ただいまの掲載件数は タイトル59427件 口コミ 1151414件 劇場 589件

映画情報のぴあ映画生活 > 作品 > リズと青い鳥 > ニュース > 感情の“かすかな動き”を描く。山田尚子監督が語る映画『リズと青い鳥』

感情の“かすかな動き”を描く。山田尚子監督が語る映画『リズと青い鳥』

(2018/04/19更新)
  • Check
  • このエントリーをはてなブックマークに追加


映画『聲の形』で高評価を集めた京都アニメーションの最新作『リズと青い鳥』が21日(土)から公開になる。映画『聲の形』は男女を主人公に人間の感情の動きをダイナミックに捉えた作品だったが、新作ではふたりの少女を主人公に、将来に不安を抱える若いキャラクターの感情の細やかな動きを丁寧に描き出している。「前作とはまったく違う題材で、これを逃したら、なかなか出会えない作品だと思った」と振り返る山田尚子監督は、どのようなプロセスを経て、完成形にたどり着いたのだろうか?


『リズと青い鳥』

フォトギャラリー

感情の“かすかな動き”を描く。山田尚子監督が語る映画『リズと青い鳥』
感情の“かすかな動き”を描く。山田尚子監督が語る映画『リズと青い鳥』
感情の“かすかな動き”を描く。山田尚子監督が語る映画『リズと青い鳥』
感情の“かすかな動き”を描く。山田尚子監督が語る映画『リズと青い鳥』
感情の“かすかな動き”を描く。山田尚子監督が語る映画『リズと青い鳥』
感情の“かすかな動き”を描く。山田尚子監督が語る映画『リズと青い鳥』

※ 各画像をクリックすると拡大表示されます。

映画の主人公は、高校の吹奏楽部でオーボエを担当している鎧塚みぞれと、フルートを担当する傘木希美。親友でいつも一緒に行動するふたりは、三年生で高校最後のコンクールに向けて練習の日々を送っている。屈託のない性格で仲間や後輩からも愛されている希美と、希美の存在がすべてで、今は一緒の日々が続いているけれど、終わりの日がやってくることを恐れているみぞれ。ふたりが掛け合いでソロを担当する『リズと青い鳥』は、童話を基にした楽曲で、その物語には美しく穏やかな森で暮らす女性リズと、ある日、彼女のもとにやってきた青い髪の少女の日々が描かれていた。映画は、驚くほど近い場所にいるのに距離を感じてしまうふたりの高校生の物語と、童話『リズと青い鳥』の物語が交互に綴られる。

本作は、武田綾乃の小説が原作の『響け! ユーフォニアム』シリーズの1作で、過去にはTVシリーズや映画も制作されたが、山田監督は初期の段階から「これまでのシリーズを知らないと、観られないような映画はつくりたくなかった」という。「最初から『リズと青い鳥』というタイトルの1本の映画をつくろうということだけを考えてましたし、もし、過去の作品を観ていないと理解できない要素があるのだとすれば、その部分を削除するのではなくて、初見の人が観てちゃんとわかるようにつくろうと思って制作しました」

映画は先に述べたとおり、吹奏楽部の少女ふたりの物語と、彼女たちが読む童話の世界の物語が交互に描かれる。「最初からふたつのパートは、自分の中でも人格を切り分けるようにつくっていこうと決めていました。童話のパートは、誰もが子どもの頃に観ていた普遍的なアニメーションの文法や表現に挑戦しました。こういうアニメーションにはずっと憧れがあって、出てくるパンが美味しそうだったり(笑)子どもの頃にいいなぁと思っていたものを落とし込める。心地のいい世界ですし、画に丸みがあって、シーンの空気を表現することに快感がある。いつかはやってみたかった手法です。逆に、少女ふたりのパートでは、ふだんのアニメーション表現、たとえば“まばたき”であれば、アニメ的なまばたきの速度や表現はすべて取り払って、現実の世界で人間が本当にまばたきする速度で描いています。だから、ふたつの世界は完全に切り分けて考えていきました。ただ、童話のパートも昔ながらのアニメーションを“そのまま”再現することには意味がないんです。やっぱり、オリジナルなものがないといけないですし、映画の一部ではあるので、古き良きアニメーションの手法をうまく使いつつ、“この映画の表現”になっていることを一番大事にしました」

どこか懐かしさを感じるタッチで描かれるリズと少女のパート、高校生みぞれと希美のある時期を丁寧に切り取ったパートは、どちらも慎重にルックや視点(カメラ位置とアングル)が選ばれているが、コンテ作成で試行錯誤が繰り返された映画『聲の形』とは違い、「今回の映画ではカメラ位置ではあまり悩まなかった」と監督は振り返る。「この映画に出てくるふたりの少女の話は、誰かに見せるためにやっているわけではない“ただただ秘密にしておきたい話”だと思うんですよ。それを撮る側が無理矢理に引き出して、観客に見せるような行為はこの作品には似合わないと思ったので、今回は望遠レンズで彼女たちに気づかれないように“隠し撮り”するような感覚で描いていきました。“覗き見”ですね(笑)。ボソッと独り言をいうような“他人のことを気にしていない瞬間”を撮らせてもらいたいと思ってましたし、彼女たちの感情を取りこぼさないように描くことに夢中でした」

生身の俳優が演じる実写映画であれば、丁寧に演出をつけた後に、俳優がカメラを意識しない場所にカメラを設置すれば良い。しかし、アニメーションの場合は、キャラクターから離れた場所にカメラアングルを設定した後に、登場人物をゼロから“手で描く”ことになる。「アニメーションの“演技”は、こだわりだすと無限の世界なんです(笑)。キャラクターそれぞれのモノの見方があるわけで、それをどこまで拾わせてもらうか? ということになるわけですけど、私はいつも“フレームの外”を感じさせることが大事だと思っています。このショットで描かれていることがすべてではなくて、カメラに映ってない部分まで感じられるようにしたいと思っています」

山田監督のこだわりは、本作では重要な役割を果たしている。親友なのにお互いに苦しさを感じて少しずつ離れていくみぞれと希美、森で幸福で暮らしているのに青い髪の少女に“あること”を告げるリズ。ふたりは近くにいるのに心の距離がある。ふたりは離れていてもお互いのことを想っている。観客はスクリーンを見つめながらフレームの外、つまり“そこにいない人”のことを考えるだろう。「この映画に出てくるふたりはそれぞれ違うことを言ってるんですけど、実は同じテーマに向かって歩いていっている。その部分をちゃんと表現できたのか、今も少し不安です(笑)。ただ、制作中は“ノリ”でやってしまったらダメだということは本当によくわかっていたので、それぞれのキャラクターがどの場所にいて、どの位置にいて、何を想って、どこを見ているのか……ひとつひとつ大事に描いていきました」

ポイントは、監督がこだわり抜いて選んだカメラ位置やキャラクターの動きのすべてが、キャラクターの感情の細やかな動きに密接に結びついていることだ。「この映画の肝は、会話としては成り立っているけど、相手に言ってほしいことがお互いにズレていたり、感情と言葉がズレていたりする部分なので、無神経に描いてしまうとすべてが壊れてしまうんですね。だから、今回の映画では感情の動いていく様をとにかく丁寧に描こうと思いました。この映画に出てくるのは、大人になってしまったら一歩で乗り越えられるような、そんなことがあったと気づかないほどの感情の機微(表面をパッと見ただけでは、わからないほど細やかな変化や動き)なので、気が遠くなるような作業なんですけど(笑)、とにかく感情の動きを細かく細かく分解して、細かく細かく組み立てていく。それは前作(映画『聲の形』)で扱ったものとはまったく違うもので、ヘタをすると“ひとりよがり”になりかねない題材ですから、観てくださる感情に寄り添えるように、キャラクターと向き合って、物語とも、映画を観てくださる方とも向き合って、どこかひとつでもNOが出たら採用できない状況でつくっていきました」

細部まで徹底的にこだわって、感情のかすかな動きも逃さない。そのために本作では音も緻密に設計されている。キャラクターの動き、感情の揺れに音楽と効果音が時にシンクロし、時に意図的なズレを生み出す。「みぞれと希美が歩く音、生活する音から“音楽”が生まれ、環境の音も取り込んだ形でのミュージカルをやっていこうと。だからこの映画では“気配”を音にする効果がついていて、夏だからセミが鳴いてる、というようなことではなくて、彼女たちを包んでいる世界を表現する音をつけて、映画音楽と効果がふたつでひとつになるように設計されています」

山田監督とスタッフがここまでこだわったのは、本作が描く題材が、他の映画やアニメーションでは「なかなか描かれないもの」だったから。「原作者の武田先生の目のつけどころが本当に面白いんです。前作とはまったく違う題材で、これを逃したら、なかなか出会えない作品だと思ったし、やるからには原作に恥じないものを、と思ってやりました。いまはこの作品に挑戦できて本当に良かったと思っています」

『リズと青い鳥』
4月21日(土)公開

【関連リンク】
『リズと青い鳥』作品情報
人間の“本質”を描き出す。山田尚子監督が語る映画『聲の形』

DVD情報


映画『聲の形』Blu-ray 通常版

定価:5616 円(税込)
価格:4281 円(税込)
OFF:1335円(23%)
監督山田尚子
出演入野自由,早見沙織,悠木碧,小野賢章,金子有希
発売日2017年05月17日

 


【注目のニュース】
箱根の岡田美術館、『開館5周年記念展 美のスターたち』開催

『アンダー・ザ・シルバーレイク』予告公開
『あの頃、君を追いかけた』メイキング公開
O・ストーン最新作の主演は
『プーと大人になった僕』キャラポスター
満足度第1位は『英国総督…』
『カメラを止めるな!』監督が語る
『来る』特報映像&劇中カット公開
『コード・ブルー』動員ランキングV3!

 

映画ファン必携の一冊! ぴあ Movie Special
1
【関連作品】
リズと青い鳥

(C)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 

Myページ

ログイン

はじめての方はこちらから

新規ユーザー登録
ぴあ映画生活 facebook公式ページ
ニコニコ生放送 週刊ぴあ映画生活


上映情報

他の地域

 

この映画のファン

  • kapell
  • shiron
  • Miran
  • なつみかん。
  • ☆HIRO☆

 

ユーザ登録をするとこの映画のファンに加わることができます

関連動画

関連動画がありません


『インクレディブル・ファミリー』特集
『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』まとめ
新作続々、公開中!マーベル・コミック映画ニュースまとめ!
『ジュラシック・ワールド/炎の王国』まとめ
ぴあの映画特別号「ぴあ Movie Special」、最新号となる夏号が7/10発売!
今度のオーシャンズは“豪華でド派手”! 豪華女優陣に華麗に騙される 『オーシャンズ8』ほか、S・ローナン主演の儚く美しいラブストーリー『追想』など続々更新中! 映画論評・批評の新コーナー“critic”

クチコミ満足度ランキング

初日満足度 観客動員数 DVDレンタル

満足度 投稿数 観たい ファン

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』まとめ
未来の映画監督たちよ、ここに集え!