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人間らしさとは・・・

90点 2012/9/6 0:59 by aakurara

上海生まれ・上海育ちの英国人オボッチャマである主人公の少年ジェイミー(=ジム)は、大東亜戦争勃発の混乱時に両親と生き別れ、日本軍の収容所体験でたくましく「サヴァイヴ」する術を身につけてゆき・・・というようなお話ですが、このジェイミー(ジム)くんは、物語の中で一貫して「人間らしさ」を失わない。では、彼の「人間らしさ」の「核」とはなんだったのでしょうか・・・

その一。食事。
両親も召使いもいなくなってしまって、ジェイミーくんが食堂で一人食事をとっているシーンがありました。食べているのは、缶詰などの保存食品なのですが、さいしょのうちは、ちゃんとお皿にあけて、ナイフとフォークを使って上品に食べている。(子どもらしく、スプーンで遊んだりもしてましたが。)それが、食料がなくなってくると、だんだんと「動物的」にあるものをとにかく貪るような食べ方になっていき、収容所では米に混じったゾウムシも平気で口に入れるまでに・・・
こうした変化にも関わらず、ジェイミーくんが「人間らしさ」をもち続けたことを考えますと、食事のマナーだとか、食にたいする文化的な「嫌悪」の感覚とか、そういったものは「人間らしさ」の本質ではない、ということになります。

その二。アイデンティティ。
ジョン・マルコヴィッチさん演ずるゴロツキ米国人のベイシーと出会ったジェイミーは、新しく「上海・ジム」という名前を与えられ、次第にゴロツキの生き方に適応してゆくようになります。収容所では、すっかり「アメリカ人化」もしています。
そして、終盤のアメリカ軍機による爆撃のシーンでは、「両親の顔を忘れてしまった」とも口にする・・・「裕福な」「イギリス人の」「両親の息子」であるというアイデンティティーを、すべて喪失してしまうわけです。
でも、やっぱりだからといって「人間らしさ」まで失うわけではない。

その三。生存か文化か。
あのスタジアムのシーン。そこには、租界から持ち去られた家具やら自動車やらがずらっと集められていて、移動中の捕虜たちが「西洋文化」に再会するという象徴的な場面です。
しかし、そこには「食べ物」がない。「生命」の働きがほとんど止んでしまった「文化の結晶」しかない(やはり、ここで原作者J・G・バラードの『結晶世界』のことが思い起こされます)。ということで、みなは「生存」のためにそこを後にして移動を続けます。ジム(ジェイミー)と、ビクター夫人を除いて。
これは、ふたりが「生存」よりも、あの「西洋文化の結晶」のただ中で自らも結晶化するのを選ぶ、ということにほかなりません。
しかし翌朝、彼はある「光」を眼にすることで、「文化の結晶」の世界を立ち去って再び歩き出すことを決める・・・

その四。物的豊かさの文化。
再度歩きはじめたジムのもとに、文字通り降り注いでくるのは、アメリカ軍が上空から投下する食料品のカプセルです。このカプセルは、「物の豊かさ」がすなわち「文化」となっている、アメリカという国の象徴になっています。
ジムは、これによって「生命」をつなぐわけですが、そこで飛行機好きという共通点によって仲良くなった日本人の少年兵と、そしてベイシーとも再会する。このあたりのことは詳しく書くとネタバレになるので簡便にすませますが、このときにジムが選択するのは、「アメリカを拒否する」ということです。
久しぶりに手にする、ハーシーのチョコレートバー・・・そこには、「人間らしさ」というものは宿っていない。

その五。憧れと郷愁。
以上のことから、ジェイミー(ジム)がもち続けた「人間らしさ」の本質は、文化でもアイデンティティでも物的豊かさでもなく、なにか別のものなのだということになります。
では、それはなにかというと、彼が飛行機にたいして抱き続ける「憧れ」、そしてもはや顔も忘れてしまったが、かつて自分を愛情で包んでくれていた両親にたいする「郷愁」以外のものではありません。
この「憧れ」と「郷愁」は、それぞれ「飛行機」と「うた」によって象徴され、戦争における敵味方のあいだにある壁をものりこえ、双方の魂を繋ぐ・・・

 

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