ただいまの掲載件数は タイトル58068件 口コミ 1134348件 劇場 595件

映画情報のぴあ映画生活 > 作品 > 男はつらいよ > 感想・評価 > 笑わせるな、親父のゲンコはもっと痛かったよ

笑わせるな、親父のゲンコはもっと痛かったよ

100点 2010/8/10 22:56 by 出木杉のびた

TVシリーズの最終回を、寅さんの死というかたちで終わらせてしまったので、視聴者からたくさん抗議が殺到したという。寅さんはこの時点で、もう国民のアイドル的存在だった。それを映画で蘇らせたのだが、この時、これがまさか48作まで続く長寿シリーズになるとは思ってもみなかった山田洋次監督は、この一作目にかなり濃い内容を詰め込んでいる。

20年振りの故郷に戻ってきた車寅次郎(渥美清)と、さくら(倍賞千恵子)の再会。さくらのお見合いから、博(前田吟)との恋物語の顛末、ヒロシの父親との関係に、寅の恋…。よく91分でまとまったものだと感心する。それだけ映画としても充実したものになっていて、やはり名作だと思う。

そしてこれから続く長いシリーズの、基礎基本は第一作でほぼ完成しているのも凄い。当時の社会情勢を反映した内容から、寅さんの旅での出会い、失恋に至るまでの、寅さん映画のテイストのエッセンスが、ぎっしりだ。

さくらの名前は、本当は漢字で“桜”と書く、ということをお見合いの席で言っていた。倍賞千恵子が、若くて可愛い。久し振りに再会したさくらの「おにいちゃん?」という言い回しが実に良い感じ。この後から、様々なバリエーションの「おにいちゃん」が聞かれる。その時々の状況に合った、とても感情のこもった呼び方だ。

オープニングの寅の語りは、「桜が咲いております。懐かしい葛飾の桜が今年も咲いております」と始まる。妹の名前が桜なのも、寅の故郷に対する想いと、この美しくて誰からも愛される花のイメージとが、直結しているからに相違ない。寅はこれからずっと、故郷=桜に会いに、必ず柴又に舞い戻ってくるのだ。

さくらが美しく成長していたのを見た寅の、見合いでの狼藉や、博との関係を認めたくなかったのは、やはりさくらが他の男に奪われるのが、悔しかったのだろう。一流大学卒の立派なお見合い相手(何と広川太一郎)も気に入らないし、博には、大学も出ていない人間とは結婚させたくない、などという。相手がどんな人間だろうと、結局は認めたくないのだ。

それでも博の強い想いに、手を貸したくなった寅が、女性を目で口説くのだ、とコーチする様子が可笑しい。その後、自分もマドンナ・冬子(光本幸子)に実践するが、これまた大笑いだ。

シリーズ名物の喧嘩シーンも、何故かいつも笑える。タコ社長も含めて、家族内の修羅場であるはずなのに、どうしてこうも笑えてしまうのだろう。これはやはり、寅さん一家のキャラの魅力だろう。それはまた、役者の魅力でもある。

寅さん映画は、当然笑えるのだが、一作目は何度も泣かされた。僕の寅さんに対する思い入れの深さもあるかもしれないが、まず、さくらとの再会シーン。そして、博がさくらに想いを打ち明けるシーン。博のさくらに対する、強い愛情が、その切実な語りから伝わってきて、僕の心の奥にしまいこまれていた、恋心を刺激してくれた。

更に、博の父の挨拶。喧嘩別れしていても、真の肉親の愛情が伝わる名場面だった。演じるのは志村喬。この父親の名前が“ひょういちろう”というのだが、この漢字がみんな読めないという繰り返しのギャグは面白かった。

盛りだくさんの内容の為、寅さんの恋愛パートは、かなり薄い感じだが、それでも充実した第一作だと思う。

 

5人がこのレビューに共感したと評価しています。
ユーザー登録すると、レビューを評価できるようになります。

  • Re: 笑わせるな、親父のゲンコはもっと痛かったよ

    2016/8/26 22:44 by 未登録ユーザ 焼津のウサギ

    ドラマ版の最終回を観ましたが奇をてらったのかあまりにも悲しすぎるラストで苦情が来ても仕方ないと思いました。

    1作目は寅さんだけでなくさくらと博の恋愛が大きく描かれていましたね。会社にあんなさくらのような美人がいたら本当に誰も黙っちゃいないでしょう。博が寅さんと喧嘩になった時に他人の気持ちになれと言ってそれに対して寅さんがわかるわけないと突っぱねるのが面白かったです。
    博の父親の結婚式でのあいさつには泣かされました。

    そして48作品も続いた作品の1本目ですが今後のシリーズの道筋が見えているかのような完璧な完成形だと感じました。

  • Re: 笑わせるな、親父のゲンコはもっと痛かったよ

    2016/8/28 6:22 by 出木杉のびた

    焼津のウサギ。さん、おはようございます。

    僕はテレビの最終回、BSの放送を録画してありますが、まだ見ておりません。そんなに悲し過ぎる終わり方ですか。そのうち見たいと思います。

    山田監督、このシリーズがこんなに長く続くとは考えていなかったようで、一作目に全てを注ぎ込んで作った完璧な作品だと思います。以降も様々なマドンナの登場で、傑作を連発させてしまうのが凄いところです。

    とにかくさくらが可愛らしかったですね。

  • Re: 笑わせるな、親父のゲンコはもっと痛かったよ

    2018/2/12 14:19 by 赤ヒゲ

    出木杉のびた様

    赤ヒゲと申します。いつも出木杉のびた様の映画評を参考にさせていただいていますが、たぶん、書き込みは初めてかと思います。出木杉のびた様は「男はつらいよ」の大ファンであると思いますが、今作についての評にも作品への愛が詰まっていて、共感しました。

    >よく91分でまとまったものだと感心する。それだけ映画としても充実したものになっていて、やはり名作だと思う。

    本当にそうです。91分とは思えぬ充実感がありました。

    > オープニングの寅の語りは、「桜が咲いております。懐かしい葛飾の桜が今年も咲いております」と始まる。妹の名前が桜なのも、寅の故郷に対する想いと、この美しくて誰からも愛される花のイメージとが、直結しているからに相違ない。寅はこれからずっと、故郷=桜に会いに、必ず柴又に舞い戻ってくるのだ。

    故郷に対する思いって、こういう感じなんでしょうね。普遍的な価値観がしっかりと描かれているから、何作続いても何度みても楽しめるのでしょうね。

    > それでも博の強い想いに、手を貸したくなった寅が、女性を目で口説くのだ、とコーチする様子が可笑しい。その後、自分もマドンナ・冬子(光本幸子)に実践するが、これまた大笑いだ。

    矢切の渡しでの舟の中でのやりとりが本当に可笑しかったです。確かに自分が食べた芋で相手は屁をしないわけで、滅茶苦茶な例えのようだけど、真理を言っている気がしました。

    > 更に、博の父の挨拶。喧嘩別れしていても、真の肉親の愛情が伝わる名場面だった。演じるのは志村喬。この父親の名前が“ひょういちろう”というのだが、この漢字がみんな読めないという繰り返しのギャグは面白かった。

    泣いて笑って、本当にすばらしい名シーンでした。

    お邪魔致しました!
    赤ヒゲ

  • Re: 笑わせるな、親父のゲンコはもっと痛かったよ

    2018/2/13 5:53 by 出木杉のびた

    赤ヒゲさん、おはようございます。
    お気に入り登録させていただいたのはかなり以前だと思いましたが、初レスありがとうございます。映画生活も去年は休んでおりましたが、今年から再開しました。劇場作品鑑賞はかなり減ったので、過去作のレビューばかりになりそうです。まだまだ名作がたくさんありますので、それを書かなければ死にきれそうもありません(笑)。

    さて、『男はつらいよ』シリーズですが、ご察しの通り大ファンで、もう全作何度観直したか分かりません。最近また一作目から全作観直そうかと思っています。特に盆暮れになると、どうしても寅さんに会いたくなってしまいます。渥美清さんは亡くなられてしまいましたが、寅さんは今でもどこかで旅を続けているんだと、固く信じている男であります。

  • Re: 笑わせるな、親父のゲンコはもっと痛かったよ

    2018/2/13 22:31 by 赤ヒゲ

    出木杉のびた様

    お返事、ありがとうございます。
    >まだまだ名作がたくさんありますので、それを書かなければ死にきれそうもありません(笑)。

    同感です。見ても見ても見切れないほど名作があるので、とても全ては見切れませんが、せめてこれは名作というものは見ておきたいなと思っています。

    >『男はつらいよ』シリーズですが、ご察しの通り大ファンで、もう全作何度観直したか分かりません。最近また一作目から全作観直そうかと思っています。

    へ〜、本当に筋金入りの大ファンなんですね!山田洋次監督もきっと喜んでいらっしゃると思います。余談ですが、「たそがれ清兵衛」を観たときに監督にばったり遭遇したことがあります。観客がみんな帰ってもずっと客席に座っている方がいて、それが監督さんでした。挨拶しようか、握手してもらおうか、サインもらおうかなど考えているうちに通り過ぎてしまったのですが、後になって「一言、こんなに素晴らしい作品を作ってくれたことにお礼を言えばよかった」と猛烈に後悔しました。

    >特に盆暮れになると、どうしても寅さんに会いたくなってしまいます。渥美清さんは亡くなられてしまいましたが、寅さんは今でもどこかで旅を続けているんだと、固く信じている男であります。

    この作品には、その当時の日本そのものが記録されているようで、大変貴重なアーカイブという気がします。出木杉のびた様の寅さん愛は、本当にすばらしいと思います。

    度々お邪魔致しました。
    赤ヒゲ

満足度データ

男はつらいよ
100点
35人(31%) 
90点
18人(16%) 
80点
26人(23%) 
70点
10人(9%) 
60点
12人(10%) 
50点
2人(1%) 
40点
1人(0%) 
30点
0人(0%) 
20点
0人(0%) 
10点
6人(5%) 
0点
1人(0%) 
採点者数
111人
レビュー者数
28
満足度平均
79
レビュー者満足度平均
77
ファン
16人
観たい人
37人

 

返信を投稿

名前 ※ニックネーム可
メール ※表示されません
見だし
内容
※ネタばれ、個人・作品に対する誹謗中傷はご遠慮下さい。
※ネタばれや質問などは掲示板
オプション この作品のお知らせメールを受け取る(返信をお届けします)
レビューを初心者モードで投稿する



掲載情報の著作権は提供元企業などに帰属します。
Copyright©2018 PIA Corporation. All rights reserved.

Myページ

ログイン

はじめての方はこちらから

新規ユーザー登録
ぴあ映画生活 facebook公式ページ
ニコニコ生放送 週刊ぴあ映画生活


 

この映画のファン

  • リュウ、
  • こっぺぱん
  • はに丸
  • タランって〜の
  • シャトル
  • yniold
  • けい花花
  • 桂日之石
  • ketchup
  • 赤ヒゲ
  • てぃーたん
  • 出木杉のびた
  • まんぼ
  • じょ〜い小川
  • ツィトローネ

 

ユーザ登録をするとこの映画のファンに加わることができます

関連動画

関連動画がありません

関連DVD

男はつらいよ〈シリーズ第1作〉 [DVD]

  • 定価:4104円(税込)
  • 価格:3591円(税込)
  • OFF:513円(12%)

第1作 男はつらいよ HDリマスター版 [DVD]

  • 定価:3990円(税込)
  • 価格:3591円(税込)
  • OFF:399円(10%)
『リメンバー・ミー』日本版無料特別上映会ご招待!
世界を震撼させた衝撃作が日本上陸!
『星くず兄弟の新たな伝説』のココがロック!
本年度オスカー最有力作品! キャストの熱演と緻密な脚本が生み出した濃密な人間ドラマ『スリー・ビルボード』ほかチリの俊英が放つ『ナチュラルウーマン』など話題作続々更新中! 映画論評・批評の新コーナー
新作続々、公開中!マーベル・コミック映画ニュースまとめ
ぴあ Movie Special 2018 Winter ぴあ映画特別号 冬号登場! 冬の話題作の特集や最新情報がいっぱい! ご招待も大量放出!

クチコミ満足度ランキング

初日満足度 観客動員数 DVDレンタル

満足度 投稿数 観たい ファン

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』まとめ
スーパーヒーロー、遂に終結!DCコミック映画まとめ