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“人を理解する”とはどういうことか。是枝裕和監督が語る新作『三度目の殺人』

(2017/09/08更新)
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是枝裕和監督が福山雅治、役所広司、広瀬すずをキャストに迎えた新作映画『三度目の殺人』が9日(土)から公開になる。本作は、勝つことにこだわる弁護士が、2度目の殺人をおかした男の弁護を通じて、真実を追求する姿を描いた心理サスペンスだが、是枝監督は本作の制作中「“人は人を理解できるのか? ということをずっと考えていた」と語る。


撮影中の是枝裕和監督

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“人を理解する”とはどういうことか。是枝裕和監督が語る新作『三度目の殺人』
“人を理解する”とはどういうことか。是枝裕和監督が語る新作『三度目の殺人』

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是枝監督は、ここ数年、『そして父になる』『海街diary』『海よりもまだ深く』と家族を描いた作品を立て続けに発表してきたが、本作の創作はそれ以前から始まっていたという。「ノートをつけはじめたのは2009年で、最初は人を殺して刑務所に入っていた男が出所して、社会に居場所がなくてもう一度、人を殺す。1度目は“憎しみ”から、2度目は“愛”から殺す、という簡単なプロットを考えて、累犯(繰り返し犯罪を行うこと)の話を書こうと思ったんですけど、うまく着地しなくて、そのまま置いといたんです」

その後、是枝監督は『奇跡』、福山を主演に迎えた『そして父になる』を発表。2015年に『海街diary』を完成させ、キャンペーンを行っている時期に次の転機が訪れた。「『そして父になる』の法律監修をしてくれた弁護士さんたちと食事をした時に『よくテレビなんかで裁判の判決が出て控訴することが決まって、アナウンサーが“真実を追究する場所が地裁から高裁に移りました”って言うけど、あれ、違和感あるよね。別に法廷は真実を追究する場所じゃないもんね』って言われて、じゃ法廷は何をする場所なんですか? って聞いたら、『利害の調整ですよね。真実はわかりませんから』って。それは非常に冷静で現実的な判断だし、僕はむしろ誠実だなって思ったんです。でも、一般的には法廷は真実を追究してくれる場所だって、僕も裁判の当事者も思ってる。でも、人間がすることだから決して完全なものではなくて、その不完全さに目をつむっておかないと司法というシステムは維持できない。その怖さはあるなと思って、“裁判は利害の調整でしかないと思っていた弁護士が、今回だけは真実を知りたいと思う話”というのを思いついて、さっきの累犯の話とドッキングしたんです」

そこで是枝監督は、複数の弁護士とやり取りを繰り返しながら約1年をかけて脚本づくりを行った。福山演じる重盛は、裁判に勝つことにこだわる弁護士で、2度目の殺人をおかした男・三隅の弁護を担当することになった際も“いかに効率的に証拠を積み上げ、裁判を有利に進めるか?”だけを考えていた。しかし、接見のたびに三隅の供述は変わり、動機もわからないまま、時間だけが過ぎていく。やがて、重盛は初めて、この事件の“真実”を知りたいと思い始めるが、法廷の場で待っていたのは、重盛の予想もしない結末だった。

撮影前、是枝監督は自身の演出と、三隅役の役所広司の演技によって福山が追いつめられる展開を目論んでいた。「ところが、役所さんを目の前にすると、僕自身も福山さんと同じように右往左往しちゃったんです。もちろん、最初から“人は人を裁くことができるのか?”という問いに着地する映画にはしたいと思っていたんですけど、言うのは簡単で、実際にその問いが残るためには三隅という人間が、重盛や観客にどれぐらい理解されるべきなのかとか、果たして脚本に書かれた判決でいいのかとか……この映画はひとつピースが入れ替わるだけで着地点が変わってしまうんですけど、入れ替えて、また戻しての繰り返しをクランクアップまで続けちゃったんです」

主人公の重盛は、三隅について知ろうとすればするほど、真実が遠のいていく、いや、近づいているのか遠のいているのかさえわからない状態に苦しむが、是枝監督も「映画の最後の最後まで悩んだので、今回は本当に苦しかった」と振り返る。「最終的に“司法制度ってヒドイね”じゃなくて“人は人を裁くことができるのか?”という点に着地させているつもりなんですけど、ここにたどり着くのが本当に難しかったんです。だから撮影が終わってもまだわからなくて、編集しながらも何度も動いていって、撮影した最終弁論のシーンもその後のやり取りもカットして、やっと現在の形が見えてきた。だから、終わり方も脚本と変わりましたし、現在の形にたどり着くまでに最後まで悩んだんですよ。撮影しているときは、役所さんの存在をドキュメンタリーのディレクターのスタンスで撮ってるんです。自分で脚本を書いてますけど、三隅は半分ぐらいは“わからない存在”として現場に立ち上がってきていますから、自分も撮影しながら緊張していて“三隅の笑いの奥にはどういう感情が含まれているんだろうか?”って福山さんと一緒に探って、考えていく作業が続いて……だから、自分で脚本を書いたとは思えないんですよね。そこが面白いところでしたし、なかなかできない経験をすることができましたね」

法廷では“動かぬ”証拠が積み上げられ、双方の主張や解釈が整理され、真実はともかく何らかの判決が導きだされる。しかし、本作は法廷サスペンスでありながら、ひとつの解釈を許さないドラマ、セリフ、表情、状況を繊細に描きこんでいくことで、映画を観終わった後も心の奥底に“問い”が残る作品になった。「“人は人を理解できるのか? ということをずっと考えてましたね。人が人を裁くことの先というか、その奥にあるのは、人を理解するとはどういうことだろう?ってことです。主人公の弁護士は、自分の依頼人を理解するわけですけど、最初は自分の都合のいいように理解して、自分の都合のいいストーリーに落とし込んでいく。でも、僕らが日ごろやっているコミュニケーションや理解も、おそらくそれとそんなに遠くないことに気づくことは大事だと思うんです」

重盛は物語が進むにつれて、勝つためのレールに証拠を乗せていくことをやめ、三隅がどんな人間なのか知りたくなっていく。それは明快な答えのない世界、“証拠”の通じない世界に足を踏み入れることだ。その時、観客はこの事件と三隅にどう向き合うだろうか? 「人は人を理解できるのか? という芯を外さずに、ふたりの男の対決を描く法廷心理劇、エンターテインメントとして描いて、最終的に本質にたどり着けるか? という作品をやろうとしたのは間違いないです」

『三度目の殺人』
9月9日(土)全国ロードショー

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