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神は細部に宿りたもう
2021/2/18 1:35
by
odyss
テーマは悪くないと思うんです。
刑務所から出た人間が、いかに社会の中で生きていくか、いかにそれが困難か、という問題ですから。
しかし、この映画に限りませんが、細部が全体のリアリティを確保するという大原則をふまえるなら、やや甘いなと思いました。「神は細部に宿りたもう」という有名な言葉がありますが、そこがうまく出来ていない。
例えば、主人公(役所広司)が出所後に職をいかに確保するかという問題では、前半と、久しぶりにアパートに舞い戻ってからの後半とを比べると、展開に差がありすぎ。
もちろん、偶然によって、同じ人間がまったく異なる扱いを受けたり、物事がうまく運んだり万事に悪運だったりすることは分かります。
でも、アパートに戻ってからの展開は、ちょっとうますぎ、じゃないですか。それに対して前半は、本人の態度も含めて、「逆風」すぎる。
また、いくら十年のブランクがあるとはいえ、前半のクルマ運転の拙劣さは、「そりゃ、ないだろう」と思う。
私的な体験談で恐縮ですが、私は20歳の大学生時代に運転免許をとり、その後しばらくペーパードライバーでい続け、十年以上たってからまたクルマを運転するようになりましたが、あんなにひどくはなかった。私は男としては運動神経はにぶいほうですけど、役所広司演じる主人公は、バトルシーンからしても運動神経が高そうなのだから、なおさら。
主人公がいったんアパートを出てヤクザの世界に舞い戻るところもそう。昭和ならいざ知らず、平成の世の中、すでにマル暴への締めつけはかなりキツくなっていたはず。それがうまく表現できていない。
ラストを含めて、テーマが十全には展開されていないと思いました。
いや、ラストは悪くないんですけど、その意味をもっと(さりげなく)表現できなかったのかな、と。
テーマの重要性を考えるなら、惜しい作品と言わざるを得ません。
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