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遊子を勇士と勘違いした男

90点 2012/3/14 23:24 by 出木杉のびた

冒頭、寅次郎(渥美清)のナレーションはさくら(倍賞千恵子)を通しての、おいの満男(吉岡秀隆)へのメッセージである。自分みたいにならずに、人から慕われるようになってくれとの願いが込められている。しかし、その後登場する満男は、寅さんそっくりの行動をとるので可笑しいのだ。

オープニングタイトルには、曲者・笹野高史が登場。笑いを誘う。走るのが速くて驚いた。登場がここだけとは勿体無いと思っていると、ここと対となる場面で期待通りの活躍をしてくれるので嬉しい。

旅先の小諸で、寅は一人暮らしの老婆・中込キクエと知り合う。このキクエと過ごす一夜が怖いんだけど笑えてしまうのが凄い。田舎の淋しい夜。老婆の一人暮らしは、さぞかし心細いことだろう。寅さんみたいな愉快な男がいてくれたら、どんなに楽しく心強いことか。

現代社会でも孤独死が問題になっているが、1980年代後半にもその問題はあった。そして病院で死ぬということ。キクエは病気を抱えており、医者に入院を薦められていた。しかし、自分が長く暮らした家で死にたいと願っている。ここで登場する今回のマドンナは、夫と死に別れた女医・原田真知子(三田佳子)。彼女は医者の立場でありながら、患者の意思に背いて無為な延命治療をするより、住み慣れた場所で安らかに看とられた方がいいのではと考えている。

キクエがこの家を去ろうとする場面にはホロリとさせられる。もう家には戻って来られないと思っているようだ。自分の身体のことは、自分が一番よく判るのだろう。古ぼけた家に向かって手を合わせる様子が、切なくて胸を打たれる。

真知子の姪は、早稲田の学生の由紀(三田寛子)。由紀は短歌が趣味という設定で、当時人気だった俵万智の『サラダ記念日』の短歌を寅さん用にアレンジして、映画内で使われている。その歌に合わせてエピソードを取り入れていったのかも知れない。

寅が由紀を探して早稲田大学の講義を受けてしまうシークエンスは、ある意味ちょっとハラハラしてしまったが、こんなことで怖気づく寅ではない。教授も学生も巻き込んでしまうパワーには恐れ入る。ここで寅が語る「ワットくん」とは、第20作『寅次郎頑張れ!』で中村雅俊が演じた若者のニックネーム。その時映画で描かれたエピソードが、この第40作で寅の口から語られるのが、何とも懐かしい思いだ。

今回「とらや」が「くるま菓子舗」になっている。店の名前の変更を余儀なくされたのは、当時帝釈天のあるだんご屋が、屋号を「とらや」にしてしまった為であるらしい。永年馴染んできた「とらや」を奪われたみたいで、ファンとしても淋しい。帝釈天に行くと本当に「とらや」があるのは嬉しい気もするが、何とも複雑な心境である。

「くるま菓子舗」の新しい店員に若い三平が勤めている。できれば引き続き美保純のあけみに登場して欲しかったが、前作『寅次郎物語』が最後になってしまって淋しい。

くるま菓子舗では久々に寅のアリアが聞けたのが嬉しかった。キクエの先立った夫の話が胸に沁みる。寅が経験した不気味な一夜の話をもう一度寅の口から聞くのも、また風情があっていい。

キクエの顛末は予測した通りの展開なのだが、やはり泣けてしまう。泣き崩れる真知子と寄りそう寅。ここはラブシーンと言ってよかろう。そして院長(すまけい)の真知子への説得は、愛の告白だ。

満男もまた前作同様、寅に難問を投げかける。今回は何の為に勉強するのか。普段いい加減な寅が、ちゃんと筋道立てた発言をしてしまうところが油断ならない。満男が寅を心の底では尊敬してしまうのも頷ける。

病院の医療問題、流行の短歌にサザンの曲、そしてタコ社長は地上げに反対している。そういう時代が見えてくる作品でもあった。

 

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  • Re: 遊子を勇士と勘違いした男

    2017/2/25 21:44 by 未登録ユーザ 焼津のウサギ

    サラダ記念日がベストセラーになった頃、まだ幼少だった為そんな本があったらしいとしか知識が無いのですが今作で女子大生が短歌を詠み、それをラストでサラダ記念日と命名し朝日印刷で製本する過程から実はこの女子大生が後に話題となるあのサラダ記念日の著者だった…みたいな筋立てなのかと思いきやただ流行りの歌集から引用しただけで深い意味は無かったのですね…。
    ベストセラーをいち早くシリーズ物のサブタイトルにするとはフットワークの軽さに驚かされます。
    本に載っている短歌を上手く挿入する為に物語を書くというのもなかなか大変そうですね。

    キクエと死に別れた夫について語る寅のアリアには泣かされました。
    早稲田大の講堂で学生や教授を巻き込み爆笑の講義をするのは「かもめ歌」の時もそうでしたが面白いですし見ていて気持ちがいいですね。

    病人の本当の幸せとは何か、医療倫理に踏み込んだ内容といい、面白く観る事が出来ました。

    話しは変わりますが朝ドラの撮影はどうだったでしょうか、休日は育児や畑の隅に子供の遊ぶスペースを作ったりと何かと忙しく自分の時間がなかなか得られないのですがのびたさんの活躍を陰ながら応援しています。

  • Re: 遊子を勇士と勘違いした男

    2017/2/26 10:12 by 出木杉のびた

    焼津のウサギ。さん。おはようございます。寅さん鑑賞、ハイペースで進んでますね。

    シリーズの見所のひとつに、寅のアリアがありますが、本作では久々でした。滑舌のいい渥美清さんの語り口は、耳に実に心地良く響きます。シリーズ終盤になるにつれ、寅さんの声に張りがなくなってきて、悲しくなります。

    本作で「とらや」から「くるま菓子舗」になってしまうのもとても残念。事情が事情ですが、やはり「とらや」のままでいて欲しかったというのが、ファンの本音です。

    さて、昨日の朝ドラですが、朝5時45分集合で、8時半には終わりました。実景のみでキャストがいなくて残念でした。何パターンか撮りましたので、いつの放送でどこが使われるか全く分かりません。どうやら主人公が初めて勤める会社前という設定のようです。

    3月には、県内3つのFCで撮影があるとの情報を入手しました。焼津のウサギ。さんも育児に忙しいと思われますが、都合がついたら是非ご参加下さいね。

満足度データ

男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日
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採点者数
12人
レビュー者数
4
満足度平均
74
レビュー者満足度平均
78
ファン
3人
観たい人
9人

 

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