まあそういうのもアリということで。
ただ、それでいくと、10年前に生きている中年刑事(北村一輝)が巡査部長なのに、現在に生きている若い刑事(坂口健太郎)が警部補、ってのがひっかかる。10年の時代差がありながら、巡査部長の中年刑事は警部補である若い刑事に丁寧な言葉遣いをしています。
たしかに巡査部長より警部補のほうが格上なわけだから、当然と言えば当然ですが、『踊る大捜査線』以来常識(?)となっているはずの「キャリアvsノンキャリ」の対立という要素が見えてこない。しかも本作の場合、女性刑事(吉瀬美智子)が坂口健太郎の上司で、しかしかつては中年巡査部長の部下であったという構図を見るなら、「その辺、どうなっているんだ?」という疑問が湧いてくるのは当然でしょう。
つまり、警察組織というのは学歴を基盤にした階級社会であって、高卒のノンキャリなら中年でようやく巡査部長、定年を迎える頃に警部補かせいぜい警部であるのに対して、エリート大学を出たキャリアは、若くして警部補や警部になり、やがて警視や警視正になっていくという、今では多くの人が知っている前提がこの映画には反映されていないわけです。
まあ、そういう細かい(?)ことは措いておくにしても、この映画の基本的な構図が、非常に子供っぽいのが気になります。
大きな悪は政治家。それはそれでいいんですけど、でもこの映画の場合、そのきっかけがあまりにお粗末じゃないですかね。まるで「おれは悪者だぞ〜」と叫ぶ悪役が幅を利かせている幼児向けドラマみたい。
大人向けに作るなら、悪の設定をもっと入念にしなければいけない。いや、政治家だって結構悪ではあるわけだけど、この映画のように「政治かたるオレは日本全部を抑えている」みたいな、小学生並みの政治家認識を基盤にするのではなくて、もっとちゃんとした、政治家が囚われやすい政治資金の問題だとか、経済界との関係だとか、そういうところから攻めていかないと、大人が見て楽しめるドラマにはならないんだな。
橋本一監督は、「劇場版相棒」ではなかなか良いと思いましたけど、今回はイマイチでしたね。脚本家が悪いのかも知れないね。でも、脚本がダメだったら、ちゃんとダメ出ししなくちゃね。
女性ジャーナリスト役の奈緒さんが、チャーミングでしたね。あまりに可愛いので、ジャーナリストより女優になったらどうかと思いました(笑)。
田中哲司は、『新聞記者』(駄作だけどね)でも悪役をやっていましたが、今作でも悪役。すぐれた悪役プレイヤーになってきていますね。
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