放心状態
2011/8/22 9:14
by
シガロ
最初観た時、放心状態で感想を書くのも出来なかった作品。青い配色の中、静かに進行するストーリー。久石譲の心の輪郭をなぞるような、張り詰めた音楽。そこに北野監督のオハコである、突発的に現れるバイオレンス描写が加わり、抜群の緊迫感に満ちた作品になっている。
この作品はそんなドラマ、暴力、コメディが、非常にバランスよく使われている。他の北野作品だと、どうしてもコメディばかりで間延びしてしまったり、それが過剰すぎたりするのだが、今作では、特にコメディが控えめで、日常から切り取られたようなリアル感がある。西(北野武)と妻(岸本加世子)のシーンなどだ。
注目して欲しいのはやはり色使い。ほとんど真っ青な画面の中、暴力描写だけ赤色に染まる。この青と赤の対比が面白く、より振り幅を与えている。(この感覚はデイヴィッド・リンチに近い)物語は最後になるにつれ赤い配色がポツ、ポツと現れ始め、観るものを潜在的に、不安にさせていく。(最後の絵画に書かれた真っ赤なあの文字や、妻が着ている服など)
クライマックスの盛り上げも素晴らしく、妻が初めて見せる顔や、それに戸惑う西が良い。タイトルの「HANA-BI」は、拳銃の音と花火をかけたダブルミーニングだと思うが、聞き様によっては美しい音にも、悲しい音にも聞こえる、異なる2つの意味を持っている。
それは北野監督の絵画にも見られる。生き物と植物を組み合わせた、美しいがちょっと不気味な絵画だ。一つの花の形も、様々な生物の中に普遍的に存在しているのだ。本作はそんな世の中の美しさや醜さ、生と死を描き切った、素晴らしい作品である。
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