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学生映画のイメージを変える『傀儡』公開! 松本監督、出演者の木口健太、石崎なつみに訊く

(2018/06/15更新)
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第38回ぴあフィルムフェスティバルなど、数々の国内映画祭のコンペで入選を果たした『傀儡』は、撮影時21歳だった松本千晶監督が大学の卒業制作で発表した1作。ただ、その作品クオリティは、学生映画の範疇を超えている。監督の演出も、役者の演技、独特の映像美も劇場公開するに十分。学生映画では珍しいミステリー映画でもある。手掛けた松本監督、主人公の藤真を演じた木口健太、キーパーソンとなる柊子役の石崎なつみに撮影を振り返ってもらった。


木口健太、松本千晶監督、石崎なつみ

まず、この作品を語る上ではストーリーに触れねばならない。ミステリーたらしめるよく練られた物語だが、監督自身は当初まったく違ったことを考えていたと明かす。「1番に考えたのは話が進むにつれて時系列がどんどん交錯し、錯綜していくような物語ができないかと。情報が溢れる現代は虚実の判断が難しい時代。それを反映するというか。どこまでが現実で、どこが幻想なのか? 犯人が誰かより、どれが事実で現実、幻想で非現実なのかに意識を注いだ。するとミステリーの形になっていたんです(苦笑)」

この脚本を受け取った役者陣の木口と石崎は、こんな印象を抱いたという。

「学生の撮ろうとしている作品ということで、おそらく自身の体験や限られた世界を描いた内容かなと勝手にイメージしていたら、『傀儡』はまったく違う。まず、おそらく監督の経験値にないことが果敢に書き込んである。たとえば食卓のシーンなど繰り返し登場する場面があって、物語の構築もベーシックなものとは一線を引く。「これはなんだ」と純粋にドキッとしました。改稿を重ねていく過程に途中から関わるようになると、さらにこの物語自体の混沌とした世界に迷い込んだようで。わけがわからないんだけど(笑)その世界に魅了されていました」(木口)

「実は監督と同じ歳なんですけど、今まで自分が「こういうこと」と確信していたことがすべて覆されるというか。この事象にはこうした側面や見方ができるといった疑問符がつく視点がいくつも提示されている。同じ年齢なのに、こんな多面から世界を捉えられている監督の感性にびっくりしました。自分がこれまでこの世界や社会にあまり疑問を抱かず、素直に生きてきすぎたことに気づかされたというか(笑)。私にとってはいろいろと考えるべきことがあることが新鮮で。あとは、パズルみたいな物語だなと。4回登場する食卓のシーンごとに一度リセットされて、一生懸命に自分の中で物語を組み立てるんだけど、それでも、これは現実、それとも幻想?と判断ができなくなる。その頭の中でぐるぐる回る感じがすごく面白いと思いました」(石崎)

いみじくもふたりが触れた繰り返される食卓のシーンが、本作におけるミステリーの核になっているとでも言おうか。ミステリーの度合いを深めている。

「反復によって生じるちょっとした混沌と混乱とでもいいますか。主要人物である藤真と志田、母子の波絵と柊子がひとつの食卓を囲み、まったく同じやりとりが繰り返される。毎回誰かが欠けるのだけれど、まったく同じ光景にも見えれば、違うようにも見える。常に同じ会話が繰り返されるのだけれど、全員の話が噛み合っているようにも見えれば、噛み合っていないようにも見える。まったく同じことが繰り返されるのだけれど、繰り返すことで前とはまったく意味合いが違ってくることもある。何か人間の記憶の曖昧さや存在の不確かさを表しているのが食卓のシーンで。このシーンこそが本作の出発点でした」(松本)

タイトルの“傀儡”が意味するのは操り人形。何かに操られるように12年前に事故死で片づけられた恋人の死因を再度調べることになった雑誌記者の藤真が、遺族の母である波絵と妹の柊子と事件の容疑者であった志田が現在一緒に暮らしていることを目にしたことで、予想外の事態に見舞われていく。そして受け手である我々もまた藤間の混乱を味わうことになる。「傍から見ると被害者家族と加害容疑のかかった人間が一緒の空間にいる異常事態。そのことを客観的に見れる、いわばお客さんの目線に立てる人間が必要で。それが藤真でした」(松本)

はじめは平静を装う藤真だが、志田と浪絵と柊子の現在の関係を目の当たりにすることで、心の中は揺れ動く。戸惑い、憎しみ、哀しみ、諦め、さまざまな感情に揺られた彼は得たいの知れない何かに呑み込まれていく。そのひとりの人間の心が常軌を逸していく過程を木口が見事に体現している。「普段は作品作りと役作りと切り離して考えるんですけど、今回の場合は別で。途中から監督と一緒に作品について考えるようになっていたから、どこからか藤真と同じで何が現実で何が幻想なのか分からなくなっていた。藤真と自分自身が切り離せないぐらい、藤真として生きていましたね。また、映画『64ーロクヨンー』で記者の役をやったのですが、すべてを出し尽くす役ではなかった。どこか消化不良で終わったところで、また記者の役がきて運命を感じたというか。しかも、役にのめり込むことで自分の実人生を見失うような、映画のためだけにすべてを捧げ、他はどうでもいいと思えるような役に出会えないかなと思っている時期で。この藤真役ならばそれができるのではないかと。役に今まで培ってきた経験をいったんここですべて出してコミットしないとこなせない深さがある。ある意味、自分が望んでいた役でした」

ただ、監督の指示にはなかなか難儀だったようだ。「たとえば泣くシーンも、目いっぱい泣くのが10:0だとしたら、8:2の割合で泣いてくださいとか言われて。そのときは素直に受け入れて対応してましたけど、振り返るとそんな指示聞いたことないなと(笑)。あらゆる意味で自分が試され、全力を出しきらなければいけない役でしたね」

その藤真をはじめ、登場するのは心に闇を抱えた人物ばかり。どの人物も心のどこかが荒んでいる。その中で、汚れのない存在としてたたずむのが柊子。どこか閉塞感ある息苦しいだけの物語になりそうなところを、風通しをよい印象にしているのは石崎が演じきった純真な柊子の存在といっていい。「脚本を読んだとき、思いました。“みんな病んでいる”と(笑)。その中で、柊子だけ悪く言えば世間知らずなのかもしれないけど、周囲のことに影響されていない。何か突き抜けた純粋さのようなものが柊子には必要と思って、そこを大切に演じました。私にとってひとつの役を映画の最初から最後までやり遂げるというのは初めてのこと。大きな経験になりました」

注目してほしいのが先ほども触れた食卓のシーンでの彼女の演技。4度、同じセリフ、同じ動作を繰り返すがどのシーンも判で押したように乱れない。同じことをやっても、役者の演技の質、その場の空気でシーンというのは大きく変化する。実は同じことを完璧に再現することほど難しい。「私自身は役として生きていればいいと思っていただけ。あまり同じようにという意識はなかったですね。そう意識しなかったのがかえってよかったのかも(笑)」

こうした役者の確かな演技力と秀逸な脚本によって構築されたドラマは、どこから現実でどこからが幻想なのか? 何が真実で何が嘘なのか? 最後まで受け手を混乱させ、予断を許さない。エンターテインメント性のあるミステリーとして成立している一方で、その映像美やテーマ性、映像のリズムやトーンはアート映画の領域に入るといっていい。監督自身は作品をこう称する。「後付けになってしまいますが、エンタメ的脚本+アート的な演出/2、みたいな形で生まれたのがこの作品かなと。脚本を読んでくれた人は“韓国のアクション映画”のような受け止め方をされることが多かった。そういわれると確かに転落するシーンがあったり、家に侵入するシーンがあったり、ようはアクションシーンが多い。でも僕自身は、イタリアのミケランジェロ・アントニオーニ監督が好きで。抑えた演出で、この人物のこの行動にはこういうメタファーがあって、ここにこの小道具を置くとこんな意味合いをもたせることができる、そういうさまざまな考察ができる作品を模索していた。ようはわりと起伏のある物語を、抑えた演出の静かなトーンで描いたことで、こうなったのかなと」

公開が決まって「どんな感想をいただけるのか楽しみ」と語る3人。大学の卒業制作とは思えない完成度を誇った作品をぜひ目撃してほしい。

取材・文・撮影:水上賢治

『傀儡』
6月16日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開

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