本物の偽者を描いた真実のドラマ。
2003/03/24 (月) written by フォルティ大滝(映画ライター)
ディカプリオによるスタイリッシュな天才詐欺師振りが痛快な、スピルバーグ節が冴え渡る小粋な親子愛ドラマ
”事実に基づいている脚本”に”レオナルド・ディカプリオとトム・ハンクスの共演”ときた。エンターテインメント映画を成立させるのに、これ以上の要素が必要だろうか。観客は相当の期待をして観ることになる。そして、その期待に見事に、しかも余裕で応えてみせるスピルバーグ監督。超一流の娯楽映画とは、まさにこの映画のことであると、言い切ってしまいたい興奮を隠せない。60年代のアメリカで実際に起きた、天才高校生詐欺師とFBI捜査官の繰り広げる大活劇を”観客のイメージ通りの60年代”を想起する映像やスコアで、小洒落た映画に仕立て上げた。
タイトルバックのアニメーションの意外性とその象徴的なタッチに感心しているのも束の間、ディカプリオ扮する天才詐欺師フランクが詐欺の才能を覗かせるシーンから、数々の信じられないエピソードが時間軸に沿って丁寧に描かれる。面白いのは、ディカプリオとハンクスは、”出会ってはいけない”共演者。それぞれの状況をバランスよく交互に映し出し、展開の把握を分かりやすく頭に入れさせる。ハンクスが手掛かりを掴み、意気揚々と現場に駆けつける頃には、ディカプリオはもう別の場所で別の人間として振るまっているという具合に。
撮影日数が56日間と、相変わらず驚異的なスケジュールで撮り上げてしまうスピルバーグ監督。そのスピード感がスクリーンに反映されてディカプリオとハンクスの捕物帳が完成しているのかと思えば、むしろ牧歌的な追っかけっこの様相を呈していたように感じた。ところが、2時間以上の上映時間を片時も飽きさせることなく、観客を釘付けにさせる脚本や演出、カメラワークの結果、あっという間にエンディングまで引っ張る。また、懐かしのパンナム航空の青を強調したデザインの小物がスクリーンいっぱいにドリーミィな演出をする。スチュワーデス候補生と横並びに歩いてくるシーンのなんと美しいことか!
ディカプリオはこういう役が似合う。アイドルチックにもてはやされているが、かなりの演技力を持っていると思う。ジョニー・デップと共演した「ギルバート・グレイプ」を彷彿させる”なりすまし”を見せてくれるからだ。しかも、自信満々に表面上なりすましてはいるが、細かい点は理解できていないというキュートな一面も若々しく演じ切っている。一方、ハンクス扮する体の固そうなFBI捜査官は、その印象を敢えて薄くさせたようだ。エリート色を消すことによって翻弄されている面を強調しつつも、ディカプリオを静かに見守っているような存在感を出す演技には毎度のことながら感動してしまう。
17歳の高校生が、次々と(自分の思いつくレベルの)エリート職業の人間になりすまし、詳細に下調べした後に大金を騙し取る。おまけにエレガントな手口で女性も口説いてしまうという、アンチ・ヒーロー的で映画的な題材を見事に料理してみせたスピルバーグ。なおかつ、もはや定番と化した家族愛のテーマをちゃっかり盛り込んで、自分色に染め上げてしまう頑なまでの職人芸のオンパレード。忘れちゃならないクリストファー・ウォーケンの圧倒的な影響力を持つ感動的な演技は、かなり重厚。だけど、結果的に軽いノリで見せてしまう監督の力量には、ただひたすら感心するばかりである。
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