映画化が難しい作家
2011/9/15 10:08
by
IKA
レンタルDVDにて。
小松左京さんがお亡くなりになりました。私にとってはけっこう大きな影響を与えてくれた方なので、ちょっと追悼の意味で借りて見てみました。
原作を読んだのはもうかなり前なのでほとんど忘れてしまいました。なので、原作どおりかどうかもよくわかりませんが、小松さんらしさは充分に伝わってくる出来でした。
この作品は、かなり力が入っていて、潜水艦なんかも後のCG潜水艦じゃなくてみるからに本物ぽい。うーん、本物?と思っていたら、なにかに本物を使ったと書いてあった。これ、今の映画製作に携わる方々にはぜひ見習ってほしい点ですね。CG潜水艦だと、どうもお話もそれくらいのスケールになってしまいますし。
というように「力作」なんですが、やはり今からみると「古風」です。俳優さんの演技やしゃべり方も、演出というのでしょうか、場面の構成やシーンのつなぎ方も、そして撮影も……すべてが「古風」で、そんなに昔という感覚はなかったんですが、1980年代ってあんなふうだったんだ……と不思議な感慨を持ちました。
作品自体のできは、満足度的には今一歩というところでしょうか。まじめに、律儀につくってあるのですが、なんか「花」がない。全体に同じようなトーンで最初から最後までいってしまうので、のべーっとした感じが終始つきまといます。「仕事」じゃないんだから、もっとどんどん冒険すればいいのに……と思うのですが、なんかプレッシャーでもあったんでしょうか。スケールが大きいわりにスケールが小さいんですね。不思議なことに。
これは結局、「映像」には力を入れたけれども、「お話」の方が映画としての「芯柱」を立てられなかったのかな?とも思います。要するに、「映画思想」(変な言い方ですが)として、小松さんの「SF世界」に拮抗するだけの強力なものがない……なので、ただ「なぞる」だけに終わってしまった。この点、『2001』のキューブリックとクラークみたいに「2大巨匠」的な関係じゃないですね。そうなると面白かったかもしれませんが。
結局、小松左京さんの作品世界を超えることはできなかったのかな……小松さんの作品は、そういう意味で、まだ「本格的に」映画化されたことは一度もないといってもいいかもしれない。これから気鋭の若い創作者のみなさんにぜひ手がけていただきたいと思います。再度の映画化でもいいし、『果てしなき流れの果てに』みたいなまだ映画化されていない作品をやってみようということでもいいし……なんてことを考えましたが、今の方々にとってはもう小松さんなんか過去の人なのかな?ちょっとさびしい気もしますが……。
*この作品だけじゃなくて、今まで映画化された小松さんの作品を思い出して考えたんですが、小松作品って、意外に映画化するのが難しいのかもしれませんね。なんていうか、作品自体がもうすでに映画になってる感じなので、そういうものをスクリーンに乗せるには、かなりの工夫が必要なんじゃないかと……小松さんの作品世界は、常に「画像」がきちんと伴っていて、彼は文字を描くと同時に「視覚像」もちゃんと組立てていたんだなということが、読んでるとよくわかります。まあ、作品自体がシナリオになっちゃってるようなもので、これを「映画化」するのは至難のわざだろうな……と。そのままやっちゃうと、たぶんこの映画みたいにのっぺりとした抑揚のないものになってしまう。一度全部分解して組立てなおす……しかしそれには、あの小松左京に匹敵するくらいのエネルギーが必要……でも、それをやらないと「本格映画化」には至らない……「映画化」がすぐできそうでこんなに難しい作家は珍しいのかな……
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