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すべては“正しい情報”から始まる。監督が語る映画『タクシー運転手』

(2018/04/16更新)
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『グエムル 漢江の怪物』『シークレット・サンシャイン』の名優ソン・ガンホが主演を務める『タクシー運転手 約束は海を越えて』が21日(土)から公開になる。本作は、かつて韓国で起こった“光州事件”にまつわる物語を、実話を基に描いた作品で、「真実は自然と現れるものではなく、最善の努力、時には命をも懸けた努力によって現れる」と語るチャン・フン監督は、抵抗する住民でも、弾圧する政府でもなく、“正しい情報”を世界に伝えようとするふたりの男のドラマを描いた。


ソン・ガンホとチャン・フン監督

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すべては“正しい情報”から始まる。監督が語る映画『タクシー運転手』
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本作の舞台は1980年。当時の韓国は軍事独裁体制が敷かれていたが、民主化に対する要求が高まりつつあった。ドイツ人記者のウィルゲン・ヒンツペーター記者はある日、韓国で大規模な抗議行動が起こっているとの情報を聞きつけてソウルに渡る。民主化運動が起こっているといわれる光州に向かいたいヒンツペーターが乗り込んだタクシーを運転しているのは、若者のデモに眉をひそめる平凡な男マンソプ。愛する娘のことだけを考えて暮らしている彼は、外国人記者を乗せて光州に行き、高額な報酬を手にしてソウルに戻ってくるつもりだった。しかし、彼らは予想もしなかった事態に巻き込まれていく。

この映画は史実を“モデル”にした作品で、創作された部分もあるが、光州を取材したドイツ人記者は実在の人物だ。彼は2003年に韓国で言論に関する賞を受け取ることになり、授賞式のスピーチで「光州市民とタクシー運転手であるキム・サボクさんに感謝する」と語った。彼が決死の想いで撮影した映像は世界中で放映されたが、彼が語る“キム・サボク”のことを誰も知らなかった。チャン・フン監督は「本作の製作会社は“タクシー運転手キム・サボク”を見つけようと努力をしていました」と振り返る。「ヒンツペーター氏が言っていた年齢層に当てはまる全国のキム・サボクという名前の男性を捜し出し、その方の写真をヒンツペーター氏に送ったりもしましたが、残念なことにその中に本人はいないと言われました。当時は軍事独裁下で、政権に反発すればすぐにでも韓国国軍保安司令部に捕えられかねない危険な時期だったので、もしかすると、そのタクシー運転手が本名ではない“キム・サボク”という名前を教えた可能性もあると考えました」

そこで製作会社は、ヒンツペーター氏とやりとりをしながら、タクシー運転手“マンソプ”が主人公の脚本を作り上げ、チャン・フン監督にメガホンが託された。あの日、光州でどんな出来事があったのか? そしてドイツ人記者と言葉の通じない韓国人ドライバーの間にどんなドラマがあったのか? こう書くと終始シリアスで重厚な映画をイメージするが、本作は思わず笑ってしまうコメディの要素があり、感動ドラマの側面があり、厳重な警備を突破して目的地を目指すサスペンスの要素も兼ね備えている。「実話を扱う映画ではあるのですが、どのようにして観客を映画に引き込むことができるのか? が悩みどころでした。史実と、観客の関心を引く映画的な要素のバランスの最も大きな部分は“人物”だったと思います。主人公マンソプを演じたソン・ガンホさんが、素晴らしい演技で実話と観客のための映画的な伝達の均衡点を作り出していったのです」

マンソプは、単に“金が稼げる”という理由で言葉の通じない外国人記者を乗せて光州へ旅立つが、彼はそこで想像を絶する光景を目にする。「光州民主化運動が起きた当時、光州は“陸の孤島”と化していましたが、外国にその事実が報道された後、むしろ光州と海外を除いた韓国の地域全体が“真実から孤立した島”になりました。その後の数年間、独裁軍事政権の言論統制により真実が知らされなかったのです。 またこのように長きに渡り真実が隠蔽され歪曲されたせいで、その真実をすべての人が認めるまで、かなり長い時間がかかってしまいました。この映画が封切られる頃でさえ、ごく少数でしたが、当時の独裁軍事政権が広めたデマを相変らず信じていた人がいたし、映画に対する否定的な反応も聞かなければなりませんでした。 それは残念なことでした」

これまでも光州事件を題材にした映画はいくつか製作されているが、本作はドイツ人記者と、政治にはたいして関心のないタクシー運転手が、光州での出来事に直面し、政治運動に参加したり、軍事政権に立ち向かうのではなく、自分が見たことを多くの人々に“正確に伝えよう”とするところが最大のポイントだ。「民主主義にとって“正しい情報”が最も重要な部分のひとつです」とチャン・フン監督は語る。「情報が正確でなければ、マスコミが真実を報道しなければ、一般大衆の真実が何なのか知らぬまま、歪曲された真実を知らされたとしたら? その後に出される多くの理解や解釈、判断は間違った情報の上に作られてしまう。それはあまりにも残念で、また危険なことだと考えます。事実をありのまま見ること。それこそがすべての始まりではないでしょうか」

戦場のように荒れ果てた光州の町で、ヒンツペーター記者と運転手のマンソプは街の人々と交流を深め、壮絶な光景を目にし、その模様をおさめたフィルムを手に再びソウルへ戻り、ヒンペーターは韓国の外へ向かおうとする。そこには言葉にならない想いがあり、哀しい決断があり、いつしか生まれた深い友情のドラマがあった。「私も事実をありのまま見るために、多くの努力が必要でした。 真実は自然と現れるものではなく、最善の努力、時には命をも懸けた努力によって現れるのだと、本作をつくることでさらに確信したような気がしています」

『タクシー運転手 約束は海を越えて』
4月21日(土)より全国公開

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