ただいまの掲載件数は タイトル64754件 口コミ 1176177件 劇場 588件

映画情報のぴあ映画生活 > 作品 > 夢〈1990年〉 > 感想・評価 > 原発の悪夢

原発の悪夢

70点 2011/3/29 4:46 by うなぎいぬ

TVで震災関係の映像を観ていると、当然様々な映画のシーンが脳裏をよぎる。
霞目飛行場から飛び立つヘリを観て「ガメラ2」を思い出した、というのは不謹慎かもしれないが事実だ。

もうひとつは黒澤明のオムニバス「夢」の中の「赤富士」のエピソード。
原子力発電所が爆発して富士山が溶鉄のように赤く灼熱し、ついには黄色く輝きながらメルトダウンしていく。そのふもとを人々が逃げ惑うナイトメアだ。

黒澤ファンとしては、さすがクロサワ、20年前に現在を予見して警句を発していた、といいたいところだが、それはちょっと違う。

チェルノブイリ以前からつい最近まで、原発といえば危ないもの、反対するものというのは市民感覚としてごく当たり前であり、むしろそれが「エコ」だったのだ。
賛成派だって、「化石燃料には限界があるんだからしょーがねえだろ」と「必要悪」として認める「現実派」が主流であり、原発を「環境に優しいクリーンエネルギー」などと謳って積極的に推進する風潮はかつては考えられなかった。
私がエコロジーに懐疑的なのは、本来短いものでも10年単位、長いものでは100年単位で考えていくべき大命題にもかかわらず、こんな風に「流行り」がころころ変わっていくからだ。そこには当然、それで得する者の思惑が働いていると考えるのが自然だ。
だから私は、「地球温暖化=CO2犯人説」は原発企業と排出権を輸出品目に加えたいEU諸国の陰謀だと半ば本気で信じている。

話がそれた。
つまり、ILMによる溶ける富士山の映像のインパクトはすごいし、昭和30年代に共に東宝の屋台骨を支えた盟友・本多猪四郎も協力した群衆の動きは、平成ゴジラシリーズのゆるい群衆シーンなどよりはるかに怪獣映画していて嬉しかったけれども、アイデア自体はどうということもなく、あまりにも素朴で直截的なメッセージに鼻白んだというのが当時の正直な感想だった。

このエピソードのあと、核戦争後?の廃墟でかつて人間だった鬼に出会う「鬼哭」、一転して緑豊かな村で古老とともに賑やかな葬列を見送る「水車のある村」で終わる構成はうまいと思う。

最も印象的なのは、復員姿の「私」が部下たちの亡霊と出会う「トンネル」だ。
内田百聞の短編「旅順入場式」みたいだな、と思ったら数年後に百聞を主役にした「まあだだよ」を撮ったのにはびっくりした。
「こんな夢を見た」というサブタイトルが漱石の「夢十夜」の引用で、百聞が漱石の弟子だったことを考えれば不思議ではないのだが、当時はそんなこと知らなかったのだ。

黒澤は同世代の男性の中では珍しく、軍隊に召集されないまま終戦を迎えている。
このことについて黒澤は多くを語ってないが、内心忸怩たるものがあったのではないか、と私は思う。部下たちへの言葉は懺悔のようでもあるし、まだ本音を言ってないようにも聞こえる。
だから、部下たちが去ったあと、手榴弾をぶらさげた軍用犬が執拗に彼に吼えかかるラストは、「人間はうまいこと言っていいくるめられるかもしれないが、オレはだまされねえぜ」と叫んでいるようにも見える。

SFXを駆使した超大作の中で、夕暮れの絶妙な光線の時間帯を狙って短時間に一気に撮られたと思えるこのエピソードがもっとも印象的、というのが映画の面白いところだ。

余談だが、当時映像関係の専門学校に通っていた知人は「桃畑」のエピソードの撮影で、櫓にのぼって花びらを降らすバイトをしたそうだ。
しかし、降らしたり止めたりのタイミングが合わず監督に怒鳴られっぱなしだったとか。「そんなこと言ったって、あんなもんそんなにぴったり止められるわけないじゃない」とぼやいていた。監督の印象を聞くと笑って、「あんなにジーパンの似合うじじいはいないね」とのことだった。

 

3人がこのレビューに共感したと評価しています。
ユーザー登録すると、レビューを評価できるようになります。

満足度データ

夢〈1990年〉
100点
8人(9%) 
90点
4人(4%) 
80点
17人(20%) 
70点
19人(22%) 
60点
17人(20%) 
50点
6人(7%) 
40点
8人(9%) 
30点
2人(2%) 
20点
3人(3%) 
10点
0人(0%) 
0点
0人(0%) 
採点者数
84人
レビュー者数
20
満足度平均
67
レビュー者満足度平均
72
ファン
6人
観たい人
39人

 

返信を投稿

名前 ※ニックネーム可
メール ※表示されません
見だし
内容
※ネタばれ、個人・作品に対する誹謗中傷はご遠慮下さい。
※ネタばれや質問などは掲示板
オプション この作品のお知らせメールを受け取る(返信をお届けします)
レビューを初心者モードで投稿する



掲載情報の著作権は提供元企業などに帰属します。
Copyright©2019 PIA Corporation. All rights reserved.

Myページ

ログイン

はじめての方はこちらから

新規ユーザー登録
ぴあ映画生活 facebook公式ページ
ニコニコ生放送 週刊ぴあ映画生活


この映画のファン

  • 放浪かもめ
  • あおべか
  • Garbera
  • apple100%
  • takehead

 

ユーザ登録をするとこの映画のファンに加わることができます

関連動画

関連動画がありません

関連DVD

夢 [DVD]

  • 定価:1008円(税込)
  • 価格:882円(税込)
  • OFF:126円(12%)

 

正統派時代劇『武蔵−むさし−』が公開!
『ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2019』特集
映画ファンなら見逃してはいけないSFスリラー『クローバーフィールド・パラドックス』 『アナイアレイション −全滅領域−』特集
WOWOW『連続ドラマW 悪党 〜加害者追跡調査〜』特集
歴史に残る“クライマックス”を見逃すな!『アベンジャーズ/エンドゲーム』特集
ぴあの映画特別号「ぴあ Movie Special」、最新号となる春号登場!
新作続々、公開中!マーベル・コミック映画ニュースまとめ!

クチコミ満足度ランキング

初日満足度 観客動員数 DVDレンタル

満足度 投稿数 観たい ファン

あの映画の“核心”に迫る!話題作のキャスト・スタッフに直撃!【インタビュー記事まとめ】
進化し続ける4DXの魅力をレポート!4DXニュースまとめ
DCヒーローの動向をチェック!『DCコミック映画』まとめ