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円熟の域に達した、デプレシャンの“もてなし”の術

2010/11/26 (金) written by 相田冬二(ノベライザー)

アルノー・デプレシャン。現代フランス映画界を代表するこの監督の、ひとつのフィナーレともいうべき一作が本国公開から2年遅れで到着する。



150分。とはいえ、彼のかつての映画の尺を知っている者なら決して長いとは思わないだろう。そう、アルノー・デプレシャンと呼ばれる監督にとって2時間半など、ごくごく軽いひとときに過ぎない。事実、『クリスマス・ストーリー』はとても観やすい一作に仕上がっている。

クリスマス前後の数日が浮き彫りにする、ある大家族の肖像。ある不在をめぐる因縁が、家族ひとりひとりを近づけ、そして離れさせる磁力となる。

あたかもページをめくるたびにときめきが降ってくるように留意された本のように、読む=観ることの歓びを約束するデプレシャン流の「もてなし」の術は、いよいよ円熟の状態に入った。

多くのひとに愛されている『そして僕は恋をする』にあったような、スリリングな吐息がきれぎれに胸に響いてくるような瞬間はない。あるいは、前作『キングス&クイーン』には残っていた軋む痛みのひりひりするような感覚も見当たらない。物語を見つめる視点はかつてよりはるか上空にあり、映画はジグザグに落ちていく雪の結晶をただただ丁寧に見つめ掬い取る、これはその素手のぬくもりだけを感じる作品なのである。

万年、いや永遠の青年のように思われていたデプレシャンがここにきて見せる成熟に戸惑い、うろたえるファンも少なくないだろう。カトリーヌ・ドヌーヴを中軸に据え、デプレシャン作品の代名詞ともいうべきマチュー・アマルリックら常連俳優たちが周囲を彩る安定感のある構造も、ある種の落ち着きのなさが専売特許だったはずのこの監督の思いがけない成長を明るみにする。しかし、キャラクターひとりひとりの欠落と美点を同時に描き切り、推移と展開に諧謔と批評が併走するデプレシャンならではの豊穣な筆致は、ますます独自性を浮き彫りにしている。

懐かしいようでいて真新しい、感情の襞に遭遇することの喪失と奇跡のタペストリーを編み上げるデプレシャン。そのはにかむような誠実さは不変だ。いずれは到達したであろうその境地が、想像以上にはやく訪れただけのようにも思える。ことによると、描かれる家族の一代記よりも、デプレシャンの監督としての半生のほうが、ヴィヴィッドに胸を掴まえるかもしれない。その意味でも、言わばこれは痛切な幸せに彩られた作品なのだ。

(c)Jean-Claude Lother/Why Not Productions

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