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繊細で粗暴で孤独な…
2017/11/25 14:32
by
やまのさかな
高良健吾を観たくてという理由でDVDを視聴。
(ただし視聴者レビューを読むと、かなり心配な感じの作品?らしくて…どうしようか…としばらく迷ってから一応の心構えをしたうえで視聴)。
結果的には「この高良くんも観ておいて良かったかな」と(きわめて個人的にだけれど)思えたので、それが理由で60点。(でも高良健吾ファンの人に普通にお薦めというわけでもないので…ご注意ください。)
作品は、ルカ(三根梓)と恵介(西島隆弘)の「ひと夏の恋」を描く青春物語。恵介の解き明かすべき謎としての「ルカの月曜日の憂鬱」の原因がレイジ(高良健吾)との過去と現在。
作品自体の「心配な感じ」はおよそ想定したとおりだった。いろいろと「もう少しな気がするんだけどな…」というもどかしい感じを受けた。
「夏休み中で帰省した大学生」の恵介の「それっぽい」場面(高校時代の友達とちょっと集まって遊ぶとか?)が「少し」入るとこの子のキャラがもうちょっと立つのでは…。とか。
ルカにはレイジとの過去があるのだから「最初に出会ったときの場面」とか交際の最中に「ふと微笑みかわす場面」(例えば!です!)とかを断片的にルカに回想させるとか「もう少し」何か入れられると、ルカの現在の心の傷の深さとかレイジのキャラクターの本当の怖さとかが、もう少しリアルに見えてくるのでは…?
などなど。
と言いつつも「レイジ」が個人的にとても興味深かったのでそこに思いのほか惹かれた。
傷つきやすくて繊細で、他者からの思いやりを当然のように要求するけれど自分が他者を思いやることは全くしない。(たぶん資産家の親に甘やかし放題に甘やかされて育ってきたとかしていて)たまに思い通りにならないことがあると、解決方法としては言葉のあるいは物理的な暴力で押し通すことしか知らない。自分の車を持っていて、ちょっと独特の広々とした家屋に一人で暮らしていてとても裕福そうだけれど生活力は全くなさそうで、家族とかが周囲にいるとは思えないので通いのお手伝いさんでもいるのか?というような。ものすごく孤独な人…?
ルカへの執着は孤独だから?それとも自分のそばを離れていこうとしたことが許せなくて?ほかにもつきあっている女が複数いたらしいことは言及されていると思うけれどルカへの強い想いの核心はどこに…?
よくわからないことが多くてそれがもどかしくて、かえってそこからいろいろと他の作品のことが想起されてきてしまった。この「レイジ」は作品中では極めて不十分に表現されているけれど、その不足した部分に高良健吾の演じたほかの作品のさまざまなキャラクターがオーバーラップしてきて、それがある意味面白かった。
高良健吾の「尖った役柄」はそもそも「繊細さと粗暴さ」が表裏一体となった少年が多い。
「M」の稔、「蛇ピア」のアマ、「マークスの山(WOWOW)」のヒロユキ(=マークス)、「軽蔑」のカズ…。この子たちは柔らかい心を持つと同時に殺人に至るレベルでの暴力を振るう。
「感情に衝き動かされて人に殴りかかる(けど殺さない)」レベルまでなら「サッドヴァケイション」の勇介、「ひゃくはち」の純平、「フィッシュストーリー」の五郎、「ハゲタカ」の守山あたりも暴力を行使する。
(さらに、衝動的に殴り掛かることはしないけれど「怖い(殺人に至る)」タイプの人物を思い出すと、「白夜行」の亮司、「書店員ミチルの身の上話(NHK夜ドラ)」の竹井、「罪と罰」の弥勒がいる。そういえば若干違うけれど「ハードナッツ(NHKドラマ)の伴田刑事も殺人には至らないけれど裏社会との繋がりがあって殴る蹴るを行使する場面が第1話からちらっと出てくる…)。
高良健吾は暴力を振るうような「怖い」人物を演じる。けれど同時にそこに感じやすく傷つきやすい繊細さ、心の脆さ、不安や寂しさに必死に耐えて虚勢を張ろうとしている幼さや見苦しさ…そういう「内面の闇」のあることを、その深さや色合いの多様なことを、その時々の人物と物語に応じたさまざまな深度と色調で描き出してくる…
そういう仕種や表情、強烈な目力と、微妙な視線の揺らぎ等々が、今回の「レイジ」からも感じられた。そこが興味深かった。ちょっとドキドキした。高良健吾の演じてきた、というか生きてきた「闇に落ちるか落ちないかのぎりぎりのところの少年たち若者たち」の姿を思い出させるキャラクターとしての「レイジ」。そこに60点。です。
(かなり歪んだ見方かと思います…関係各位、ご容赦いただけたらと思います…。)
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