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映画の力
2018/1/8 8:12
by
出木杉のびた
120年前の映像というだけでも、大変貴重である。映画の父と呼ばれたリュミエール兄弟が、1985年から1905年の間に撮影した1422本(1本約50秒)の中から、108本を厳選してまとめたもの。有名な「列車の到着」などは、映画の歴史をひも解く番組などでは必ず登場する定番の作品だ。僕はこれまで、これらの作品はドキュメンタリーだとばかり思っていたら、演出があったと本作のナレーションで知った。「工場の出口」など、何パターンもあった。「水をかけられた散水夫」を見ると、いたずらした子供が叱られるのだが、わざわざカメラのポジションまで連れて来られてお尻を叩かれる。去り際の子供はカメラを見るので、本人も承知の上であることが確認できる。この作品には何とリメイクまであって、違うアングルで撮られているのも興味深い。
カメラは基本固定されているが、船の上や、列車の中からと思しき移動撮影も見られる。撮影はフランスだけに留まらず、世界各地に展開する。エジプトのピラミッドにスフィンクス、更には日本にまで来ていたからビックリ。
映写している最中の不注意から、フィルムの逆回転による映像が発明?されたという経緯も面白い。壊されたはずの塀が、再び出来上がっていく様を目にした当時の観客たちの驚きが目に見えるようだ。
フィルムに色をつけたカラー作品。踊っている最中の踊り子の衣装の色が、どんどん変化していく様子は、今見ていても面白い。
雪合戦の最中に、自転車の人が巻き込まれてしまうドタバタは、コメディのはしりか。時折映し出されるユニークな映像にはニンマリさせられる。
終盤、後退し続けるカメラと一緒に、アフリカ系の小さな子供がいつまでも走ってついてくる。その笑顔は本当に楽しそうで、観ているこちらも笑顔にしてくれる。これが映画の力なのだ。それから120年。今でも映画は我々に、笑顔と感動、そして衝撃を届け続けてくれている。
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