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この映画から見えてくること

80点 2018/3/31 15:11 by odyss

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書

実話による映画。
ヴェトナム戦争中、この戦争に関する秘密文書をアメリカの代表的な高級紙ニューヨーク・タイムズがすっぱ抜きます。とりあえず政府側からの裁判所への訴えが認められて記事は途中で差し止めになるのですが、引き続きワシントン・ポスト紙が同じ情報源によって報道を続け、ニクソン政権に大打撃を与えました。本作品は、そのワシントン・ポスト紙の内幕を中心にして描いています。

今でこそワシントン・ポスト紙はニューヨーク・タイムズ紙と並ぶアメリカの代表的高級紙ですが、当時はまだ首都ワシントンの地方紙というランクに甘んじていました。また、ちょうどこの報道の行われる少し前に社長が死去し、未亡人がその後を引き継ぐという、経営上の問題も抱えていました。新社長になったとはいえ、彼女はそれまでは一介の主婦でしかなかったのですから、仕事上の苦労は相当なものだったはず。

ヴェトナム戦争関係の政府極秘文書を報道するまでの経緯や報道機関内部の意見の相違などはこの映画を見れば分かることですからいちいち書きませんが、新聞の記事はこういうふうな複雑な事情や様々な配慮をへた末に作られるものだということは、知っておくべきでしょう。むろん政府批判があり得るようにマスコミ批判もあり得るわけですけれど、知った上での批判と、何も知らずにマスゴミと言えば自分が偉いと勘違いしている某ユーザーのようないちゃもんとは、全然別次元のことですから。

この映画を見て私がいちばん驚いたのは、社主(メリル・ストリープ)や編集主幹(トム・ハンクス)が歴代の大統領や当時のマクナマラ国防長官と親しく交際していたという事実です。政治家や政府高官からすれば、新聞記者や社主と仲良くすることの意味ははっきりしています。要するに自分を好意的に報道してもらいたいから。
アメリカの新聞関係者はそういう側面に警戒感を抱かなかったのでしょうか。本作品では、無論と言うべきか、新聞関係者は最終的には個人的な友情よりも正しい報道を選ぶのですが、率直に言って、「新聞を仕事にするなら、最初から政治家や政府高官との交際には慎重であるべきじゃないか」と思いました。

それと、政府の秘密を暴くことの是非もあります。この映画ではその辺の議論が十分であるとは言えない。この場合は、長らく続いたヴェトナム戦争で国民に秘密にされていた部分があったということで、秘密をあばいた報道側が正当であるという観客の意識が作られるようにできています。

しかし、よく考えてみると、戦争中に利敵行為をやることは、本来的には非国民と呼ばれるに値する行動なのです。例えば、第二次世界大戦で英国の軍事的秘密をヒトラーに売り渡した人間がいたらどうだったか、考えてみれば一目瞭然でしょう。
と書くと、第二次大戦で英国は正義、ヒトラーは悪だったと言う人もいるかも知れませんが、ヴェトナム戦争も、半分はヴェトナムの民族独立戦争でしたが、残る半分は資本主義・自由主義を掲げるアメリカと共産主義国家であるソ連&中国との代理戦争だったことを忘れてはなりません。アメリカがヴェトナム戦争から撤退して共産主義のヴェトナムが統一国家として成立しましたが、その直後にたくさんのボートピープル(難民)がヴェトナムを後にしました。この点については、例えば朝鮮戦争で仮に北朝鮮側が勝っていたらどうなっていたかを想像してみれば分かりやすいと思います。

戦争は、情報をオープンにしてやるべきものではない。敵を利さないためには必ず秘密の部分があるわけです。ただし、アメリカの歴代政権がヴェトナムやっていたことがアメリカ国民のためになったかはまた別の話です。「戦争で死にたくない。それも自国が攻められて始まった戦争ならともかく、遠いアジアの戦争になぜアメリカ人が行かなければならないのか」という素朴な疑問は打ち消しがたかっただろうと想像されます。

でも、よく考えれば、アメリカの戦争ってずっとそういうものだったんですよね。第一次世界大戦はヨーロッパ大戦で、本来ならアメリカは無関係だった。第二次世界大戦だってそうで、ヨーロッパ戦線と中国大陸の戦争だけなら、アメリカが加わる必然性は全然なかった。それが、ルーズヴェルト大統領とハル国務長官に締め上げられたため、日本は真珠湾攻撃により対米戦争を始めざるを得なくなった。それ以前のアメリカ世論は、圧倒的に戦争反対で、ルーズヴェルトだって大統領選では「若者を戦場に送ることはしない」と言っていたんですから。

この映画は、或る文脈に限定して作られており、その限りではよくできていると思います。点数もそういう観点で付けておきました。

でも、ちょっと考えてみるだけで、この映画には収まらない色々な問題が見えてくる、そんな作品でもあるのではないでしょうか。

 

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満足度データ

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書
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レビュー者数
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満足度平均
78
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