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スピルバーグの異色作

80点 2012/2/26 17:40 by odyss

ここでの評価がイマイチなのが残念です。私も最近DVDで初めて見たのですが、スピルバーグの映画としては結構よくできていると思いました。原作はJ・G・バラードで、そちらは未読ですが、バラードも英国人でありながら上海の租界で生まれているので、そうした体験が濃厚に反映している作品と思われます。

まず、歴史的な考証からだけこの映画を「不正確」とするのはいささか的外れではないでしょうか。戦争映画にはたいてい史的考証面からはおかしなところがあるもの。問題は、その不正確さが作品の本質に関わるのか、作品の出来栄えにとって致命的であるのか、ということでしょう。そこから考えるなら、この映画は英国人でありながら上海で生まれ育ち、文字どおり日の出の勢いでアジアを席巻していた太陽の帝国、つまり日本に憧れを抱きながら育つ少年を描いているのであり、ゼロ戦があの時代の中国を飛んでいたかどうかという事実関係はさして重要な要素ではないと分かるはずです。

すなわち、この映画は異国で育った裕福な少年が、その奇想や趣味性を捨てずに混乱の時代を行く抜いていくという物語なのであり、戦争を写実的に描こうとした作品ではないのです。

この映画には戦闘シーンはあまり多くありませんし、また戦闘シーンの派手さで売る作品でもない。そういう意味では戦争映画ではなく、戦争に翻弄される時代と人々を描いた映画と言うべきでしょう。裕福な西洋人として上海租界に生活していた少年が、日米戦争の勃発によって混乱の中に投げ出され、両親と生き別れになる。いったん両親の家に戻りますが、そこで(昨日まではアゴでこきつかっていた)中国人の使用人に邪険にされるところに、価値の転倒が見事に表現されています。そのあとはオリバー・ツイストさながらにならず者たちに引き回されるようにして生きていく。そこにも世界秩序が英国中心から米国中心へと移り変わっていく時代の変遷がさりげなく盛り込まれています。少年は最後にはアメリカ人的な格好をするのですし、米軍が投下した食料に歓喜するのです。

また、この映画は反日映画ではありません。たしかに日本の軍人が西洋人の捕虜を虐待するシーンもありますが、それはそれほどひどくしつこく描かれてはいない。ゼロ戦は主人公の少年にとっては憧れの戦闘機だし、戦況が悪化して日本の軍人が特攻隊として出陣するときに「海行かば」を歌うと、少年は西洋の聖歌を歌うのですが、このシーンは日本人が命をかけて出陣するときに歌う日本の歌と、西洋の聖歌とが同じ精神によってできていると暗示する箇所ではないでしょうか。

さらに、主人公の英国少年と日本の男の子の友情も描かれており、ここからしても映画の趣旨が反日にないことは明らかでしょう。最後の原爆にしても、それが美しく描かれるのは、原爆を讃えるためではなく、むしろ太陽の帝国(=日本)の滅びを美しく演出するという、いわば三島由紀夫的な美学の産物ではないかと思えるのです。(原作がJ・G・バラードという特異なSF作家であることをここで思い出しておくべきでしょう。)

つまり、この映画を単に戦争時代の中国大陸やそこに生息していた西洋人や日本軍人を描いた作品とだけ捉えるのは誤りです。リアリズムだけで見てはいけないのです。この映画にあっては様々な描写や出来事は少年の目というフィルターを通して映像となっているのであって、そのフィルターこそがこの映画の本質なのです。少年は少年であるがゆえに事実の裏づけを知らない。しかしそうであるが故の奇想や想像力にはそれなりの美しさや魅力がある。そこを味わえるかどうかが、本作評価の鍵でありましょう。

 

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満足度データ

太陽の帝国
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3人(3%) 
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採点者数
82人
レビュー者数
19
満足度平均
61
レビュー者満足度平均
58
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6人
観たい人
28人

 

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