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右腕だけ出演した男(のびた)

90点 2012/3/13 23:07 by 出木杉のびた

この映画が、僕が初めてエキストラに出た、記念すべき第一作である。設定は天王寺駅派出所前を歩く通行人役。渥美清さんと警官役のイッセー尾形さんのやりとりの後方を歩くのである。僕は寅さん映画に出られた喜びで、親戚、職場、友人関係みんなにこのことを伝えたが、いざ劇場へ彼女(今のかみさん)を連れて観に行くと、僕が映っていたのは右腕だけ。物凄くガッカリしたことを今でも思い出す。

さて、映画の冒頭は夢というより、寅次郎の過去の思い出。子供時代父親に折檻されて家を出た時のこと。さくらに立派になって帰ってくると言っておきながら、いまだ果たせず、相変わらず進歩のない暮らし振りを反省しているかのようだ。この嫌いな父親と自分との関係が、本作に登場する少年秀吉とその父親との関係性と重なってくる。寅が身寄りのない少年の面倒を看ることの動機付けには十分なオープニングであろう。

柴又では高校生の満男が何やら反抗期だ。将来についてどうも悩んでいる様子。それを母・さくら(倍賞千恵子)や父・博(前田吟)にも言わずにいるので、手を焼いている。自分の悩みは親よりおじさんの方が相談しやすいとみえる。満男の口から、おじさんのことを評価しているようなことが呟かれる。そしてラストの寅の名セリフに繋がっていくのである。

寅が柴又に帰ってくると、そこにもう秀吉がいる。大袈裟な名前だととらやの面々は驚くが、名付け親を知って今度は呆れることになる。店ではタコ社長(太宰久雄)の娘・あけみ(美保純)が手伝いをしてくれている。彼女のキャラが明るくて、とらやが華やかな雰囲気になっていていい。満男はあけみにまで説教をするくらいに生意気盛りだ。

寅は秀吉を連れて、母を探す旅に出る。旅先の旅館で巻き込んでしまった高井隆子(秋吉久美子)と擬似家族を形成して、束の間の家庭の味を寅は知る。その中心には子供の急病という、のっぴきならない事態はあるものの、仮想両親の寅と隆子による献身的な看病を通じて、小さき命を思いやる気持ちの美しさが描かれていく。

隆子も訳ありの女性なのだが、少しここのセリフや演技は大袈裟に感じられてしまった。母性というものは、あそこまで見ず知らずの子供に感情移入できるものなのだろうか。

ここで強引に引っ張り回される医者役が、二代目おいちゃんの松村達雄。おいちゃん役を降りてから、時折ちょい役での登場となるが、こういう出方が実に嵌っているキャラで観ていて楽しい。ここに更に旅館の主人役の笹野高史が加わって、もう大笑いである。この他、すまけいやイッセー尾形など、クセのある脇キャラたちが大いに映画を盛り上げてくれている。尚、どうでもいいことだが、この作品であの出川哲朗の姿を発見した。

秀吉の母親・ふで(五月みどり)はなかなか見つからない。秀吉のことをどう思っているのか。そういう不安もさり気なく語られているからこそ、終盤はホロリだ。

普段は役立たずではあるが、こういう非常時には何故か活躍してしまうのが寅の取り柄であり、満男が密かに評価している長所であろう。ラストで寅に投げかける満男の人生に於ける大問題。「人間は何の為に生きているのか」。それに対する答えは、隆子とのやりとりで自然発生的に出てきた言葉であった。

僕もこの歳になった今でさえ、悩むことがある。どうせ人はみんな死んでしまうのに、何の為に生きてるんだろう。そう思った時には、いつでもこの映画に辿り着いてしまうのだ。

PS
尚、点数であるが、僕の右腕が出演していることと、ラストの名セリフの為に、やや甘くなっていることを告白しておく。

 

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  • 右腕だけ出演した男を見つけた女

    2012/3/15 14:17 by 流離

    こんにちは!

    のびたさんにとって、出演作であるばかりでなく、奥様との思い出の作品でもあるんですね。私にとっても、のびたさんの思い出の作品ですよ〜♪

    いつもながら脇がいいですよね。出川さん、変なことに満男ちゃんを誘っちゃったりして!お餞別も渡してましたね。(実はおばちゃんの訃報を聞いて、観たばかりなんです・・・笑)

    ラストのセリフは、歳を重ねれば重ねるほど、味わい深くなっていくような気もして。忘れられない一言です。

    お邪魔しました!

  • 流離さんに右腕を発見された男

    2012/3/15 23:18 by 出木杉のびた

    流離さん、こんばんは。

    寅さん鑑賞も、いよいよ40作まで到達しました。レビューし終わるのがとても淋しいですが、まあこのシリーズは既に全作品最低でも五回ずつは観てますので、僕が死ぬまで更に観続けることでしょう。

    出川が出ていたことは、以前何かで聞いていたのですが、何の作品か忘れていて、今作でふと目にとまったので、ちょっとエキストラの自分を発見したような喜びがありました。

    この翌年はかみさんも連れて大船撮影所に見学に行き、倍賞千恵子さん、前田吟さん、吉岡秀隆くんと一緒に記念撮影をしてもらったことが思い出されます。その時の写真は我が家の家宝として、大切に保管してあります。

    ラストの寅さんのセリフは、本当に味わい深いものがありました。

  • Re: 右腕だけ出演した男(のびた)

    2017/3/21 1:18 by 未登録ユーザ 焼津のウサギ

    観終わった後でのびたさんのブログで再確認しましたが腕だけしか映らなかったのは悔しいですね。
    今のようにすぐにソフト化すれば詳細に確認できるのでしょうが当時は自分の映っている姿の確認作業も大変だったでしょうね。
    のびたさん出演の天王寺駅のシーンがセットだったとは驚きです。交番の向こう側の駅構内の様子など出来が良いですね。

    本編では少年の母親がマドンナになるのかと思いきや旅の途中で出会った女性で少し驚きました。しかもそれほど深い中になるわけでもなく別れてしまうしこれははたして恋だったのか…と思うほどにあっさりとしていました。
    しかし母親との対面シーンとラストの名台詞は胸にグッときました。

    話しは変わりますが『炎の経営者』観ました。
    Nさんの1つ後ろの方の席に座っていたのがのびたさんでしょうか、車内のシーンでは常連さんが結構しっかりと映っていて羨ましかったです。

  • Re: 右腕だけ出演した男(のびた)

    2017/3/22 20:33 by 出木杉のびた

    焼津のウサギ。さん、こんばんは。

    大船に撮影所があった頃、見学に行ったらちょうど撮り直しでエキストラが必要ということで、急遽通行人として参加しました。僕と一緒に歩いた友人の姿は分かったので、その横の右腕が僕であることは間違いありません(苦笑)。

    『炎の経営者』ですが、Nさんの後ろの席のおじさんが僕で間違いありません。撮影時はもっとカメラが近いシーンがあったのですが、本編ではそこがカットされていてガッカリでした。あと、日本開発銀行に主人公が押し掛けて行くシークエンスでも、僕がいるはずなんですが、自分でもはっきり分からない程度で、これまたガッカリ。ドラマも何だかダイジェストみたいで盛り上がらず、残念なエキストラでした。

    今月は静岡県東部は撮影ラッシュで、一日に何作も重なり何に参加するか迷うほどです。とりあえず明日は「フランケンシュタインの恋」に行ってきます。

満足度データ

男はつらいよ 寅次郎物語
100点
0人(0%) 
90点
1人(12%) 
80点
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70点
3人(37%) 
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40点
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30点
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20点
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10点
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0点
0人(0%) 
採点者数
8人
レビュー者数
4
満足度平均
73
レビュー者満足度平均
75
ファン
2人
観たい人
6人

 

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