虚と実のはざまで
2003/5/31 0:00
by
仮名側之丞
原題通りだと、「無敵の男」(invincible)なんですね。本作を見る限り、主役の怪力男が「神に選ばれた」とは思えません。
ヴェルナー・ヘルツォーク作品は20年ほど前、『フィッツカラルド』を見ました。監督の執念がクラウス・キンスキーに乗り移ったみたいで凄かった。
本作では、まずティム・ロスの執念でしょうか。『猿の惑星』に続き名匠の作品です。彼の出演場面の締まったこと! 1人で3人分の演技でした。 何せ主役の怪力男ジシェや彼のマドンナになる女性ピアニストは、演技経験の無い素人だったのですから。
想像できますか? 『戦場のピアニスト』の主役をピアノができる素人がやったら、どんな出来になったか。
これは、出世欲にかられて「虚」に生きた予言者ハヌッセンと、誠意のかたまりみたいな「実」に生きた怪力男ジシェとの対比を出したかったのでしょう。
役者とは、あくまで虚に生きるショウマンに過ぎないと監督は言いたかったのかも。
しかもハヌッセンとジシェの2人は実在したんですね。でもピアニストの"マドンナ"マルタはどうだったんだろう? エンドでも彼女のその後は示されませんでした。
ジシェも、途中までは「神に選ばれた」役どころですが、見終わってみると・・そうじゃなかった。
最初の雰囲気はどこか SW:EP4のルークみたいでほっとしますね。「自分の才能が何のためなのか確かめたい」 おや、ヘルツォークはルーカス(或いは黒澤)みたいな映画を撮ったのか、と思いますね。でも違います。
ポーランドの田舎から都会のベルリンへ行って戻ってくる、すると・・まるで『七人の侍』かいな、と思ったら違ってました。
本作中、ジシェは「サムソンとデリラ」の英雄サムソンを気取るのですが、"サムソン"ジシェが倒した物って一体何だったんだろう、と考え込みました。
確かに虚の帝王を倒したと言えばそうですが・・これ以上はネタばれになるので止めます。
夢の描写が独特ですね。知らない方が楽しめますが、海のそばに住まない限り、こんな夢は見ないと思います(笑)。 あの動物にどんな意味があるんだろう。
それと日本人ネタが思わぬ所で、伯爵役ウド・キアーから出てきます。 それを元にジシェが彼女に贈ったプレゼントが泣かせます。ここだけは素人じゃなく、名優に演じて欲しかったなぁ。
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