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美しい“白い村”を蝕む暗黒の悪意

2010/12/06 (月) written by 高橋諭治(映画ライター)

ミヒャエル・ハネケ監督の2009年カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作が、いよいよ公開。2時間24分の全編がモノクロ映像というフォーマットからして“孤高の鬼才”の面目躍如たる問題作だ。



黒地に白抜きのテロップが浮かんでは消えていく静謐なメインタイトルに続き、何の変哲もない田舎の風景がスクリーンに映し出される。まもなく画面の奥から手前に走ってくる馬が突然転倒し、村でただひとりの医師が重傷を負ってしまう。これは落馬“事故”ではなく“事件”である。何者かが医師の自宅の入り口に仕掛けた針金が、まんまと馬を転ばせたのだ。

その針金はとうてい観客の肉眼では認識できない細さなので、私たちは「あっ、危ない!」という叫び声すら上げられず、目の前で起こったアクシデントを瞬時に理解することができない。この“見えない針金”は、その後も村人たちを震え上がらせる連続怪事件の第一の犯行であり、用意周到に幾つもの暗示がちりばめられたこの映画の本質を表しているかのようだ。何と恐ろしいファースト・ショットだろう!

舞台となるのは第一次大戦勃発前夜のドイツの小さな村。コミュニティの頂点に君臨するのは地主と教会だ。裕福な男爵が貧しく無力な農民たちを牛耳り、厳格な牧師が宗教の名のもとに子供たちを戒める。生活上のルールを破った子供は罰を与えられ、“純真”の象徴である白いリボンが巻かれるはめになる。

このヨーロッパの社会構造はいささか日本人には馴染みづらく、大勢の登場人物の相関関係を把握するのも骨が折れるが、本作を読み解くうえでは必須条件だ。やがて男爵と牧師の周辺で、火事、誘拐、ペットの惨殺などの異様な出来事が続発。どうやら姿なき犯人は村の権力者たちに対して並々ならぬ敵意を抱いているらしいのだが、なぜか標的を直接狙うことはない。その回りくどい不可解さが、まさしく“真綿で首を絞めるような”ねちっこい緊迫感を醸造していく。

これはミステリー映画なので、当然「犯人は誰なのか?」が気になるところだ。ところがハネケ監督は村の若い教師を探偵役に見立て、わざわざナレーションまで導入し、犯人特定の決定的なヒントを提示してくれる。そう、ハネケの狙いは犯人捜しにとどまらず、ミステリーのもうひとつの焦点である「犯人はなぜこんなことを犯したのか?」という動機とその病んだ背景を観る者に探らせることにある。

エンドロールを見届けた後も薄ら寒い余韻がまとわりつく。そして想像を膨らませれば膨らませるほど、ハネケ魔術の迷宮の闇から逃れられなくなるのだ。

【関連人物】
ミヒャエル・ハネケ
【関連作品】
白いリボン

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