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国粋学生劇団

50点 2008/2/7 20:16 by アキラ

ラスト、コーション

支那事変。日本軍が蒋介石を追って大陸を南下し続けていた頃のお話。抗日運動を弾圧する政府関係者を始末するべく集まった香港のナショナリストな演劇部の学生達。その中でも演技の才能が最も優秀だったヒロインがスパイ役を買って出る。誘い出して殺すという幼稚で単純な計画であったはずが次第に本格的な政治活動に巻き込まれて深みにはまる。この手の官能サスペンスって人物設定に結構トリッキーな仕掛けがしてある作品が多いけれど、この作品の場合は驚くほど裏がありませんでした。思想面で悪役との関係が変化する事はなく、そこに起る変化は思想を越えた男と女としての関係の変化だけ。心を開くのはほんの一部。狡猾で用心深い相手との駆け引きだからこその緊張感が続きます。この作品での濡れ場は、まるでアクションサスペンスでの格闘。下半身が惚れた腫れたの精神的イニシアチヴを巡る肉弾戦。

前作の空白に感じたのは『推手』に似た孤独感だったが、今作の空白に感じたのは『アイスストーム』に似た幼い情欲。自分を掴めないまま翻弄され曖昧な価値観が過ちを招く。所在ない人物像はアンリーならでは。独特の居心地の悪さがあります。プロの諜報組織の信念ではなく学生の幼い仲間意識の延長に非情な駆け引きを描いてるって所が目を背けたくなるほど痛々しい。もし国粋演出家と組まずにイプセンをやっていれば輝かしい未来が待っていたかもしれないのに。彼女はノラのように自我を持つ事はできない。抗日への曖昧な思想もどきに流され抱かれた男の温もりに負けてしまう。もし抱かれても夫人ではない事を悟られないよう処女を捨てるシーンは特にその愚かしさが際立つ。後味の悪さは請合い。

 

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  • Re: 国粋学生劇団

    2008/3/23 17:22 by 黄水仙

    アキラさん

    こんにちは。はじめて返信します。

    > もし抱かれても夫人ではない事を悟られないよう処女を捨てるシーンは特にその愚かしさが際立つ。

    その通りだと思います。しかし反対に、彼女らはおっしゃるとおり「処女」は「捨てる」ものだとしか考えていない、否、大義と比較して「処女」の価値は低いものであるとの共通認識に立ってしまっています。それが「価値」という言葉になじむのか、わたしには疑問ですが。また、それがその大義を大切にする時代であるからか、或いは他の理由があるからであるかは、一概には言えませんが。『4ヶ月、3週間と2日』でのルームメートが闇医者に抱かれたことを思い出し、(この場合は処女ではなかったにせよ)ため息が出ました...。

  • Re: 国粋学生劇団

    2008/3/23 18:22 by じょりちょこ

    彼女は中華民国の再生のために身を捧げる覚悟の人物です。当時の改革派・革命派は儒教を排撃しており、儒教的な家庭観・女性観を否定していました。
    儒教は子は親に従い、妻は夫に従うべき、という価値観を説き、この家庭関係を国家と国民の関係に敷衍していくことによって国家秩序を維持しようとしてきました。辛亥革命で皇帝専制を打破し、儒教を否定して見せた中華民国は女性解放にも乗り出し纒足を廃止させました。
    この彼女は、当時にあってもっとも「進歩的」な女性でしょうから、処女を大事にする意識は(少なくとも理性では)唾棄すべきものと考えていただろうと思います。

    ...とはいえ、内面はそこまで単純ではないわけで、そこでこのようなドラマが成立するのだと思います。

  • 自己チュー世代として

    2008/4/7 19:36 by アキラ

    こんばんは

    私は筆無精なので普段は質問されないとあまり返事を返さない怠け者ですが、最近ティーンやF1層の分析に関わる仕事をして、この作品を思い起こす機会があったので少しばかり補足させていただきます。辛亥革命後、国民党政権の中国には多くの女性映画があり当時活躍していた監督の作品をあげただけでもチャンシーチャンの『化粧品売り場』からスンユイの『スポーツの女王』、ウーヨウガンの『女神』、ツァイチューションの『新女性』と女性の人権を訴える作品は多いのですが、女性映画の話題で私が好んで引き合いに出すのはもっと最近のイスラエル映画アモスギタイの『カドッシュ』です。地方の封建的集落を舞台に恋愛結婚できない少女と種無しの夫を持った女性が戒律に抵抗する様が描かれているのだけど、私がショックを受けたのは”女性はセックスに快楽を求めてはいけない”という男尊女卑のコミュニティなら世界中何処でも内在していたであろう戒律への抵抗も描いているという点でした。フェミニズムが浸透する以前の一般的な夫婦の営みは『カラーパープル』みたいに乗るだけのセックスが一般的だったのでしょう。『女性上位時代』みたいな欲求は貞操の崩壊と堕落を招く。でも女性の性的暴走と性的解放は違います。この女性がとった抵抗手段は夫以外の男性と姦通するという方法ではありません。彼女は夫が嫌いな訳ではなく戒律に矛盾を感じているからです。自分が気持ち良いやり方で夫に抱かれる。それがこの女性の最期の抵抗でした。エッチする時にはお互いに相手が気持ち良い所を探り合うって常識でセックスしてる我々には想像がつき難いかもしれないが、亭主関白みたいな美徳も合理的な幸福追求だと認めている私でもそんな本能的な部分まで封じてしまう戒律のあり方はかなり残酷に感じられました。ただ彼女の行動には個人的経験に裏打ちされた思想があります。それに対しこの作品の主人公は時代の風潮に流された学生たちの思想活動もどきに巻き込まれただけでヒロイン自身の思想性は地盤が固まっていません。

    最初の密会でトニーレオンが夫人の手を縛ったのはその場での夫人に対する警戒心からだけでしょうか。私には彼は相手の気持ち良い所を探っているように見えたのです。スリルを求める人妻ならば少し強引なのが好みかもしれないと。その後の48手も相手のセックスの癖を探り弱い所を掴もうとしているように見えます。彼が怪訝な表情を浮かべるのは、いくら探しても相手のツボがハッキリしないから。相手のセックスの好みが分からなければ性的な魅力で相手を引き止められないのではないかって不安に付きまとわれるのは男の性。でも分かる訳がない。相手は即席人妻。西洋的な恋愛も流入していた香港の人間ですらない。古の戒律が残る大陸の育ち。その上、義務でしかセックスをした事がないのだから自分が何を求めてるのかなんて考えも及ばない。本人にだって自分の気持ち良い所は分らない。元カレの性癖までフランクに語れる時代じゃないから夫の性癖を聞かれても答えられない程度しかセックスに関しての指導は受けていなかったのだろう。だが用心深い彼は身体で探りながら違和感を覚えています。そして夫人を演じる主人公は次第にディフェンスを下げる相手と何度も身体を重ねながらも自分は相手に心を開けない事にもどかしさを感じていたからあの言葉が出た。感情を通わせようとする相手に肉体を触発され続けて初めて表面化した彼女自身の欲求であり個の思想性。

    (↑”思想”の定義について私は『革命前夜』のレビューに書いたような見解を持っています)

    私は女性ではないので女性の物事の感じ方は分らないが、根本的な欲求は男性と同じと考えています。セックスするなら相手は自分で選びたいし、好きな人とだけドキドキワクワクしたいし気持ち良くなりたい。これはごく自然な欲求です。大義名分より感覚で相手を選びます。成り行きで振り回される間に自分の本当の気持ちに気付く事だってあります。これが最も自然なアイデンティティの育て方。こんな能天気な育ち方をした世代である私の感覚では貞操とは戒律ではなくもっと本能的な衝動に感じられるのです。いつも女房の悪口ばっかり云っていても、ずっと特定の相手だけと付き合い結婚した友人を誰よりも羨ましく思う事があります。むしろ多くの女性に種を残したいという不倫願望の方が幸せを追求する上では不自然に思えるのです。そういった幸福観からすると処女を捨てる事も貞操を守る事も感覚に正直に行う事こそ意識的に解放された女性の行動に思えるのです。でもこの価値観は全共斗時代を生きた親の世代に云わせるとエゴイスティックだそうです。

    ヤイコ(ジャイ子…じゃなくて矢井田瞳)のヒット曲の一節にこんな所があります。

    ビルも道路も世界もひと思いに壊れてもいい
    だってその方が貴方を見つけ易いでしょ
    神様はいない、だって祈ったもん
    想いが届きますようにって祈ったもん

    現在のティーンとF1への取材で出会った某ネットアイドルの女性がヤイコファンだったので聴いてみたのだけど正直ちょっと怖いと思いました。眼中にない恋人以外は消え去って構わないってヒステリックなまでのエゴイズムが広く共感を呼んでいると感じられたからです。街を歩いていたら周りの誰もが自分の恋人以外は消え去れと願っていると想像するとゾッとします。我々の世代も相当にエゴイスティックだが、次の世代には更に肥大化したエゴイズムを感じてしまうのです。そう考えると女性でも男性でも一概に人格が解放される事ばかりが先進なのか疑問が残ります。集団を形成する思いやりみたいな感情が消え失せつつあるのではないか。でも実際に語り合ってみると、他人への心遣いは消え失せたのではなく単に意識の仕方がズレているから冷たい面だけが見えていた事に気付きました。自分の分の範囲内で最大限に幸福を追求する生き方です。個人的に関わらない限りはそこからはみ出さないようにしているようです。私が全く国も世代も違う『アイスストーム』とこの作品に共通して感じた圧迫感は、その境目をちゃんと持てない事への息苦しさ。思想以前の本能の部分で居場所を獲得できない童心の心残り。個人の幸福追求や本能を公の思想よりも優先して考える傾向にある世代に近い私の場合はその部分に最もナーヴァスに反応してしまうようです。

満足度データ

ラスト、コーション
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採点者数
204人
レビュー者数
60
満足度平均
73
レビュー者満足度平均
76
ファン
36人
観たい人
105人

 

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