PFFアワード2011 見どころ徹底解説!特集 (2)
PFFアワード2011 見どころ徹底解説!特集
2011年9月20日(火)〜30日(金)【会場】東京国立近代美術館フィルムセンター
これまで、日本映画界に多数の映画監督を輩出・紹介してきた「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」のコンペティション部門「PFFアワード」。今年は、602本の応募作から厳選された入選17作品が期間中の上映と最終審査に挑む。ぴあ映画生活では、入選17作品を事前に観たプロから「賛美派=イチオシとして応援!」と「辛口派=ひと言(激励を含め)申したい!」それぞれのレビューを掲載します。ぜひ、気になった作品は会場で確かめてみてください!
PFFアワードとは?(PFF公式サイトへ)PFFアワード2011 ノミネート作品
「
(TAITO)」審査員特別賞受賞作品
【上映時間】 9月25日(日)18:00 / 9月28日(水)14:30
前売りチケットを購入する作品あらすじ
会社を無断欠勤した女性社員、二ノ宮が後日、遺体となって自宅で発見される。事件性はなく、死因は自殺。命を絶つ前、彼女はヒト癖ある上司の榊原から酷いパワハラを受けていた。このことを知る社員らは榊原に厳しい目を注ぐ。一方、二ノ宮のたった一人の肉親である兄、圭一はしだいに怒りを増幅させる。それらの負い目を感じながらも平常心を装う榊原だが、その重圧は次第に耐えがたいものへとなっていくのだった……。彼女を死に追い詰めたのは個人なのか、それとも社会なのか? 大きな問いを投げかける問題作。
PFF公式サイトの作品解説へ…賛美派レビュー
大竹久美子/映画宣伝
世界は醜い小市民であふれている。自らは安全なエリアに避難しながら、狡猾で、邪悪な意図で、目の前の相手を揺さぶり、ひそかに排除するような奴らだ。カメラはそんな小市民を容赦なくアップでとらえる。それは日常でよく見る表情ばかりだ。そういった小市民が生きるふかふかした会社という場所に、上司のパワハラによる女子社員の自殺という、恰好のネタを放り投げてくる。
あるいは自殺の原因を作ったその上司を匿名性で追い詰める部下の一人。「正義」という名でもって「悪」を追い詰めることの狭量さは、やがて「正義」と「悪」を転換させるに至るまで増幅する。でもいったい「悪」と「正義」の定義って何だったんだ? 女性社員がなぜ、そこまで追い込まれたのか、あるいは彼らが属する会社がいったい何をしている会社なのか描き出されていないところは、全体の骨組みの弱さを露呈してしまうものの、それでも私たちを「悪」と「正義」の二律背反性に一気に呑みこみ、その境界性のアワイに漂わせる。
3.11以降、私たちは連日善良なふりをした悪の表情を見続けてき、そこにある両義性までも吐き気がするほど十分感じ取ったではないか。それでもふかふかした場所から密かに非難したり、貶めたり、当事者の感情の揺れに気づかす善人ぶっているあなたとわたしに痛い。
辛口派レビュー
皆川ちか/映画ライター
女子社員の不審死から物語ははじまる。死体を発見したのは家族でも友人でも恋人でもなく、職場の同僚だ。つまり、彼女は会社以外に他者とのつながりを持っていなかった。おそらく職場にしがみつくように、必死に懸命に働いていたのだろう。しかし彼女は命を絶った。同僚たちは彼女の死を悼まない。噂話のネタとして消化するくらいで、それを咎める者を「偽善者」とすら呼ぶ。殺伐とした職場。それでも彼女にとっては、そこだけが居場所だった。彼女の死体を発見した大浪、彼女を死に追い込むほど叱責した上司の榊原、捻れた方法で榊原を糾弾する村瀬。この三人を中心に物語は進むが、実質的な主人公は榊原だ。職場では部下たちから陰口をたたかれ、家庭では妻の愛情を拒否する。自分の抱え込んだ不充足に今にも頽れそうなのに、自分より弱い立場にある者を攻撃するより他にない。この榊原が「パワハラ上司」という書き割り的なキャラクターではなく、憐れみと同情さえもって描写されているので、私たちは混乱する。それぞれに事情がある。ならば誰に不快感をぶつけたらいいのか。それは現実生活で私たちが常に感じる憤りと同質だ。
監督自身が実体験した出来事から着想を得たこの作品には、人の優しさもおぞましさも同等に描かれている。それだけに、肝心の仕事内容が書き割り程度に扱われているのが残念かつ惜しい。人間描写を縦軸に、社会描写を横軸とすると、縦の長さに比べて横軸が短くて、脆い。
過去作品&受賞歴
緑朗(ろくろう)・28歳
【フィルモグラフィ&受賞/入選歴】 「五弦な愛」(2010・共同監督)/「蘇れ、人間」(2010)/「TAITO」(2011)
「ダムライフ」グランプリ受賞作品
【上映時間】 9月25日(土)18:00 / 9月28日(水)14:30
前売りチケットを購入する作品あらすじ
幼少時、母の制止を聞かずに川で銛を打ち、誤って妹を殺してしまった小谷。以来、彼はどんなことも言われたとおりにしかやらない人間になってしまう。そのため、今働くダム建設現場でも、皆からバカにされ苛めを受ける毎日。ところがあることをきっかけに、彼は言われた通りに行動して他者を殺すことは良い事と思い込んでしまい、これがとんでもない暴走につながっていく。虐げられた弱者の思わぬ反逆と狂気を描く、ブラック・ユーモア作品。
PFF公式サイトの作品解説へ…賛美派レビュー
水上賢治/映画ライター
昨年、「ポスト・ガール」が入選している北川監督だが、本作「ダムライフ」では大きな飛躍を遂げている。前作は、異様すぎるモンスター・キャラや突飛な逸話の創作にほかとは違う才覚を感じたが、一方で理解不能の設定や辻褄の合わない展開など穴や欠点があったのも確か。はっきり言ってしまうと、作品としては物珍しさが大雑把な点を上回ったことでなんとか成立していたところがあった。だが、今回の作品は彼ならではの過剰かつ過激なキャラクターや設定作りはそのままに、ストーリーラインをしっかりと整え、ドラマ性のある物語を構築。粗はあるが破綻のないドラマを作り上げている。また、前作は世間一般にあるモラルや倫理観や道徳心といったものへの挑戦があったものの、これらのデリケートな問題に"いい加減すぎる"といわれてもしかたないような、しかるべき配慮をしていないところがあった。だが今回は、まだ配慮不足はあるものの挑戦から一歩踏み込んで、問いを投げるまでに至っている。
また、前作をみたとき、少なくともコメディの手腕は感じられなかったが、今回は意外な笑いのセンスを発揮しているのにも驚いた。中でも首から血が飛び出るスプラッター・シーンはテンポよし、タイミングよし、演出よしでなかなかのもの。その演出にはコメディの作り手としての才能も感じさせる。
辛口派レビュー
皆川ちか/映画ライター
江古田ちゃんもびっくりするほど独自の倫理観で生き、暴走する女を描いた「ポスト・ガール」(PFFアワード2010)の北川仁が、今年もPFFにやってきた。前作のタイトルに倣って言うならば、今作はダム・ボーイ、いやDamn Boyか。よく言えば勢いがある。悪く言えば辻褄を合わせようとする素振りすらない作風は今作でも健在だ。それはたとえば観客の神経を逆なでするのが目的としか思えない、どうにも共感しようのない登場人物たち。ダム工事という設定ではあるが、いったい何の作業をしているのか台詞でも映像でも説明されない曖昧な仕事描写(仕事が描けないというのは、作り手自身の実生活経験値がそのまま反映されているのではないか)。過剰なまでの下半身露出はセクハラというよりも、クラスの気になる女の子にわざとチンコを見せつける男子小学生(中学生ですらない!)のようでもあり、男たちの精神年齢は猛烈に低い。
主人公にしてからが設定では一応「過度のイエスマン」と解説されているけれど、彼の立ち居振る舞い、喋り方、表情からは「イエスマン」という言葉ではとうてい説明できない歪さがにじみ出ている。そしてその歪さを頼みに物語を構築しているため、波長の合う観客は楽しめるが、そうではない観客は口をぽかんと開けて観るかさもなくば不快感を募らせるだけという、苦痛にも似た鑑賞を強いられることだろう。ちなみに監督の職業が坊主であることを頭に入れて観てみると、おぞましさと失笑と歪みが倍になって味わえます。
過去作品&受賞歴
北川仁(きたがわ・ひとし)・29歳
【フィルモグラフィ&受賞/入選歴】 「コレクト」(2007):福井映画祭入選/「blanc」(2009):福井映画祭 審査員特別賞、ふかや映画祭 優秀賞/「ポスト・ガール」(2010):PFFアワード2010入選/「ダムライフ」(2011):第16回釜山国際映画祭New Currents Award招待作品
【注目のニュース】
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