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出木杉のびた さん

出木杉のびたさんのレビュー一覧

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2456件中1-10件

  • 90点 究極のじい様ランチ(2)

    2018年4月23日 to レディ・プレイヤー1

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    近年『リンカーン』『ブリッジ・オブ・スパイ』『ペンタゴン・ペーパーズ』と、社会派作品は高評価だったスピルバーグも、本来お得意とする娯楽作『タンタンの冒険』『BFG』は悉く不発。今回久々に映像の魔術師の名誉挽回となった快作だ。

    全編に散りばめられた、数えきれないくらいのキャラを探すだけでも楽しい。映像の情報量の密度が濃いので、字幕版を一度観ただけでは、きっとかなりの見逃しがありそうだ。何せ主人公の乗る車が、デロリアンなのだから、映画好きには堪らない。ゲームから、映画、アニメまで、日本由来のキャラもたくさん登場する。更に、数多くの映画小ネタが嬉しい。その作品のことを知らなくても楽しめるが、知っていたら楽しさもパワーアップ。僕にとっては、某巨匠のホラー傑作内に入り込むシークエンスは、鳥肌ものだった。あの子供たちの向こうからは、アレが溢れてくる。モノクロの集合写真の使い方も見事。怖い顔のおじさんこそ姿を見せないが、ドアを壊そうとするオノの恐怖が甦る。

    時は2045年、人々はオアシスと呼ばれる仮想現実の世界での日常が当たり前になっていた。創始者ジェームズ・ハリデーの遺言により、3つの鍵を手に入れ、隠したイースターエッグを探し出すのが目的。それを手にしたものが、莫大な遺産とオアシスの経営権を得られるのだ。アオシス内でプレイヤーは、本来の自分とは違うアバターの姿で行動する。主人公パーシヴァルは、ゲーム内でアルテミス、エイチ、ダイトウ、ショウらと知り合うが、リアルの彼らの本当の姿とのギャップも興味深い。鎧姿のダイトウのモデルは、スピルバーグなら当然あの人だ。

    ゲーム内でのミッションの謎解きには、ハリデーの過去の言動がヒントになる。それを知ることで、ハリデーの人柄も浮かび上がってくる脚本も巧い。そしてゴールに辿り着くには、仲間との絆と協力も必要不可欠になってくる。一匹狼だったパーシヴァルが手にするものは、これまでの彼の人生にはあり得なかったものばかり。

    パーシヴァルたちの邪魔をするのが、IOI社という大企業。会社と個人の対決となるのだが、アオシス内とリアル世界とが交錯する物語展開が熱い。アオシス内での戦いでは、日本でお馴染みのキャラが大活躍でワクワクさせられた。原作ではウルトラマンも登場するらしいが、映画では諸々の事情で却下。残念だが、それでもこれだけ数多くのキャラを出演させるのを、承諾してもらうだけでも大変だったのではないかと思われる。それもまた、スピルバーグの実力と言えるだろう。

    お子様ランチ映画と揶揄された過去。かつて少年少女だった全ての映画ファンに贈られた、極上のエンタテインメント、70歳を過ぎたスピルバーグの、究極のじい様ランチをご賞味あれ。隠れキャラを探しに、もう一度今度は吹替え版を観に行きたくなってしまった。

     

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  • 80点 ノミとハンマー(0)

    2018年4月19日 to マイケル・ムーアの世界侵略のススメ

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    マイケル・ムーアがアメリカ国旗を掲げ、白人の国家に突撃取材。“世界侵略”とは、各国の素晴らしいアイディアをアメリカに持ち帰りたいというものだ。まあムーアがそう思っても、そう簡単には取り入れられるわけではないので、まずアメリカ国民に知ってもらうのが第一歩ということだろう。それを日本国民が知って比べてみるのも悪くない。

    イタリアは諸々含めると、1年間に8週間位有給休暇が取得でき、昼休みが2時間もある。みんな家に帰ってゆっくりランチができる。日本でも有給休暇自体はかなりありそうだが、全て取れる人などいないだろうし、昼休みも働いてしまうことも多いだろう。

    ドイツの労働時間は週36時間。仕事が終わった後は、上司が部下に連絡してはいけない法律。仕事とプライベートのけじめがはっきりしている。休日も仕事の連絡をとってしまうのは、日本ではよくあることではなかろうか。

    フランスでは小学校の給食でもフルコース。これが美味しそう。アメリカの給食の一例は、見た目だけでもかなり悪く、それを見たフランスの子供たちの食欲は失せる。

    ポルトガルでは覚醒剤や麻薬を所持していても逮捕されない。そうしたら何と患者数が減ったという逆説。みんな堂々と治療を受けられるので、中毒を治すことができるというのだ。犯罪であるから隠して、症状が重くなって取り返しがつかなくなる。何とも思い切ったことか。でも正直合法にしてしまうのには、抵抗は感じてしまう。

    死刑廃止のノルウェーでは、無期懲役もない。最高でも21年。模範囚の施設は開放的で、とても刑務所とは思えない。自分の部屋の鍵は、自分で持っているのだ。その中には殺人犯もいる。社会復帰を念頭に置いた生活で、再犯率は僅か2割。アメリカは8割近いというから、その差は歴然だ。看守が囚人を痛めつける画像はアメリカのものだろう。その対比を見せる編集が巧みだ。罪と罰の問題について、色々と考えさせられた。

    確かに各国の良いところだけ取り上げて、問題点については触れられないのだが、それはまた別の問題。とにかく成功例なのだから、それに学ぶ姿勢が第一だろう。インタビューを受ける各国の人々は、元々はアメリカのアイディアだと言う。これは一体どういうことなのか。アメリカでは定着しなかったのに、他国では成功したということか。お国柄によって、政策にも向き不向きがありそうだ。

    ベルリンの壁を、ノミとハンマーでコツコツと崩していった人々の話が印象に残る。当時はこの壁がなくなるなんて、夢にも思わなかったかも知れない。小さなことからコツコツと。最初は小さな風穴に過ぎなくても、続ければ賛同する人も増え、巨大な壁もやがて崩れ去る日も来るのだ。

     

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  • 70点 そして怪獣は日本を目指す(0)

    2018年4月15日 to パシフィック・リム:アップライジング

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    前作が公開されてから五年も経っていたとは…。おさらいもせずに観に行ったので、忘れていたことも多いが、それでもそれなりに面白く観られた。ただ、出てくる怪獣の種類が少なくてガッカリ。序盤はイェーガー同士の対決という展開に驚かされ、それはそれで楽しめるのだが、怪獣との戦いを期待しているこちらとしては肩透かしと感じられる。敵イェーガーの正体は何なのか…。その点は興味を惹かれるところ。

    前作から10年が経過しているが、まだ復興できていない街の残骸は痛々しい。でかい怪獣の骨が残されたままなのもリアル。怪獣を出現させていたゲートは閉じられているので、世界は明るさを取り戻しているようだ。前作は世界の終末観からか、夜の戦いのイメージが強かったが、本作は明るい陽の光の下での対決となる。

    物語的には地球を救った英雄スタッカー・ペントコストの息子ジェイク(ジョン・ボイエガ)と、怪獣に家族を殺されたアマーラ(ケイリー・スピーニー)が中心となる。だが、ドラマが特に深く掘り下げられるわけではなく、物足りない。前作で内容的な牽引力だった森マコ(菊地凛子)の活躍が見られないばかりか、あんな展開になってしまうのも淋しいところ。怪獣オタクのニュートンの存在は、本作でも大きい。でも、アリスとかサラとか名づけられたそれは何だったのか…。前作と関連があったか思い出せない。

    ようやく登場した怪獣たちが、日本を目指してくれるのは本家として嬉しいところ。東京での避難があんなに迅速にできるとは思えないが、まあ戦いの場にしてくれるのだから目を瞑ろう。そして最終目的地は、やはりあそこでなくてはならない。終盤のバトルロイヤルは熱いが、やはり高層ビル街では戦い難そう。最後の怪獣のでかさには圧倒されるばかりだ。小さなイェーガーと、高慢ちきで感じ悪かったあのキャラは、思いもよらない踏ん張りできっと株を上げることだろう。

    さてさて、ラストであんなこと言っちゃって大丈夫?
    次回作があるなら、そっちへ向かうことになりそうだ。

     

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  • 90点 肩に置かれた手(0)

    2018年4月13日 to キャロル

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    キャロル(ケイト・ブランシェット)がテレーズ(ルーニー・マーラ)の肩にそっと手を置く。この時のテレーズの何とも言えない、様々な想いがこめられたような表情がいい。男からも肩に手を置かれるが、それには全く反応していないといいう対比が素晴らしい。二人の関係性を暗示させる。その後二人の出逢いから描かれるので、冒頭のシーンはどのような流れで再登場するのか、興味を惹かれる。

    舞台は1950年代のニューヨーク。同性愛はまだ病気とされていた時代。運命的な出逢いと、そして恋に落ちてしまう二人の行方、キャロルの娘の親権を争う夫との確執が描かれていく。衣装からセットまで、丁寧に作り込まれているので、当時のアメリカ人の生活感が分かり易い。音楽も素晴らしく、画面の色具合まで実にいい雰囲気だ。

    二人の女優の演技も当然ながら素晴らしい。この手の作品には欠かせない、微妙な心の動きが伝わってくるようだ。ケイト・ブランシェットの堂々とした演技が嵌っている。ルーニー・マーラは受けの印象だが、控えめな芝居の中にも、秘められた想いが切々と感じられて見事。ルーニーといえば、『ドラゴン・タトーゥの女』のイメージが強かったので、これほどの演技派だとは知らなかった。彼女の魅力を再認識させられた作品となった。

    監督のトッド・ヘインズもゲイだというが、『見知らぬ乗客』や『太陽がいっぱい』のパトリシア・ハイスミスの自伝的小説が原作というのにも驚かされた。彼女が百貨店のバイト中に見かけた女性から、イメージを膨らませて書いたというので、パトリシアがテレーズということになる。『太陽がいっぱい』でホモセクショアルを指摘していたのは淀川長治さん。これまでそんなバカなとは思っていたのだが、鋭い指摘だったと感服せざるを得ない。

    禁断の愛と、時代に翻弄される二人の女性の姿が、美しく感じられる。余韻を残すラストにも、様々な想いが交錯して見事な映画であった。

     

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  • 80点 見知らぬ乗客(0)

    2018年4月10日 to トレイン・ミッション

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    ヒッチコックの名作、『見知らぬ乗客』では、知らない人物から交換殺人を持ちかけられた。本作の見知らぬ乗客からは、100人の乗客からある人物を探し出してほしいという相談を持ちかけられる。主人公は毎日この列車を通勤に利用していて、その他の乗客も大体同じ時間に出社するので見知った顔が多い。元警察官という職業を活かしながら、ターゲットを絞り込んでいく面白さ。探し人は何者なのか。依頼主の目的は何か。列車内の遺体に、犯人と疑われる主人公。そして遺された乗客たちを襲うピンチ。謎が謎を呼び、息つく暇も与えぬ展開に、最後まで手に汗握る面白さを堪能させてもらった。

    謎の女から依頼された人物探しを、何故承諾することになったのか。冒頭では毎朝の繰り返しのカットを何度も重ねていく。マイケル(リーアム・ニーソン)がある物を手にしてしまった途端に、契約成立と見なされてしまう。更に逃げられないように、周到に準備された罠。主人公がこの依頼を断れなくなっていく過程につい納得してしまうシナリオは、実に丁寧でお見事。親身になって力になってくれようとするある人物との会話、テレビのニュースなど、見逃したくない伏線だ。

    ターゲット絞り込みに使う切符については、日本では馴染みのない方法なので興味深い。マイケルに話しかけられて、不審に思う相手とのやりとり、カバンの中身を見せたくない心理などから、みんなが怪しく感じられてなかなか正体が掴めない面白さ。それぞれの会話、カバンの中身から、その人物像があぶり出されるのも実に巧みな描き方だ。

    マイケルが守ろうとするのは、家族だけではない。ターゲットと乗客までも最後まで守り抜こうと奮闘する姿に感服だ。終盤の乗客の団結は感涙もの。その中で、唯一自分の身の安全しか考えていない乗務員には笑った。テンポがよすぎて、じっくり考えているヒマを与えてくれないので、ちょっと分からづらかったり、疑問点もなきにしも非ずだが、充分楽しませてもらったので僕的には文句はない。

     

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  • 80点 定年間近の心の放浪(0)

    2018年4月8日 to 会社物語 MEMORIES OF YOU

    クレーシーキャッツ総出演であるが、明るく愉快な作品ではない。ハナ肇演じる花岡始は定年間近。勤続34年と、ずっとこの会社で勤めあげてきた。58歳で定年の時代らしい。若い頃、本作を劇場で観た時は、確かちょっと退屈に感じられたが、主人公と同じ年齢の今観直しなおしたら、感情的に実に身につまされるものがある。実にしみじみと味わい深い作品だった。

    ハナ肇は、終始沈鬱な表情。最終的な地位は課長だが、社内ではあまり存在感がなさそう。詳しく語られないが、家庭でも色々と問題を抱えているようだ。唯一の楽しみは、新入社員の由美の姿を盗み見ることくらいだ。彼女はそう、若く輝いている。娘の年齢の若い女性にときめいてしまうのは、彼に残された男の部分なのか、父親目線なのか。そんな花岡の気持ちに気付いたのは、これまた長く勤めている木村台子。演じる木野花が、実にいい。逆に花岡を見守る存在で、過去には憧れの気持ちもあった。こんなと言っては失礼だが、風采の上がらない花岡にも、そんな時代もあったのは救いか。

    花岡は昔、ドラムを叩いていた時期かあった。同じく定年が近い谷山啓(谷啓)がトロンボーンを吹いている姿を、驚いたように見つめるシーンが印象深い。彼は何を思ってその姿を見ていたのか。何れにせよ、ここからクレージーのメンバーが集まり、ジャズバンドを結成する。と言ってもそれはほとんど物語の終盤で、それまではずっと定年間近の会社マンの、心の放浪の描写が続く。

    市川準監督の演出は、相変わらずのドキュメンタリータッチ。物語とは直接関係なさそうな、社内の会話や風景が至る所に挿入される。それがまた、花岡に対する周囲の無関心や、花岡自身の感情の乏しさを浮き彫りにする。トイレで自分のウワサを偶然聞いてしまうのも辛い。送別会を誰も企画しようとしない。注目されている人物の、派手な退社との対比での取り残され感が半端なく居心地が悪い。

    そして花岡の物語と並行して語られる、由美の物語。華やかで清純に感じられる若い彼女にも、それなりの悩みはある。微かな期待を裏切られる花岡もまた、更にショックを受けたことだろう。もう本当に、観ているこちらが生きる気力を失ってしまいそうだ。

    そんな彼の気持ちを支えるのが、バンドメンバーとの出会い。練習やジャズについて語るシークエンスでの、花岡の楽しそうなこと。楽しそうではあるが、決してはしゃがないで落ち着いた芝居を続けるハナ肇は、やはり良い。コンサート当日の、簡単にはハッピーエンドにしてくれない事件。何も起こらない退屈と、時折起こる厳しい現実との狭間で、成す術もない会社人間の悲哀。本当に身につまされるものがあり、自分の実状を憐れむ。花岡にはまだドラムがあるからいい。僕なんか、こうして映画の感想しが書けない定年間近の男なのだ。僕はこれから、何を支えに残りの人生を生きていけばいいのだろう?

    本作はキネマ旬報ベストテンでは、惜しくも11位。ブルーリボンと毎日映画コンクールで、ハナ肇は主演男優賞を受賞。日本アカデミー賞でも優秀主演男優賞のノミネートを受けている。

     

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  • 80点 能面(0)

    2018年4月6日 to 山の音

    タイトルの意味は本作では語られていないため、ピンとこない。ただ、川端康成の原作にはその意味は示されているらしい。どんな音なのか、それが何を意味するのか気になるところだ。物語的には、嫁の菊子(原節子)と義父の信吾(山村聡)との、秘めた情愛ものということになろうか。冒頭の歩きながらの他愛のない話でのはしゃぎぶりから、二人の関係性にしては親密過ぎる印象を与えている。

    菊子の夫・修一(上原謙)は浮気をしている。慎吾もそれを知ってはいるので、嫁を不憫に思っているものの、なかなか行動に移すことができないでいる。修一がとにかく菊子に対して冷淡なので、かなり感じ悪い。何を考えているのかよく分からない役に、上原謙が結構嵌っているので、観ているこちらも彼のことが嫌いになる。菊子のことを子供扱いで、かける言葉は皮肉たらたらだ。それでも夜遅くに帰宅する夫を、かいがいしく面倒を看なければならない菊子が痛ましい。それなのに修一から菊子へ、夜の営みをへの誘いを暗示させるシーンもあり、その時の悲痛な表情の原節子がとてもいい。

    夫がこんなだから、義父の優しさに甘えてしまう菊子の気持ちも、分からなくはない。慎吾といるときの菊子は子供のように無邪気で、そんな子供っぽさも修一は気に入らないらしい。子供の能面が登場するが、これが原節子の表情とイメージが重なる演出が素晴らしい。面だからいつも同じ表情なのだが、角度や立ち居振る舞いによって、感情が表現できる。菊子もきっと夫の前では、同じ表情でいながら、様々な感情を態度で表していたに違いない。

    修一の浮気相手は、当初秘書の英子(杉葉子)かと思われたが、どうやら違うらしい。本当の相手・絹子(角梨枝子)の姿は、終盤にならないと拝めない。相当焦らされた後で見せるその顔は、悔しいかなかなり美人に感じられる。観る側の興味の期待値を上げておいて、それにどうだとばかりに応える演出が決まるのも見事。何故わざわざ浮気現場にまで英子を伴うのか。その後聞かされる修一の行状には驚き呆れてしまう。彼は相当病んでいる男のようだ。更に菊子に悲痛な決断をさせる展開に、慎吾にあらずとも憤りと同情を感じざるを得ない。

    映画は、原作とは違う結末を迎える。その決断は、同時に別なものも失うことも意味する。ヴィスタとは見通し線。奥行きが深く見える。その場所に、その会話。明るく見通しの良い広々とした場所は、菊子のふっきれた気持ちを感じさせる。これからの彼女の人生に幸あれと、願いたくなる終幕であった。

     

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  • 30点 キャメロン作品から抜かすべき(0)

    2018年4月1日 to 殺人魚フライングキラー

    序盤だけで観るのをやめようとしたが、ジェームズ・キャメロンの監督デビュー作だと聞いていたので我慢してしまった。それにしては酷い仕上がりなので、何かの間違いではないかとウィキで調べた。どうやら前人監督の代役で、キャメロン自身も僅か5日でクビを申し渡され、クレジットから外してほしいと談判したが、断られたという。だからこれはキャメロン作品とはいえないので、作品リストから外してほしいところだ。これは本人も強く願っていることだろう。

    『ピラニア』パート2にあたる本作は超低予算で、空飛ぶピラニアもしょぼい。襲撃シーンも迫力の欠片もなく、きっと役者がピラニアを持って喰いつかれている芝居をしているのだろう。音で盛り上げようとしているが効果は薄い。冒頭で男女が襲われた後のタイトルバックは、青と赤が、水と血をイメージして、波のように絡むがちと鬱陶しい。序盤は人物紹介となるが、如何にも小悪党たちを配するので、殺され要因と分かる。人物像もそれぞれに浅く、脚本の粗さが目立つ。ドラマも画面もほとんど盛り上がりを見せず、終盤のあれで終わりにしてしまうのは拍子抜け。時間の無駄であった。

     

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  • 90点 武器(0)

    2018年3月31日 to メッセージ

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    言語が変われば、思考も変わる。僕は日本語しか話せないので分からないが、そういうものかも知れない。言語学者ルイーズ(エイミー・アダムス)が挑むのは、未知の宇宙生命体の言語。それを理解した時、彼女はとんでもない能力を身につけてしまうことになる。それは、必ずしも本人に幸福をもたらすとは限らない、両刃の剣のような力だ。

    ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の演出は、じっくり間を取り、重厚感がある。静かに展開する物語と、胸に響くような重低音。アカデミー音楽編集賞受賞だけのことはある。美術賞こそ逃しているが、こちらもそれぞれに素晴らしい。謎の飛行物体はシンプルでいてミステリアス。ヘプタポッドも単純なデザインであるが、地球人とはかけ離れた進化の過程を辿ってきた生命体のイメージとして刮目すべきものがある。また、彼らが自在に操る文字が、円が基本であるというのも、想像できなかっただけに驚かされた。ノミネートは技術部門ばかりだったが、エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー達の、抑えめの演技も素晴らしい。

    宇宙船は世界各地に12機飛来。お国柄によって思惑も対応も違う。言語が変われば思考も変わるとなると、違う言語の人種の考え方もそれぞれ異なって当然か。彼らの目的は何なのか。言葉が通じない中でのやり取りは、疑心暗鬼を生む。「武器」という言葉が各国に亀裂を生じさせる。どういう意味で使っているのか。そして、ルイーズも「武器」を持っていると彼はいう。戦う目的で使われるものだけが、武器ではない。彼女の武器は、世界を一つにまとめるだけの力を秘めていたのだ。宇宙船は何故、地球に分散して現れたのか。伝えられる情報が、国によって違うのは何のためか。"非ゼロ和ゲーム"が、重要なキーワードとなる。

    ルイーズが悩まされていた、身に覚えのない記憶。それを知ってしまっても、彼女はその道を選ぶしかないのか。それをやめたら、どうなるのだろうか。待ちうける運命を、静かに受け止めるエンディングには、深く考えさせられるものがある。

     

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  • 80点 俗悪なリアリズムとは?(0)

    2018年3月29日 to 人生タクシー

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    イランのタクシーは基本、乗合のようで、複数の見知らぬ乗客が、狭い車の中でしばしの時間を共にする。料金設定がどうなっているか気にかかる。冒頭しばらくタクシーの運ちゃんの顔は出さず、車内からテヘランの町の風景が映し出される。路上駐車がかなり多くて、通行には不便さを感じる。そして乗り込んで来る客たち。見知らぬ同士でも議論まで始めてしまう。そういうお国柄なのか、イランの抱える問題を考えさせる為の、映画的な意見交換なのか。

    カメラは最後までタクシーの外に出ない。登場人物が外に出た時も中からその姿を追うが、会話は聞き取れない。観客は何をしているのだろうと、色々と想像するのでそれはそれで面白い。映画を観終わってから本作のことを調べたら、この撮り方の合点がいった。監督のジャファル・パナヒは、反体制的な映画作りと政府から裁かれ、20年間映画活動を禁止されているという。それでもイランの現状を訴えたい監督はタクシーの車載カメラを使い、そこに乗り込む客たちの言葉を借りて、問題提起をしていく。道理でカメラは外に出ない、というか出せない。思い切った手法を考えたもので、お見事である。

    やがて乗客の一人がパナヒ監督と見抜き、運転手の顔を見せ、本作の仕掛けが明らかにされる。素人か役者かは不明だが、おそらく全員仕込みだろう。実にユニークな客たち、メッセージを伝えたい意見の持ち主が次々と乗り込んで来る。交通事故の血まみれの被害者まで運ばれるが、救急車でなくタクシーに乗せるのはよくあることなのか、映画だからか。遺言を携帯に録画するというのは如何にも現代風。被害者の妻がギャーギャー騒ぎ過ぎて、夫の録音の邪魔をしてしまうのが、気が動転しているとはいえ何とも痛切だ。

    やがて監督の姪を乗せると、話の内容が更に興味深くなる。学校で映画を撮るという課題があるようだが、子供のうちからそういう教育がされているほど、イランは映画に熱心なのか。確かにアッバス・キアロスタミ、バフマン・ゴバディ、マジッド・マジディなど、世界的に評価されている監督は多い。

    姪が先生から聞いた映画に於ける「俗悪なリアリズム」という言葉は、イラン体制の現状を揶揄していることに相違あるまい。こういう素晴らしいアイディアの持ち主が、自由に映画を撮れないイランという国を、つい憂いてしまう。

     

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出木杉のびた さん

50代後半 男性
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