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昭和40年代前半の青春

80点 2018/3/11 18:14 by odyss

坂道のアポロン

傑作青春映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の三木孝浩監督が、同じく小松菜奈をヒロインとして青春映画を撮ったというので楽しみにしていました。

『ぼく明日』が時間軸の交錯というSF的な設定をキーにした青春映画だったとすれば、今回は昭和41〜43年という時代および佐世保という場所がキーになっていますね。

昭和41〜43年(1966〜68年)とは、東京オリンピックの数年後。日本は高度成長期のまっただ中。昭和20年代や30年代前半にはまだ珍しくなかった貧困も消えて、安定した暮らしができるようになっている。街なかの様子や走っているオート三輪など、時代考証がしっかりしていると思いました。

この時代の高校生というと、昭和22〜24年頃の生まれですね。いわゆる団塊の世代。同世代の人口がやたら多くて、高校進学が当たり前になってきていて、戦後的な価値観が浸透してきている世代。しかし映画の冒頭は1966年だから、60年安保は終わっているし、大学では学生運動は続いていたけれど、大学紛争のクライマックスは東大と東京教育大(現・筑波大)の入試が中止になった1968年ですから、少なくとも作品の最初の頃は大学内はやや落ち着いていた時期。

作中、ディーン・フジオカ演じる大学生が東京から故郷の佐世保に戻ってきているのも、そういう時期だったからかも知れません。それにしてもディーン・フジオカはかっこいいですね。知念侑李はもちろん、中川大志をも食っているかも。

次は佐世保という場所。地方都市ではあるけれど、米軍の軍艦が寄港する港町であり、欧米のモダンな文化が結構入ってきている。また、長崎県のことで、キリスト教の信者も多いよう。

こういう背景の中で、作中の高校生はジャズの演奏に入れあげていくわけです。

ジャズという音楽が当時持っていた意味も大切でしょう。
この映画では、文化祭で高校生のロックバンドが演奏するシーンがあります。ロックといっても英米のそれではなく、日本のグループサウンズの歌「ガールフレンド」。これはオックスが歌っていた曲です。ただし1968年の曲なので、映画では時間の流れがよく分からないのですが、文化祭の時点では最初のシーン(1966年)から2年がたっているということなのでしょう。ミリタリールックの服を着て歌うグループサウンズに多数の女の子たちがイカれていたのが当時の世相。
これに対して主人公たちはジャズをやっている。グループサウンズのロックが大衆性を持っていたのに対して、ジャズは大人の音楽というか、少数者の音楽、思想性や高い芸術性を持っていると捉えられていたのがあの時代。
つまり高校生がジャズをやるというのは、少数者の矜持でもあったわけです。その辺を押さえておかないと、彼らがジャズをやることの意味、そしてひいては彼らの持っている孤独な心情とジャズとの関わりが見えてきません。

ただ、かすかに違和感を覚えたのは、彼らの演奏シーンは多いけれど、ジャズミュージシャンの名や、海外ミュージシャンのレコードを聴くシーンが出てこないこと。ジャズ・ファンならサッチモやコルトレーンやマイルス・デイヴィスを熱く語ったり、彼らのディスクに夢中になったりするシーンは欠かせないと思うのですが。

あと、薫を演じる知念侑李は小柄で、小松菜奈よりもはっきり背丈が低いのにも違和感。中川大志との対照性でキャスティングしたのかも知れませんが、彼女が薫に惹かれて行くのを説得的に見せるには、もう少し外見的な見栄えも必要でしょう。

小松菜奈はあいかわらず魅力的。今回は水着姿を少し披露していたのもいい。準ヒロインの真野恵里菜もキレイでしたね。

難点もありますが、全体として質の高い青春ものに仕上がっていたと思います。ちょっとオマケしてこの点数。

 

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  • 訂正

    2018/3/12 8:30 by odyss

    > 大学では学生運動は続いていたけれど、大学紛争のクライマックスは東大と東京教育大(現・筑波大)の入試が中止になった1968年ですから、少なくとも作品の最初の頃は大学内はやや落ち着いていた時期。

    東大と東京教育大の入試の中止は、年度で言うと1968年ですが、年を越してからなので実年では1969年となります。
    以上、訂正します。

満足度データ

坂道のアポロン
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