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現代社会を“多層的”に描く。『ジュピターズ・ムーン』監督が語る

(2018/01/23更新)
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前作『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』がカンヌ映画祭の“ある視点”部門でグランプリに輝くなど近年、大きな注目を集めているハンガリー出身のコーネル・ムンドルッツォ監督の新作『ジュピターズ・ムーン』が27日(土)から公開になる。難民問題で揺れる欧州を舞台に、国境警備隊に撃たれたことを機に空中を“浮遊”できるようになった少年と、人生の再起を目論む医師の逃避行を描いた作品で、ムンドルッツォ監督は現代の欧州が抱える問題を盛り込みながら、観客が様々な側面から楽しめる“多層的な映画”を目指したという。


『ジュピターズ・ムーン』

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現代社会を“多層的”に描く。『ジュピターズ・ムーン』監督が語る
現代社会を“多層的”に描く。『ジュピターズ・ムーン』監督が語る
現代社会を“多層的”に描く。『ジュピターズ・ムーン』監督が語る

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内戦や混乱が続く母国を離れ、比較的安全なヨーロッパを目指す難民は多く、国境地帯の難民キャンプは人であふれかえっているが、本作に登場するシリア人少年アリアンも父と共に故郷を離れて欧州を目指している難民のひとりだ。しかし、彼はセルビアからハンガリーの国境を越える際に父とはぐれ、さらには警備隊の銃撃を受けて病院に運び込まれる。そこにいたのは、医療ミスで患者を死なせてしまった医師シュテルンで、彼は瀕死の傷を負ったはずのアリアンが地面から離れて空中に浮かび上がる姿を目撃する。はぐれた父を探すアリアンと将来が閉ざされたシュテルンは、現状を打開するべく行動を共にする。

難民問題やテロの脅威など本作は現実の社会問題を取り込んでいるが、ムンドルッツォ監督は「私はソーシャル・リアリズム(政治色に強い芸術群)が好きじゃないんですよ」と笑みを見せる。「ハンガリーは共産国だった時代にソ連の影響を受けていましたから、強い政治的メッセージをもった映画ばかりをたくさん見させられました。でも、そういう映画は真実を反映していないものです。むしろ、ソ連のSF映画がいい例ですけど、寓話やサイエンス・フィクションの方が現実の社会の現状を描き出したり、鋭く批判していたわけです」

そこで監督は、現在の欧州に“空中を浮遊する少年”を持ち込んだ。「私が子どもの頃に好きだった『Ariel』という小説に出てくる空飛ぶ少年が基になっています。最近の映画は、複雑なことを無理に単純に描こうとする傾向がありますが、私は多層的で、様々な出来事が発生し、そのどれもが“白黒”つけられない状況を描こうとしました。そうすることで、私たちがこの地上で暮らすことのプレッシャーや混沌を感じられるようにしたいと思ったわけです。同時に少年が地面から浮かび上がることで、観客には深呼吸をするようにホッとした気分を感じてほしかったですし、私たちが生きるこの世界を、これまでとは少し違った視点から観てもらいたいと思いました」

空中を浮かび上がる少年と、追いつめられた医師は金を稼ぎ、行方不明になった父を探しながら現状を打開しようと奔走する。しかし、国境警備はさらに少年を追いつめ、医師もまた逃げ場をなくしていく。ムンドルッツォ監督は出口の見えない状況を描くべく、キャラクターとドラマを丁寧に配置した後、「地上のプレッシャーとカオスを映像で語ること」に力を注いだ。「これが本当に大仕事でした(笑)。映画というのはテーマに合わせて独自の“映像言語”を持っていなければなりません。そこで私たちは考えた末、この映画ではあえてレンズを変えずに、手持ちカメラや長まわしを駆使して“カメラがまるで魂を持ったように動く”映像を目指しました。カメラは自我があるかのように振舞うので、ある場面では登場人物に追随しますし、ある場面では登場人物に対して何らかの判断を下すかのように動きます。その上で、キャラクターがいる前景だけでなく、中景・後景で起こる出来事も余すところなく捉えるようにカメラワークを決めていきました」

興味深いのは、少年や医師だけでなく、映画に登場するすべてのキャラクターが元にいた場所に戻ることのない“一方通行の道のり”を歩んでいることだ。多くの難民がそうであるように、彼らは安全な場所を目指して移動するが、困難や危険が絶えず襲いかかり、故郷に戻ることが幸福や安心や問題の解決を意味しない。ムンドルッツォ監督は「現代において私たちは多数派であろうと少数派であろうと、何らかの意味で歴史や過去からの亡命者であり“エグザイル(流浪の者)”の側面を持ち合わせている」と語る。「この問題に解決の糸口はあるのか? 正直なところ、私は“わからない”と答えるしかありません。しかし今、何が起きているのかは把握できますし、戦後に現れた多くのイデオロギーの中に私たちが求める答えがなかったこともわかっています。そんな中で描かれる“一方通行の感覚”は、この映画をとても現代的なものにしていると思います」

そこで監督は、混沌と重圧に満ちた地上から少しだけ浮かびあがる少年に“希望”をこめたという。「この少年が象徴しているものは、単純に言ってしまえば“希望”です。この映画の中で私はあえて、空を飛ぶ少年という“非・理性的”な要素を取り入れました。もし、私たちが“今ここにある現実は表面的なものに過ぎない”と信じることができるなら、表面的な出来事の“先”へとつながるゲートが必要になるでしょう? 空飛ぶ少年はそのゲートを象徴しているのだと思います」

木星に浮かぶ衛星(ジュピターズ・ムーン)エウロパと同じ語源をもつ欧州(EUROPA)を舞台にした本作は、SFでもあり、アクションでもあり、現在の世界情勢を描くレポートでもあり、希望を失った人間が出口を探してもがく人間ドラマでもある。ムンドルッツォ監督の描く多層的な世界は、幅広い観客を魅了しており、日本の観客からも好評を集めそうだ。

『ジュピターズ・ムーン』
1月27日(土) 新宿バルト9ほか全国ロードショー

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