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映画こそ天国

100点 2016/2/26 16:38 by レビュアンローズ

ニュー・シネマ・パラダイス

過去のイタリア映画からの印象なのだが、イタリア人は基本的に「マンマミ〜ア」で母系中心の家族体系で、ほんとに家族を大事にする。
しかしこの映画の場合、母親は主人公の「トト少年」を叱り、彼の望む場所「アルフレード」から引きはがそうとする力として存在し、「トト」は母から逃れよう逃れようとする。

また、この「トト」は父親がいない。第二次世界大戦で戦死してしまったのだ。
その代りアルフレードという村の映画館の映写技師が、「トト」を人間的に育てる。彼「アルフレード」は、しかし父ではない。

トトの母から拒否されている所から見ても、「トト」が「アルフレード」に対して異常に執着し、本来の親子にあるべき精神的な離反が見えないところから見ても、別の関係性を持って物語に登場しているのだと思う。

その役割がはっきりするのは、物語の中盤である。
彼は映画フィルムが焼失する場で、失明する。
この喪失の共時性は、彼が映画の擬人化された象徴である事を意味するように思われる。

そう考えた時、「トト」は映画という幻影に育てられた存在だと語られている。
同時に、母が息子を「映画=アルフレード」から引きはがそうとする理由も理解できる。

母親には分かっていたのだ、現実を生きない者は不幸になる事を・・・・

あまりに美しく、完璧な世界を目にしたとき、それが幻影だとしても・・・・愛し執着してしまう事を。
そしてまた、美しい幻影に生きてしまえば・・・・現実世界が醜く、猥雑で、嫌悪すべき場所に思えてくる。

なるほど現実は生きられねばなるまい・・・・・・しかし生きるのが困難なのが現実でもある。
トト少年は父の不在という辛い現実を、「映画」を「父」として生き抜いたのだ。
もし現実に適合できなかったならば、それは「親=映画」の責任に違いない。

こう見てくれば、青年、成人となった「トト少年」の現実世界の不幸は、「幻影」に依存してきた者の当然の帰結であったかもしれない。
そして現実世界に絶望した「成人トト」は、「美しき幻影=映画」の中で生きざるを得ない。
「トト」は「映画監督」として成功した、それは映画文脈の上から追って行けば、「現実世界不適合」を意味するだろう。

結局、この映画で語られる「虚構世界と現実世界の対立」は、現実を生きなければならない人間にとって、常に「現実世界」の勝利で終わるという自明の結論に至らざるを得ない。

しかし ―

監督ジュゼッペ・トルナトーレは、この映画の最後=ラストシーンで言う。
自らも幻影に育てられた一人として。
無限の慈しみを持って、郷愁とともに、「トト少年」が如何に幸せで、豊穣で、歓喜に満ちていたか。
目くるめく幻影イマージュの内にある事がどれほど幸福であったかを。

そして私は思う ―

それらの美しきイマージュ達こそ、自分自身に他ならないことを。
どんなに現実が苦しいものになっても、自らを創っているイマージュに殉ずる運命にあることを。
そしてその運命を引き受てでも、美しき幻影たちとともに生き続ける価値が在ると、この映画は教えてくれる。

このラストを見れば映画を愛する者なら、やはりこういわざるを得ないだろう・・・・・

シネマ=映画とは、パラディソ=天国。


*ブログもやってますm(_ _)m <リンクURL>

 

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