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“共感”より“驚嘆”を! 鬼才ヴァーホーヴェンが新作映画を語る

(2017/08/22更新)
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『氷の微笑』『ブラックブック』の鬼才ポール・ヴァーホーヴェン監督の新作映画『エル ELLE』が25日(金)から公開になる。これまでも論争を巻き起こし、観客を怒らせ、問題作と呼ばれる作品を次々に発表してきたヴァーホーヴェン監督だが、本作も謎に満ちた展開で観客を激しい渦の中に巻き込む衝撃作になった。しかし、監督自身は「私は観客を怒らせようとしたことはないんです。ただ、観客は自分の価値観にそぐわないものを観ると、とても! とても! とても! 怒るんですよ」と笑みを浮かべながら語る。


ポール・ヴァーホーヴェン監督

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“共感”より“驚嘆”を! 鬼才ヴァーホーヴェンが新作映画を語る
“共感”より“驚嘆”を! 鬼才ヴァーホーヴェンが新作映画を語る

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本作は、イザベル・ユペール演じる主人公のミシェルが、覆面をした男性からレイプされる衝撃的な展開から始まる。しかし、彼女はそのことにショックを受けている様子がなく、平然と立ち上がり、犯人探しを開始する。

衝撃的な展開を次々に積み上げ、観客を挑発するスタイルはこれまで通りだが、ヴァーホーヴェン監督は近年、「観客が考えたり、解釈できる余地を残す」スタイルに移行しつつあるという。「すべてを明確にしていくのではなく、様々な解釈が生まれる余地を残す。そんな表現を私はこれまでやってきませんでしたが、前作(2012年製作の『ポール・ヴァーホーヴェン/トリック』)から、オープンな形で観客が考える余地を残す映画作りになりつつあります。この映画で、それが最もよくあらわれているのが、ミシェルの過去でしょう。劇中で彼女の過去が明かされますが、そのことと、ミシェルが物語の中でとる行動の関連は描かれません。私はふたつの物事を描くことはしますが、リンクさせることを拒んだわけです」

警察に頼ることを拒否して自分で犯人探しを続けるミシェルは、やがて犯人よりも恐ろしい本性を見せるようになり、先に監督が語った彼女の過去など様々な要素が混ざりあっていき、観客は冒頭の事件よりも恐ろしい状況に直面することになる。観る者を戸惑わせ、怯えさせ、時に怒らせるヒロインは、過去のヴァーホーヴェン作品にも数多く登場したが、本作はフィリップ・ジャンの小説(翻訳はハヤカワ文庫刊)を映画化したものだ。「そうなんです! この映画には原作があるから、ミシェルは私から生まれたキャラクターじゃないんです! ミシェルは極端なまでに過激な存在ですが、私は彼女にシンパシーを感じました」

これから映画を観る人のために多くは明かせないが、監督はミシェルを描く上で、彼女が「いつも自分で状況を作り出していく」ことを重視したという。「多くの映画では、主人公が何らかの状況に対してリアクションしますが、ミシェルはいつも自分で状況を作り出していく。つまり、彼女は何があっても“被害者”にはなりたくないわけです。だから、他人からの思いやりは一切、受け付けない。状況によって自分が作られ、反応を強いられることが大嫌いなんです」

他人の思いやりや、多くの人が自明なものとしている倫理観や価値観を退けるミシェルの姿に、怒りをおぼえる観客もいるかもしれない。「私は観客を怒らせようとしたことはないんです。もちろん、撮影しているときに“これを描いたら、怒る人がいるかもしれないな”と思うことはあります。もちろん、私は描きますけどね。ただ、観客は自分の価値観にそぐわないものを観ると、とても! とても! とても! 怒るんですよ。人間はそれぞれに“知的領域”があり、論理的だったり、哲学的だったりするのでしょうけど、自分が真実だと思う世界があります。そこを侵略するものを、人は危険だとみなします。自分の経験や深い部分にあるエゴに根ざした見方を侵略する存在が出てきて、『君の思っている世界がすべてではないんだよ』と言われると、人は怒るのでしょう。私の映画のいくつかは、そういう効果があるようです」

それでも、ヴァーホーヴェン監督は、観客に向かって“君の思っている世界がすべてではない”と語り続ける。「ミシェルはフィクションのキャラクターだし、彼女を構成する要素は実際の人間に見られるものですが、ミシェルは現実を超えた位置に存在している。こんな人物は現実にはいない。しかし、映画の中にいると彼女は信憑性があるわけで、それこそが芸術がもつ機能だと思います。この映画ではメロドラマを忌避し、言い訳を忌避し、キャラクターへの共感を忌避しています。アメリカ映画ではこんな主人公は絶対に登場しませんよ! 共感できて、キャラクターの気持ちがわかるキャラクターではないからです。しかし、キャラクターに共感することは、ある人物の見方に寄り添ってしまうから、観客の視点を毒して、全体像を見えなくさせてしまうとも言えるわけです。ミシェルという人物に出会うことで、私たちは“驚嘆”します。決して“共感”はしないと思う。でも、確実に彼女の存在を信じることができる。それこそが、この映画の最大のポイントかもしれません」

『エル ELLE』
8月25日(金) TOHO シネマズ シャンテほか全国ロードショー

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