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やれば出来るじゃないか日本映画
2020/11/6 21:03
by
えり蔵
久しぶりにまともな日本映画を観た。
父の遺品からテープが発見されるまで上手い冒頭のシーンである。配役も料理屋の板前役の橋本じゅんなど適材適所で無理やり有名な役者を使ってないのが好感を持てる。特に主演の2人は好演である。脚本も上手いし、土井裕泰監督はいい仕事をしたと思う。
しかし、何だか物足りないというか食い足りないのである。日本国中を大混乱に陥れた戦後最大の犯罪事件の真相に迫っているのに背筋がゾクゾクするような緊迫感がないのである。何故なら30年以上経過しているといいながら、事件を捜査している新聞記者やテーラーの2人に身の危険が迫っているような場面がないからである。モデルとなった事件は暴力団や政治家が絡んでいるようであり、真相に近づけば近づくほど自分だけでなく家族に対しても死の危険が及ぶのではないだろうか。それに、こんな簡単に真相に辿り着けるのであれば「警察は30年以上何やってんねん!」ということになるのではないだろうか。
しかしそれは監督の責任だけではないと思う。以前原作を読んだとき、同じように真の闇の部分に触れていないもどかしさを感じたからである。
もし許されるならば映画のラストをホンワカムードで終わるのではなく、2人が以前から狙われているような雰囲気を醸し出して、ラストで両者の内どちらかが殺されるような結末(その前に子供の声を使って脅すとか)に変更すればば印象は変わったのではないかと思う。
それでも今年観た日本映画の中でもトップクラスの作品だった。
2人がこのレビューに共感したと評価しています。
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行間を読むという名の旨味。
2020/11/7 13:59 by
STAYGOLD
> しかし、何だか物足りないというか食い足りないのである。日本国中を大混乱に陥れた戦後最大の犯罪事件の真相に迫っているのに背筋がゾクゾクするような緊迫感がないのである。
単純に、そこが狙い。
> 何故なら30年以上経過しているといいながら、事件を捜査している新聞記者やテーラーの2人に身の危険が迫っているような場面がないからである。モデルとなった事件は暴力団や政治家が絡んでいるようであり、真相に近づけば近づくほど自分だけでなく家族に対しても死の危険が及ぶのではないだろうか。
30年の時間の経過が答え。
物語の、映像の行間に、さんざんぱら答えがばらまかれている。できれば、映画好きなオーディエンスにはソレを拾ってほしい部分。
> それに、こんな簡単に真相に辿り着けるのであれば「警察は30年以上何やってんねん!」ということになるのではないだろうか。
それがこの國の権力の限界であると、この物語は語る。これはひどく直接的に。行間を読む必要はない。
> もし許されるならば映画のラストをホンワカムードで終わるのではなく、2人が以前から狙われているような雰囲気を醸し出して、ラストで両者の内どちらかが殺されるような結末(その前に子供の声を使って脅すとか)に変更すればば印象は変わったのではないかと思う。
それで満足するお客様なら超楽。
ステレオタイプだから。
大切なのは鑑賞後の後味。
苦味が残る着地点が好きなのは、映画ヲタやマニアだけ。ボックスが証明するのは「鬼滅」のようなライト層狙い。
100人以下のミニシアターなコバコなら、それもアリだが、オオバコ勝負では厳しいでしょう。それを噛んでも、難しい多くのハードルを超えた土井カントクは厳しい勝負を乗り越えたと思う。
映画とは、単に映像の見た目のみならず、その全てを受けて噛み砕き咀嚼し味わい飲み込むもの。最後の最後まで、喉で、胃袋で感じて。それを思い出させる作品でした。
お邪魔しましたー。
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