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寅さんは生きているのか、死んだのか
2020/1/6 20:50
by
えり蔵
私がこの映画を観る前の疑問は、“寅さんは生きているのか、それとも死んだのか”と言う事である。
山田洋二監督が「寅さんは渥美さんより10歳くらい若く設定しています」というのを以前雑誌で読んだことがある。さすれば渥美清が生きていたら大体90歳を超えたくらいなので、寅さんが生きているとしたら80歳前後ということになる。80歳のテキ屋がいても不思議ではないが、あの厳しい生活である。生きていてもヨレヨレではないかと想像できる。
その回答はこの映画を観るしかないので映画館に足を運んだ。結論を言うと「この映画ではそれを明白にしていない」のである。
生きているのではないかと推測できるのは2つのシーンである。1つは満男の亡くなった奥さんの法要のシーンで、仏壇におじちゃんとおばちゃんと亡くなった奥さんの写真が置かれているだけで寅さんの写真がないということは“寅さん生きているのか”と一瞬思わせるシーンと、もう1つは、満男の恋人だった泉が旧とら屋の2階に泊まるかもしれない時に、さくらが「お兄ちゃんがいつでも帰ってきてもいいように2階をいつも整理しているの。」との発言があったシーンである。
もし生きているとしたら、随分冷たい妹や義弟である。さくらや博は年老いた寅さんの捜索願を出すどころか、「お兄ちゃん今頃どうしているかな」の台詞もなく、余り心配しているようには思えないのである。それとも帰ってくると、年老いた自分たちでは寅さんの対応は無理であると恐れているのかもしれない。実際、泉の父が病んで福祉施設に入っているシーンは、ある意味年老いた寅さんを投影しているようにも見える。
ラストで年老いた寅さんが後ろ姿でもいいから出現することを期待した。しかし、残念ながらそうはならなかった。
「寅さんの生死などどうでもいいじゃないか!」と言われればそれまでだが、映画を観終わって何故かやるせないものを感じてしまった。
映画自体は、満男や家族や関わった人たちが、寅さんの思い出を語る時、旧作からそれらしきシーンを抜粋して話を進めるので、旧作を見ていない人には余り面白さが伝わってこないのかもしれない。(有名なメロン事件も出てくる)それにしても満男は寅さんに似て優柔不断なところがある。泉に“あの事”を話していたら、関係も変わっていたかもしれない。(そうなると違う雰囲気の映画になっていたかも)
最後になるが、映画の冒頭で桑田佳祐が主題歌を歌っていたが、違和感があり過ぎる。しかも寅さんの例の台詞まで喋っていたのはあきれるどころか怒りをおぼえた。アニメを使って渥美清が歌った主題歌を流す等色々方法があったはずである。これだけは止めて欲しかった。これで★2つ減である。
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