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人生はいい方向にしか進まない。唐田えりか&濱口竜介監督が語る『寝ても覚めても』

(2018/09/05更新)
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『親密さ』『ハッピーアワー』の濱口竜介監督の最新作『寝ても覚めても』が公開されている。本作は同じ顔を持つふたりの男性の間を揺れ動く女性・朝子を主人公にした作品で、劇中には観客が衝撃を受ける展開や、アッと驚く決断が描かれるが、監督はそこで描かれるドラマを「驚くと同時に深く納得する」ものだという。観客は朝子のドラマをどのように受け止めるのだろうか? 濱口監督と朝子を演じた唐田えりかに話を聞いた。


唐田えりか、濱口竜介監督

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人生はいい方向にしか進まない。唐田えりか&濱口竜介監督が語る『寝ても覚めても』
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大阪で暮らす女性・朝子はある日、麦に出会い、瞬く間に恋に落ちる。彼女は麦とずっと一緒にいることを願うが、ある日、麦は忽然と姿を消してしまう。2年後、朝子は東京にある小さな喫茶店で働いていた。そこで彼女は店の向かいにあるオフィスにデリバリーのコーヒーポットを回収しに行き、麦とまったく同じ顔の男性・亮平に出会う。ふたりの顔があまりにも似ていることに朝子は激しく動揺するが、朝子と亮平は少しずつ距離を縮めていき、ふたりは恋人になる。時が流れ、朝子は亮平と穏かな日々を過ごしていたが、ある日、彼女は麦の行方を知ってしまう。

東京藝術大学在学中に発表した『PASSION』で注目を集め、以降、様々な作品を手がけてきた濱口監督は、オリジナルではなく、柴崎友香の同名小説の映画化で商業映画デビューすることになった。「プロデューサーの方と2014年ぐらいから何か映画をやりましょうという話になって、やりたい原作はありますか? と言われたときに僕が出したのがこの小説だったんです。最初に読んだ時から“これは映画になるな”とは思っていたんですけど、当時は自分が映画化したいと思ってもできる状況ではなかったですし、“これは映画化できるな”という印象だけはありました。これは本当にラッキーしかないというか(笑)、これまでは自分で脚本を書きながら考えるしかなかったわけですけど、今回は原作の構造を脚本にしていけば、これまで自分が四苦八苦してきたことをやらなくて済む原作だった。だから、原作と少し変えた部分もありますけど、基本は原作をちゃんと映画化して、そこに説得力をもたせることができるかが大事でした」

見た目はまったく同じだけど、タイプはまったく違うふたりの男性に出会う朝子の心は揺れ動き、突然の出来事に翻弄され、想像もしなかった決断をして突き進んでいく。映画化するにあたり、朝子を誰が演じるのか? オーディションが行なわれ、濱口監督は本作が本格的な映画デビューになる唐田えりかを選んだ。「出来すぎた話ですけど、オーディションで“彼女しかいない”って思ったんですよね」

一方の唐田も朝子のキャラクターをすんなりと受け入れることができたという。「最初に脚本を読んだ時からすごく感情移入できましたし、朝子がとる行動に対して疑問も感じなかったんです。私も直感で動いてしまうというか、ウソがつけないタイプだし、今という瞬間を大事に生きてきたので、演じていても“朝子は何でこんなことするの?”という場面がまったくありませんでした」

それでも唐田は演技の経験が多いわけではない。だからこそ、麦と亮平を演じた「東出(昌大)さんの存在は本当に大きかった」と振り返る。「東出さんは麦の場面と、亮平の場面ではまったく違う感じで、私の感情も違ってくるんですよ。監督から“相手のお芝居をちゃんと見て聞いてください”って言われてたんですけど、東出さんをはじめ、共演者のみなさんのお芝居をちゃんと見ていたら感情が自然と出てきましたし、みなさんに助けていただいたおかげで、あの場所にいることができたという気持ちが大きいです」(唐田)、「演技というのは、相互作用で出来ているはずだから、唐田さんは本当に素晴らしいと思って見てましたけど、それは東出さんのおかげであるとずっと思ってました。お互いが与え合って、返し合っていた気がしますし、今回の映画は常に役者さんたちが先を走っていって、それを追いかけていく感覚がずっとありました」(濱口監督)

撮影の裏側は彼女が語った通りだが、物語の世界では朝子の周囲の人間が、彼女のとる行動や選択によって大きな影響を受ける。これから映画を観る人も多いため、詳しくは語れないが、劇中で朝子がとる“選択”に衝撃を受ける人がいるかもしれない。しかし、ここで描かれる行動は決して不可思議だったり、突飛なことではなく、誰もがとり得る選択だ。「小説を読んでいるときも、“まさかそう来るのか!”と思いながら、すぐに“でも朝子はそういう人だよな”って。それは、驚くと同時に深く納得する体験なんですよ」(濱口監督)、「この選択は事前に何かがあって決まったことではなくて、“その瞬間にすべてが決まってしまった”という感覚なんだと思います」(唐田)

平凡な出来事の繰り返しだと思っていた私たちの日常には突然、想像もしなかったことが起こる。想像もしなかったような選択をする。そこには予兆も準備もない。それは突然やってきて、私たちの日常を変えてしまう。いや、そもそも日常とはそういうものかもしれない。それは恐怖なのか? それとも希望なのか? 唐田は「もちろん恐怖もあるかもしれないですけど、私は“希望”だと思います」と笑顔を見せる。「自分のことを押し殺したくないし、自分に正直でいたいと思っています。直感で動いた結果、人を傷つけてしまうことが仮にあったとしても、それがあってこその“今”だし、すべてがつながっているわけだから後悔はないだろうし、それを信じてやっていきたいと思います」

濱口監督も「人間はいつも最良だと思った選択しかできないと思う」と語る。「現実認識としては、どれだけ幸福であっても、何が起きるかわからないし、すべてがひっくりかえることはあると思っています。でも昔、大学の先輩に“選んだことがいいことになる”って言われて、まったくそうだなって思ったんですよ。人間はいつも自分なりにその時のすべてを勘定に入れて何かを選ぶわけで、それがどんな結果になろうと、やはりそれが最良の選択なんですよね。だから、自分で選択をする限り常に、待っている結果はあり得る最良のものだと思いますし、それを“希望”と呼ぶのかはわからないですけど、基本的に僕は“人生はいい方向にしか進まない”と思っています」

『寝ても覚めても』
公開中

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