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『彼女の肩に』
2019/9/28 0:30
by
とみいじょん
力強い。
彼女の、戸惑いながらも、同胞を助けようとする意思が伝わってくる。
それでいて、とても23歳とは思えぬ表情。疲れ切ったような、醒めたような眼差しが忘れられない。
ナディアさんの身に起こったこと。
起こってはならぬこと。
なのに、昔から世界各地で起こっていること。
1992年ノーベル平和賞受賞者リゴベルタ・メンチュウさん達、グアテマラの女性たちが経験したこと。
コナビグア(連れ合いを失くした女性たちの会)のルシア・キラ・コロさんを招聘したイベントに関わった時のことを思い出した。
この映画のように、聞きにくいことを聞いてくる記者。その質問に怒る私達を制して、ルシアさんは丁寧に答えていった。ルシアさんも記者も、聞きにくいこともきちんと聞いて、記事にしないと、誰にも相手にされないということを知っていた。事実なのに、興味がない人に耳を傾けてもらう事ーそれがこんなに難しいなんて。
TVでも放映してほしいと持ち掛けたら、NHKのディレクターに、「虐殺が恒常的ならば、放映したとしても、視聴者はすぐに忘れる。もっとインパクトある出来事はないですか?」と言われた。映画『ホテルルワンダ』でも出てきたエピソード。
そして、まったく見向きもしなかったマスコミなのに、ルシアさんが当時の土井衆議院議長と会うことに決まったとたん、取材の申し込みが殺到した。そこで何が行われているかというよりも、そんなことの方が大事なんだ。
コナビグアは、長い活動の結果、代表のロサリーナさんが国会議員となって、国作りに参加している。
ヤジディ教徒は、今後どうなっていくのだろう。外部とほとんど接触のない土地と聞いた。だが、不幸な事件を通して、世界を知ってしまった。世界に目を向ける者、武装する者、伝統を守ろうとする者…。
鎖国が解かれて、世界を知った幕末の顛末を思い出してしまった。
ヤジディ教徒の”星”と祭り上げられてしまったナディアさん。
願わくは、コナビグアのように、同胞の仲間をムラド氏ともう一方以外にも作ってほしい。仲間がいれば、がんばれるから。
そして、かっての植民地のように、ヤジディ教徒のためと言いながら、そこに利権を求める者たちに、蹂躙されぬように、団結してほしい。
コチョ村は解放されたけれど、ここからまた物語は始まるのだから。
そして、聞きかじったヤジディ教徒の教え・慣習を考えると、険しい道かもしれないが、ナディアさんに幸せになってもらいたい。それが不埒な奴らに勝つことになるのだから。
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