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新作『The NET』が公開。鬼才キム・ギドクは“あなた”に問いかける

(2017/01/05更新)
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『サマリア』『嘆きのピエタ』など衝撃作・問題作を発表し続けているキム・ギドク監督の最新作『The NET 網に囚われた男』が今週末から公開になる。彼の作品は、公開されるたびに絶賛の声があがるだけでなく、そこで描かれる内容について様々な議論が巻き起こるが、監督自身も「明快な結末を描くのではなく、映画を通じて観客に問いかけたい」という。では、監督が『The NET…』で観客に出した“問い”とは?


キム・ギドク監督

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本作の主人公は、北朝鮮で家族と暮らす漁師。暮らしは貧しいが愛する妻と娘のために今日も朝早くから漁に出かける。しかし、漁に使う網が船のエンジンに絡まってしまったことから制御不能になり、主人公は“境界線”を超えて韓国へ。執拗な取調べ受け、拷問され、さらには転向をすすめられるが、漁師は家族の待つ家に帰りたいと主張し続ける。

キム・ギドク監督は、これまでも様々なドラマとイメージを駆使して、社会に潜む欺瞞や問題を暴き、人間の内面に潜む欲望や醜い部分を容赦なく描いてきた。「近年の商業映画は、英雄を語るために加害者を登場させる傾向にあります。韓国では権力や財閥に対する憤りを描いて、最後にそれらを倒す完全懲悪の物語が増えました。もちろん、それらは映画の中だけの話で、そこで憤りが解消されたとしても、現実は何も変わりませんが、観客は映画を観ている間だけはスッキリしたり癒されたりしたいのかもしれません」

しかし、キム・ギドク監督はそんな流れに逆らい、観客に“現実に通じる問い”を投げかける。「この映画の登場人物は、それぞれに言い分があって、どちらか一方を断罪したり、切り捨てたりはできません。確かに主人公は偶然に北から南へ流されてしまいますが、だからと言って韓国の取調べ官が悪だとか、北朝鮮の人間が悪だとは言い切れません。この映画に出てくる人々は、韓国の過去の歴史、そしてふたつの国が非難しあう現在進行形の現実が生み出したものですから、バランスをとって描くのは簡単なことではありませんでした。善が悪をこらしめる映画は増えていますが、それでは現実の問題は何も解決しません。ですから、それぞれの主張を描くことで観客に問いかけ、結末を“開いた”状態にすることが重要でした」

たとえば、この映画では、登場人物たちが口にする“自由”という言葉ですら、それぞれに意味が違い、齟齬をきたしている。「この映画の中で韓国の人たちは『北朝鮮の人たちは貧しくて不幸だから、転向させて自由にさせなければ』と言いますが、主人公にとっての自由は、北朝鮮に戻って家族と暮らすことです。“自由というものを、どのように受け止めるのか?”は、この映画にとって重要なポイントでした。私自身もその答えを持っているというより、映画を通じて観客に問いかけたかった。自由には様々な矛盾やアイロニーを含んでいますから、観客それぞれに考えてほしいと思います」

では、ここで監督への問い。なぜ、キム・ギドク監督は複雑で、矛盾に満ちていて、すんなりと答えの出ないドラマを描こうとするのだろうか? 「何の問題もなく、誰しもが幸福に暮らすことができる社会は実現不可能だと考えているからです。もちろん、そんな社会が訪れることを、真っ向から否定する気はありません。しかし、そもそも人間は“不完全”で、そんな人間が創造する社会もまた、何らかの不完全性や葛藤、不安を抱えていると思います。それは、ある意味ではとても“人間的なもの”だとも言えます。仮にまったく何の問題もない社会が存在するとすれば、そこには葛藤はないかもしれませんが、同時にそれは息をしていないような、何かから剥離されたような社会ではないでしょうか? ですから、不完全かもしれませんが、人間が生きているから、人間が息をしているからこそ、問題をもった社会が生まれ、私はそれを映画で描くのだと思います。ですから、この映画を観て“この結末で良いのか?”と思う人がいても、私は良いと思います。監督だけが映画をつくるのではなく、観客が自分の判断で映画を完成させられる状況は、私にとって歓迎すべきことなのです」

『The NET 網に囚われた男』
1月7日(土)よりシネマカリテほかにて全国順次ロードショー

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