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ドイツの若き巨匠ファティ・アキン監督が語る新作『女は二度決断する』

(2018/04/12更新)
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ベルリン映画祭で金熊賞に輝いた『愛より強く』やカンヌ映画祭で脚本賞を受賞した『そして、私たちは愛に帰る』など、発表する作品が常に世界の映画祭で高い評価を受けているドイツのファティ・アキン監督。まだ40歳半ばながら、すでに巨匠の域に入ったといっていい彼が新作『女は二度決断する』を語る。


ファティ・アキン監督

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ドイツの若き巨匠ファティ・アキン監督が語る新作『女は二度決断する』
ドイツの若き巨匠ファティ・アキン監督が語る新作『女は二度決断する』
ドイツの若き巨匠ファティ・アキン監督が語る新作『女は二度決断する』

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まず今回の作品のベースは、ネオナチグループ“NSU(国家社会主義地下組織)”がドイツ国内で2000年から07年にかけて起こした連続テロ殺人事件にある。トルコ系移民を中心に犠牲者が出たこの事件に誘発された経緯をこう明かす。「トルコに出自を持つ自分としても無視できない事件だった。2011年にようやく犯人が逮捕されたんだけど、全貌を知ったときは怒りに震えた。ネオナチの犯人たちへの怒りも当然あった。でも、それ以上に僕が憤りを覚えたのはドイツのメディアと警察の捜査の在り方。というのも警察当局はトルコ系というだけでドイツのマフィアと関係づけた思い込み捜査に走ってしまった。マスコミも同じ見解で、トルコ系移民でさえ“どうせマフィア絡みだろう”と思っていた。結果、“マフィアとは関係ない”といい続けた遺族や家族の声に10年もの間、耳を傾けることはなかった。これを知った瞬間に思ったよ。“このことはいつか映画にしないと”とね」

実はこの事件以前からネオナチは題材に考えていたという。「実はネオナチについては1990年代から向き合ってみたいテーマだった。ベルリンの壁崩壊による東西統一のときから、ネオナチの活動が活発化したこともあって、映画作家としての自分の視点の中に入っていた。ただ、当時はまだ自分の中で機が熟したようなものがなくて。さらにトルコ系移民である僕がネオナチを描くことも困難が伴うものだった。加えて、そういった題材を説教臭くない作品にするのもこれまた難しい。それで思ったんだ。“まだ自分にはいろいろと考える時間が必要だ”と。だから、今回はようやくそのときを迎えたということだね」

その物語は、トルコ系移民であるヌーリと結婚したカティヤが主人公。ただ、当初は男性を主人公に考えていたそうだ。「実は、当初は今回弁護士のダニーロを演じているデニス・モシットを主人公にした作品を想定していたんだ。だけど、男性を主人公にすると話がどこにころがっていっても行き止まりになってしまうというのかな。なんか物語が前に前に進んでいくような推進力が生まれない。それで性別を変えたら、これが自分でも驚くぐらいはまってね。すべてがクリアになって生き生きとしたストーリーになったんだ」

この監督の判断は絶妙としかいいようがない。作品は、最愛の夫と息子の命をネオナチに奪われたヒロインが最後に下す決断が描かれる。おそらく男性を主人公にしたら本作は、憎しみしかない復讐劇に終わった。ただ、ヒロインにしたことで単なる復讐劇では割り切れない、遺された人間の心の中に深く分け入るドラマになった。「その通りなんだ。たぶん男性が主人公だと、ブルース・ウィリスの映画みたいになっちゃうんだよね(苦笑)。でも、女性を主人公にしたら、ギリシャ神話やシェイクスピアの世界にも通じる、簡単に善悪で分けられないものすごく人間の深いところを見つめた物語になったんだ」

ただ、そういったいわば古典的なストーリーをどこか感じさせながらも、自分たちの身に寄せて考えさせられる、他人ごとではない物語にも感じられる。「それは僕の創作のスタイルの変化に起因するかも。昔はそれこそハリウッドで活躍したいと思っていた。でも、家族ができた今は彼らを置いていくことは考えられない。そうなると映画作家というのは、おのずと自分の生活から映画の題材を見つけないといけなくなるんだ。だから、今回だと自分の妻のことを考えてシナリオを書いているところがある。そこが身近に感じてもらえる要因になっているんじゃないかな」

主演はすでに大きな話題になっているように、ハリウッドでも活躍するダイアン・クルーガー。彼女と最初に出会ったときの印象をこう振り返る。「会う前の彼女のイメージは、おそらく映画ファンと変わらないんじゃないかな。当時の僕の情報としては『ナショナル・トレジャー』や『イングロリアス・バスターズ』に出演していたルックスのいい女優といった程度だった。いま僕が誰かと一緒に仕事をする上で重要視しているのは、きちんとした会話ができるかどうか。たとえば相手がどんなに憧れの映画人でも、一緒に食事をして会話が成り立たないようだったら、僕はその人物と一緒の時間を過ごすことはできない。正直なところ、ダイアンのことは会話ができる相手とは思っていなかった。もちろん彼女のことをまったく知らない時点のことだけど。でも、実際は違った。カンヌのパーティーで初めて会ったんだけど、彼女はなにか久々に会う同級生のように気さくに話しかけてきてね。その一瞬でゴージャスな元モデル女優というイメージはなくなった。ひとりの人間としてすごく魅力的だった」

その際、ダイアンから“いつか一緒に”と声をかけられ、今回の作品へとつながるのだが、脚本を渡した時点でも、彼女と組むか心は揺らいでいた。「脚本を渡したら、“一度食事をしましょう”となって。当日を迎えたんだけど、その道すがらずっとこう自分に言い聞かせていたんだ。“これだけでは絶対に彼女に決めちゃダメだ”と。でも、実際にあって脚本について話したら、あまりにディープで中身のある濃い対話になってね。お互いの意見を伝えあい、すばらしい意思の疎通がはかれた。だから、家路に向かうころには、こう心の中で呟いていたよ。“絶対彼女だ。彼女しか考えられない”とね(苦笑)」

そのダイアン・クルーガーの演技は大絶賛され、カンヌ映画祭で主演女優賞を受賞。その受賞をはじめゴールデングローブ賞外国語映画賞受賞など、作品は過去作と同様に大きな世界的評価を得ている。キャリアも20年を越え、いまや世界に知られる存在となったが、映画への情熱は今も昔も変わらないと明かす。「映画は僕にとって宗教というか。信じるべきもの。映画作りはいつも新鮮な気持ちで取り組めるし、ほんとうにあきることがない。映画が作れると思うと、前日どんな嫌なことがあっても不思議とパワーが出てくる。今日だって、異国の日本のホテルで目覚めたけど、自分の映画について語れると思うと、元気が出てくるんだ。映画と出会ってなかったら、僕の人生はほんとうにつまらないものになっていただろうね」

『女は二度決断する』
4月14日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー

取材・文:水上賢治

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