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本物にはかなわない
2010/2/3 21:32
by
Baad
この映画を見たいと思ったきっかけは、映画『ミルク』の多くの俳優の動きが何となくぎこちなく感じられたこと、端正な役者さん揃いの主要キャストにもまして、ラスト近くに映し出されて実在の人物自身のプロフィールが生き生きとして魅力的だったことから、実際の運動のありようを見てみたい、と思ったことなどでした。
残念ながら、この映画でインタビューを受けたり、多く映し出されているのは、政治運動に関わっていた人たちがほとんどであり、インタビュー自体もミルク氏が亡くなってから6年程たっているので、ハーヴェイ・ミルク本人以外はあまり比較することは出来ませんでした。選挙参謀のアンさんはインタビューを受けていたのですが、随分体型が変わっていらっしゃいましたし・・・
でも、全体の印象はやはり『ミルク』より明るくて翳りが少ないですね。なによりも、ハーヴィー本人がとても人好きのする愛嬌のある人で本当に魅力的でした。天性の市民運動家、ですね。
ハーヴェイ・ミルクの生きた時代を、ダン・ホワイトによる殺人事件を中心にインタビューで構成する、という形式なのですが、時代が1984年でまだ、運動が守りに入っていなかったということもあるのでしょうが、全体に、見ていて希望が持てるような作りになっています。
ただ、その中で、ひとつ、びっくりするような根の深い問題の指摘がありました。同性愛者の権利を認めること自体が、原理主義的なキリスト教徒の新天地として始まった合衆国の建国の理念を守って生きてきた人たちの生き方を揺るがす一面があるということです。
これはもう、ほんとうに米国内同性愛者だけの問題ではなく、現在では別の方向で世界中に迷惑を及ぼしてしまっている、根の深い困った問題です。
そうであるがゆえに、私たちもこの問題とは無縁ではないのかもしれません。
保守的な陣営の人たちでも、ダン・ホワイトの選挙区の住民とか奥さんはインタビューを受けているのですが、その辺の反応も興味深かったです。ホワイト夫人は思いやりがあって感じのよい人なのですが、夫に対する思いやりがなぜ社会的な方向に繋がらないのか、という部分に限界を感じました。
このドキュメンタリーは、製作されてから20年以上の年月が流れていますので、当時の状況について知識のない方は、『ミルク』を見た後で見る方が理解し易いかもしれません。
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こちらも補足
2010/2/4 16:12 by
Baad
くりふさんの投稿の補足レスを読んで、気づきましたので、付け加えます。
> 保守的な陣営の人たちでも、ダン・ホワイトの選挙区の住民とか奥さんはインタビューを受けているのですが、その辺の反応も興味深かったです。ホワイト夫人は思いやりがあって感じのよい人なのですが、夫に対する思いやりがなぜ社会的な方向に繋がらないのか、という部分に限界を感じました。
こちらは、ドキュメンタリーのスタッフからのではなく、事件後のニュース映像でのインタビューだったと思います。
かなり長い物だったので、勘違いしていました。
くりふさん、どうもありがとうございました。
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