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新作『ヴァレリアン』が公開。リュック・ベッソンが映画監督を続ける理由

(2018/03/27更新)
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『グラン・ブルー』や『レオン』など、世界的ヒット作を生み出し続けるリュック・ベッソン監督。ジャンルを問わない作品群で知られる彼だが、新作『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』では少年時代に愛読し、長年映画化を夢見ていた念願の原作に取り組んだ。


リュック・ベッソン監督

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新作『ヴァレリアン』が公開。リュック・ベッソンが映画監督を続ける理由
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そのベッソン監督が少年時代から愛してやまなった原作は、フランス語圏の漫画を指す“バンド・デシネ”で『スター・ウォーズ』にも多大な影響を与えたという傑作コミック『ヴァレリアン』。そのファンであることを物語るように監督は、1997年に発表した『フィフス・エレメント』のデザインを『ヴァレリアン』の原作者で作画を担当するジャン=クロード・メジエールに依頼している。「当時も、ジャンに言われたんだ。“なんで『ヴァレリアン』を映画化しないんだ”ってね(笑)。ただ、当時の映像技術では、『ヴァレリアン』のコミックの世界をパーフェクトに再現するのは無理だったんだ。でも、その後、ジェームズ・キャメロン監督の『アバター』の現場を訪れた際、その映像の技術革新を目の当たりにして、“これはいける”と。そのとき、いつか『ヴァレリアン』を映画化しようと心に決めたんだ」

時は、宇宙に進出した人類がさまざまな宇宙人と遭遇し、あらゆる種族が共存する“千の惑星の都市”と称されるアルファ宇宙ステーションが築かれた西暦2740年。銀河をパトロールする連邦捜査官のヴァレリアンとローレリーヌのコンビが全宇宙の存亡を揺るがす陰謀に立ち向かう。そのストーリーは原作のシリーズ2巻と第6巻を中心に置いてある。「全29巻ある中から、ここをピックアップしたのはあくまでフィーリング。ただ、いま自分が1番込めたいメッセージを盛り込めると思ったのは確かで、選んだ理由としてはそれが大きかったかな」

その言葉通り、スペクタクル・シーンあり、バトル・アクションありといった基本はヴァレリアンの活躍を描くSF超大作エンターテイメント作の体裁をとりながら、一方で自国の利益優先主義、排外主義、それらとは反対にある共生、共存、さらには環境破壊といった社会的テーマが浮かび上がる重厚な内容。現在の世界情勢にフィットしたドラマに仕上がっている。「いま挙げられたことがまさに今回のストーリーに込めたかったこと。それはまた、DCコミックやマーベルコミックを基にしたハリウッド大作と『ヴァレリアン』の原作と今回の僕の映画との大きな違いでもある。アメコミを基にしたハリウッド大作の多くは宇宙人=異端者、侵略者という図式。自分の種以外は悪者とするケースがひじょう多い。そして、アメリカがその恐るべき侵略者から地球を守るといった話になりがちだ。僕はいつも思うんだ。“外部からやってくる者がなんで自分にとって脅威になり、危険を及ぼすと決めつけるんだろう”ってね。でも、原作の『ヴァレリアン』及び、今回の映画はそれとは真逆の物語といっていい。冒頭でエイリアンと人類が握手するシーンにある意味、集約されているんだけど、ここにはほかと違うことを認め合う、共に生きるといったメッセージが込められている。人と人は互いの文化の違いを認め、分かち合える。そう僕は思う。また、これこそいまもっとも我々大人が子どもに伝えるべきことなんじゃないかな」

今回、主人公のヴァレリアンに起用したのは『アメイジング・スパイダーマン2』などで知られる若手俳優のデイン・デハーン。そのちょっとドジだけど決めるときは決めるヒーローぶりも注目だが、その相棒となるヒロイン、ローレリーヌ役のカーラ・デルヴィーニュも要注目。強さと優しさを兼ね備えた実に魅力的なヒロイン像を体現している。そういえば『レオン』のナタリー・ポートマンしかり、『グラン・ブルー』のロザンナ・アークエットしかり、ベッソン作品は男が主人公でもヒロインがそれに匹敵した印象を残す映画が実は多い。「そのことは自覚しているよ(笑)。えてして、男性は自分の力を周りに誇示したがる。だから、対話や言葉よりも腕力で何事も解決しようとしがちだ。でも、女性は力よりも理性が勝る。そろそろ時期がきているのではないかな。女性がリーダーシップをとる時代が。僕の作品でヒロインが魅力的に映るのは、そうした僕の考えが現れているといっていいよ」

一時は引退という言葉も出たが、それを乗り越え監督としてのキャリアは35年を数える。今、映画作りをこう考えている。「映画作りとダイエットで、僕は同じ問題を抱えている。毎朝、思うんだ。“今日は食べ過ぎないように”と。でも、気づくとついつい食べすぎちゃうんだよね(笑)。映画作りもいっしょ。いつも“もうこれが最後の作品”と思うんだけど、すぐにまた作りたくなる。僕は誰かに強いられて映画を作っているわけではない。幸運なことに僕には自由があって、作りたいから作っている。僕は映画を作っていないと狂ってしまうような映画中毒ではない。だから、ある意味、辞めようと思ったらすぐやめられる。自分が描きたいことがなくなったら、たぶんやめるだろう。でも、いまのところやめる予定はないよ」

そのここまでの道のりをこう振り返る。「ほんとうに人生ってわからない。デビュー作『最後の戦い』を作る前にこう神様にお願いしたんだ。“この1本だけ作らせてください。あとお願い事はしないので”と。そういったのだけれど2作目になると、“2本目もどうにかお願いできないですか”となって(笑)。3本目のときは“これで最後のお願いにするのでなにとぞお願いします”となってね。そんなことを積み重ねていたら、いつの間にか35年経って、作品も20本に近づくことになってしまった。そしてまだ僕は監督としてここに存在している。もうこれは奇跡。自分自身すごく驚いている。特に若いころは、いつ映画が作れなくなるか常に不安だったから。同時期にデビューした同世代の監督でも、いつの間にか消えてしまった人がいっぱいいる。なぜぼくがいまだに残っているのかわからないし、信じられない」

その上で、自らの映画哲学をこう語る。「スポーツでいいのは、試合に勝利しても次の試合で勝てるかはわからないこと。たとえばカーレースでその試合を勝利しても、次のレースでは第1コーナーでコースアウトしているかもしれない。そこがいい。僕にとって映画は同じような感覚がある。作品を発表してそれがみんなに愛される。でも、次の作品がみんなに愛されるかはわからない。それでいい。あくまで己の力を信じて、己の道を進むだけ。他人になにをいわれようと関係ない。要は自分が作りたい、自分がいま世界に伝えたい作品を作ることが大事なんだ。さっきの話につながるけど、作りたいことがなくなったらそれは終わりのとき。いまから約10年前に『アンジェラ』を発表したとき、周りからこんなことをいわれたんだ。“なんで『フィフス・エレメント』のようなハリウッド大作、アクション満載の映画を作らないで、こんなモノクロームの地味な映画を作るんだ。こんなの観客も期待できないし、失敗作だろう。なにをやっているんだ”とね。でも、誰に何を言われようと僕はそのとき、『アンジェラ』を作りたかった。それでいいんだ」

『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』
3月30日(金) 全国ロードショー

取材・文:水上賢治

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