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町山智浩に聞く、映画に秘められた“暗号”の解き明かし方

(2018/06/20更新)
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映画評論家・町山智浩が、近著『「最前線の映画」を読む』に沿って、『ラ・ラ・ランド』『ワンダーウーマン』といった話題作に隠された“暗号”を解き明かしていく特集番組『町山智浩が暴く「最前線の映画」の暗号』の放送が決定。町山流、映画がもっと楽しくなる観方とは? BS10スターチャンネルでの放送開始を前に話を聞いた。


町山智浩氏

『「最前線の映画」を読む』では、『ラ・ラ・ランド』『ダンケルク』『メッセージ』『LOGAN/ローガン』『ブレードランナー2049』など、ここ2年ほどで日米で公開された話題作を題材に、劇中のセリフや登場人物が読んでいる本、流れる歌などをヒントに映画の中に隠された様々なメッセージをあぶりだしていく。番組ではこれらの作品が放送される前後に町山の解説が加わることになる。

「昔の洋画劇場のような感じで、最初に見どころや注目のポイントを示しつつ、映画の後で“あれは実は……”と解説します。淀川長治さんや水野晴郎さんみたいな感じで(笑)。劇場公開時にそういう解説をすると、ネタバレとなってしまうんですよね。雑誌などの紙媒体でもそうだし、WEBで“この先、ネタバレを含みます”と書いたとしても叩かれちゃう(苦笑)。だから、公開後のこういうタイミングで、この番組だからこそできる解説をしていきます」

今回の著書に限らず、これまでも映画の中で描かれる社会問題や歴史的な背景、文化的な影響などを深く掘り下げて解説してきた町山だが、普段から映画を観るとき、どんなポイントに注意して観ているのだろうか? 例えば『ワンダーウーマン』について、「ディズニーの『リトルマーメイド』と『ローマの休日』というふたつのお姫さま映画が隠されている」と解説するが、重要なのは「違和感」「引っかかり」だという。

「『ワンダーウーマン』でいうと、ヒロインがアイスクリームを食べるシーン。物語上は必要ないんですよ。ということは、何かを伝えたくてわざわざ入れているということ。そう考えると、お姫さまがアイスクリームを生まれて初めて食べて“おいしい”という映画は『ローマの休日』しかない。あの映画でオードリー・ヘップバーンが演じた王女は、恋に生きようとするけど、ローマの戦災被害者が願い事を貼りつけている“願いの壁”を見て、姫としての自分の責務ーー人々をつないで、二度と戦争を起こさせないということを思い出す。『ワンダーウーマン』でも戦死者の掲示板が出てくるけど、それに触れるシーンは『ローマの休日』と同じアングルで撮っている。ひとつの愛を知り、選ばれた者の責務に人生を捧げるという点で、このふたつの作品は重なっているんです」

『LOGAN/ローガン』の劇中で放送される映画『シェーン』や『ブレードランナー2049』で引用されるナボコフの小説など、物語と直接関係のない部分でわざわざ描写されることやモノーー「そこには絶対に何かしらの意味がある!」と強調する。

ちなみに、町山は多くの場合、全米での公開後に一般の観客と同様に劇場で映画を観るという。公開前の配給会社の試写を観る機会もあるが、それを含めても原稿を書く前に観る機会は「2回くらい」とのこと。たった2回の鑑賞でここまでの情報量を受け取っていることは驚きだが、本人曰く「結構、見落としちゃって、後になって気づくことも多いんです(笑)」とのこと。例えば、アカデミー賞作品賞『ムーンライト』の主人公のシャイロンという名前について。

「カリフォルニアのうちの近くに以前、シャイロンという名の製薬会社があったんです。調べたら、ギリシャ神話に出てくる癒しの神の名前でした。シャイロンはもともとケンタウルスで、荒くれ者の群れの中で、ひとりだけおとなしく優しかったので仲間外れにされていたけど、アポロンや“月”の神であるアルテミスにかわいがられて、自分はそういう優しい性格のままでいいと気づくという話があるんです。それが主人公に重ねられている。『ムーンライト』でシャイロンが、父親代わりの男とその妻に優しくしてもらうというエピソードがあり、それは原作者自身の体験でもあるんですけど、その神話のエピソードとも重なることに原作者も気づいたんでしょうね。これは迂闊にも後になって気づいて、本には入れることができなかったんですが……。以前、ギレルモ・デルトロにインタビューしたら、“脚本を書く人間は、必ず役名に意味を持たせている”って言ってました」

“映画の観方”という意味では、劇場で観るのか? それともスマホなどのデバイスで観るのか? という次元から、昔とは大きく様変わりしている。“劇場離れ”はネガティブな意味で語られることが多いが、一方で、いまの時代だからこそ可能な映画の楽しみ方があるのも事実だ。

「僕が子供の頃は、映画を観るというと、名画座を追いかけるのが当たり前で、2回、3回と同じ作品を観るのは難しかったけど、いまは何度でも観られる。音楽も漫画も好きなものは繰り返し何度も楽しむでしょ? なぜか映画は、2回以上観ると“オタク”と言われちゃうけど、何度も楽しめるって素晴らしいこと。何より、いまはネットがあるから、例えば、映画の中に出てくる曲の歌詞や本の作者をすぐその場で調べられる。そういう情報で見えてくることって、ものすごく多いんですよ」

最前線の映画を、いまの時代ならではの見方で深く楽しんでほしい。

取材・文・撮影:黒豆直樹

【特別番組】「町山智浩が暴く「最前線の映画」の暗号」はBS10スターチャンネルで6月下旬から7月中旬、BS10スターチャンネルの「映画をもっと」(毎日20時放送ほか)枠内、および7月1日(日)夕方5:40ほかインターバルにて無料放映。

【特集企画】「町山智浩が暴く『最前線の映画』の暗号」7月3日(火)〜16日(月)夜9時ほか、BS10スターチャンネルにて連日放送(全12作品) 
※各映画の本編前と本編後に、町山氏による解説を合わせて放送

【放送作品】
『ブレードランナー2049』、『エイリアン:コヴェナント』、『ラ・ラ・ランド』、『ドント・ブリーズ』、『沈黙-サイレンス-』、『LOGAN/ローガン』、『ベイビー・ドライバー』、『ダンケルク』、『ムーンライト』、『ワンダーウーマン』、『メッセージ』、『アイ・イン・ザ・スカイ』

【関連リンク】
町山智浩が暴く「最前線の映画」の暗号|スターチャンネル

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