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汚れた絆

100点 2017/9/25 22:06 by STAYGOLD

ユリゴコロ

まだホラサス大賞が在ったころ。

彼女の受賞作である「九月が永遠に続けば」は、創り手としては当然だが、目を通した。正直、ふーんとしか思わなかった。このレベルはゴロゴロいる。勝負は2作目以降を吐き出せるか、だ。1作目で大抵が死ぬ。彼女の娘が鉄鍋でコックを叩き殺した様に。受賞作以上の井戸が、源泉がないのだ。しかし、彼女は2作目以降も吐き出していた。つわりもひどかったろう。

毎年新しい「才能」が湧き出すので他に読まなきゃいけないモンが多く、正直スルーだったが、なるほど生きていたって事か。劇中のみつ子と同様に。

さて本作。
と言う事で、原作未読。今後も読む気もない。他に読まなきゃいけないモンが多いし1日が24時間じゃ何もできない。だが、その必要はない。

貴方の原作は映画作家と役者が、きちんと紡いでくれた。原作者としては、ほぼ、思いが伝わるデキなのでは無いかと思う。繰り返すが読む気は無い。映画で十分納得したから。そういう意味では、私は創り手失格かもしれない。だが、それでいい。笑ってくれても、馬鹿にしてくれても構わない。私も変わっている人間だからー

前置きが長くなってしまった。本作の良き点は2つに絞られる。

一つ。下手なホラーより、そそる恐怖の映像美だ。さすがホラサス生まれ。きちんと、ホンが恐怖の礼儀を踏襲している。その意味を映画作家たちが解して、的確に図にしている。前半の映像美と子役の姿は、「MOZU」の殺戮者の子供時代を彷彿させる。ミルク飲み人形を見つめるからっぽの黒い瞳は、今作の白眉だ。この子役、いい。

二つ。生活感だ。
どの図にも生き物の匂いがする。暗い穴に、ビオトープに住む小さな生き物たちを放り込む時も。哀しい生き様を寄せ合い汚い飯屋で食事を分け合う時も、殺風景なビルの部屋で躰を寄せ合う時も、川のそばの古い民家で幸せを確かめる時も、その生き方を過去から奪い取られる時も。生きている熱い血の流れに、忘れられない記憶に。生きている、生きるために。そう、あの時代の私たちには生きることが何より大切だった。この生っぽさが、日本の小説なのだ。かっこよく無い。汚らしくて泥臭い。それでいい。日本人が創る、物語なのだから。

吉高由里子も松山ケンイチもいい演技だ。汚れた絆を舐め合う哀しい姿に涙を堪えられなかった。あのころを生きた人間は誰でもそういう傷を飲み込んで笑って生きている。

子を成す。育て慈しむ。そして解き放つ。その痛みに、喜びに。

1984年。歌舞伎町で年を誤魔化して働いていた16歳に支えられて夢を叶えた腐った男もいる。16歳と18歳。子供も産めない二人。約束を守れず、3年後、彼女の故郷で嗚咽に包まれた黒い車を見送った、今が幸せであるほど、あの日の記憶が俺を苦しめる。失った宝物。狂おしい痛み。君の肝臓をたべたい。誰にだって秘密はあるー

ダメな部分も多い。私が一番好きなカオをしている松坂桃李だが、どう見てもドラマの「視覚探偵 日暮旅人」にしか見えない。キムタクと同じで芸は一つしかないか。彼以外にもう一人。私を虜にしている多部未華子が鎌倉で美しい手紙を書いていると言うのに。

あの水源でカプセルを飲むシーンと囚われの娼婦の救い方に疑問が残る。なぜあれを飲んで血を吐かないのか、カプセルだからか。タイムラグか。またなぜ敵を始末できたのか。どうやったのか。釈然としない。特に敵はスジ者だ。この過ちに製作陣が気付かない訳がない。なにかの仕掛けか。

この映画は観ない方がいい。
もし同じで痛みを持っていたら、苦しくて耐えられないと思うから。でも、それでも立ち向かうと言うのなら。その勇気があるのなら、ぜひ観て欲しい。ズタボロで汚らしくて、でも何よりも美しい愛の形を。全ての終わりの場面を見た時。貴方は何を感じるのだろうか。

※2017/9/23 TOHOシネマズ南大沢 SCREEN6にて。

 

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満足度データ

ユリゴコロ
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採点者数
65人
レビュー者数
36
満足度平均
79
レビュー者満足度平均
84
ファン
10人
観たい人
49人

 

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