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映画情報のぴあ映画生活 > 作品 > オーストラリア〈2009年〉 > 感想・評価 > むしろ"not America"。

むしろ"not America"。

80点 2009/3/2 7:53 by olddog

オーストラリア〈2009年〉

全ての表現媒体を一旦「通俗」のレベルに落とし込み、そこから普遍性を探るのがバズ・ラーマンがこれまで一貫して試みて来た事だった。彼は本作『オーストラリア』で、普遍性を獲得した"通俗"が、語り継がれる物語に昇華する過程そのものを描き出そうとした様だ。

キャトル・ドライブにスタンピードに日本軍との闘い。荒くれ男と上流階級の貴婦人のハーレクイン的な恋愛模様。キプリングが葬られ、"道を拓く者"がその後を引き受ける。タイトルを知らず、漫然と映像だけを追いかけていれば、観客は本作をアメリカ映画だと思ってしまうかも知れない。ラーマンは明らかに、(これまで"ダンス"や"文学"や"歌謡曲"を用いた時と同様に、)今回は"ハリウッド娯楽映画の典型"に財を採り、それらを解体・再配置する事で"アメリカ"からの解放を目指している。

それはしかし、それらの典型的モチーフを「アメリカ」から解放する事には成功したが、同時に今度はそれらを「オーストラリア」に閉じ込める事でもあった様だ。本作の基底に「土地に根ざす者と土地を貪る者の争い」という主題がある以上、特定の土地に縛られてしまう事は必然であったのかも知れない。

ともあれ本作は、今ではハリウッドでさえ避けて通る様になってしまった"王道"を堂々と進み、同時に21世紀の映画には不可欠の、歴史に対する冷静な視点をも確保した、腰の座った娯楽映画としてはきちんと完結している。少なくともこれまでのバズ・ラーマン監督作品と同様、"通俗"の賞揚と再評価に関しては、間違いなく成功していると言えるだろう。

 

16人がこのレビューに共感したと評価しています。
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  • 的確なレビューですね。

    2009/3/13 9:36 by odyss

    冷静さを欠く書き込みが多いなかにあって、この映画の娯楽性と通俗性を見すえ、その意味をきちんと評価したレビューに敬意を表します。

  • Re: むしろ"not America"。

    2009/3/13 12:01 by 神様のルール

    olddogさん、こんにちは。

    >全ての表現媒体を一旦「通俗」のレベルに落とし込み、そこから普遍性を探るのがバズ・ラーマンがこれまで一貫して試みて来た事だった。彼は本作『オーストラリア』で、普遍性を獲得した"通俗"が、語り継がれる物語に昇華する過程そのものを描き出そうとした様だ。


    私のボキャブラリの無さが悪いのですが、正直レビューされている内容が私自身理解出来ずにおり困っています。。(すいません)

    もしお時間があるようならば、もっと噛み砕いてわかりやすく説明して頂けると大変有難いです。もちろん宜しければです。

  • Re: むしろ"not America"。

    2009/3/14 18:03 by olddog

    odyssさん、こんにちは。

    私自身もオーストリア政府の対応や漏れ聞こえて来る世論には眉をしかめる事もありますが、日本国民がそうであると同様、"オーストラリア"という一個の意識体がある訳でもなく、その内実は様々な思想信条の集合体である筈です。
    そうした多面的な存在を一絡げにして取り扱う事の無意味さもまた、この映画が描こうとした主題のひとつであった様に思います。

    『裸足の1500マイル』のご紹介、ありがとう御座いました。探して見てみようと思います。

  • Re: むしろ"not America"。

    2009/3/14 18:07 by olddog

    「神様のルール」さん、こんにちは。

    簡単な事を回りくどい言い方で勿体ぶるのは私の悪い癖です。申し訳ありません。

    バズ・ラーマンという監督は、『ダンシング・ヒーロー』で日本に紹介された時からずっと、"通俗娯楽"と呼ばれるものに一定の価値を見出し、称揚しようとしてきた人です。

    堅苦しい社交ダンスの世界を土着の民族舞踏のステップが"塗り替えていく"スペクタクルを見せてくれた『ダンシング・ヒーロー』、一般的には高尚なものとされているシェイクスピア悲劇を暴力団抗争の枠組に持ち込み、原典の持つエンタテインメント性を再評価してみせた『ロミオ&ジュリエット』、『ムーラン・ルージュ』では、パリの有名なキャバレーを舞台に、1980年代のポップスをちりばめた"大衆園芸だけで構成された"ミュージカルを見せてくれます。

    そうした一連の彼の作業は、私には、普通"低俗"とか"単純"という枕詞がついてくる通俗娯楽の中にある、観衆を楽しませ引き込んでしまうプリミティブな力を認め、それを再評価しようという試みに思えるのです。

    今回の『オーストラリア』もその延長線上にある、と私は思っています。今回彼が題材に選んだのは古典的ハリウッド活劇。キャプラやホークスが得意とした身分違いの恋を描いたメロドラマと、西部劇の古典『赤い河』『大いなる西武』に見られるプロットやフロンティア礼参が特に顕著です。
    本家ハリウッドではもはや手垢のついたそうしたモチーフを、ラーマン監督は『オーストラリア』において再度取り上げ、舞台を地球の反対側に移しても成立する事を確認してみせた様に思います。

    ただ延長線上にあるといっても、今回ラーマン監督には、これまでの諸作に見られた様な「モチーフへの耽溺」がありません。
    過剰な程にダンスやショーマンシップや強弱五歩格の素晴らしさを謳い上げて見せたこれまでと違い、あくまでプロットはプロットとして、モチーフはモチーフとして使われるのみ。そしてそれらは、あくまでも主題である「入植者と原住者が、如何にして大地を共有するに至ったか」に奉仕する為に配されています。

    ラーマン監督にとって、通俗娯楽の再評価は既に終えてしまった仕事、という事なのかもしれません。通俗娯楽の大半は飽きられ陳腐化し、時代の節目とともに消えていくのが宿命ですが、時折それらの中から時代を超えた普遍性を持ち得た作品も登場します。(劇中言及される『オズの魔法使い』もそのひとつでしょう。)通俗娯楽としての自作においてその様な普遍性を獲得する事が、今回ラーマン監督が目指したささやかな野心だった様に思うのです。

  • 報告とお礼に参上しました。

    2011/1/20 23:22 by 未登録ユーザ 間借り人ヤマ

    olddogさん、こんにちは。

    本日付けの拙サイトの更新で、こちらのレビューを、例の直リンクに拝借したので、報告とお礼に参上しました。↓
    ttp://www7b.biglobe.ne.jp/~magarinin/2009/07.htm

    >普遍性を獲得した"通俗"が、語り継がれる物語に昇華する過程そのものを描き出そうとした様だ。

    というのは、まさしくそのとおりだと思います。
    過日、拝借した『ラブリー・ボーン』のピーター・ジャクソンにも言えることのように感じますが、バズ・ラーマンのほうがもっと顕著な気がしますね。

    どうもありがとうございました。

満足度データ

オーストラリア〈2009年〉
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採点者数
210人
レビュー者数
71
満足度平均
61
レビュー者満足度平均
58
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