ただいまの掲載件数は タイトル56791件 口コミ 1118738件 劇場 585件

映画情報のぴあ映画生活 > 作品 > ラ・ラ・ランド > 感想・評価 > 夏のクラクション

夏のクラクション

100点 2017/2/27 20:55 by 出木杉のびた

ラ・ラ・ランド

全編に亘り映画愛溢れる作品で、過去作に対するリスペクトが半端ない。32歳の若きデイミアン・チャゼル監督が、どれだけ映画を観込んでいたのか計り知れない。その演出力は前作『セッション』で証明済みだが、本作では同じく音楽をモチーフに、ミュージカルという味付けで、更に観客を楽しませようとする意気込みが伝わってくる。往年のハリウッド・ミュージカルだけでなく、『ロシュフォールの恋人たち』の音楽やダンス・シーンを盛り込み、『シェルブールの雨傘』を思わせるような切なさも秘められたいいとこどりで、これまた傑作である。

渋滞の道路から始まるダンス・シークエンス。音楽映画はやはり楽曲が命だが、そのメロディは素晴らしく聴き入らずにはいられない。踊りの輪が広がり楽しいミュージカルが始まる。色とりどりの衣装のダンサーたちを捉える、ワンカットのカメラ・ワークもお見事。強いて不満を述べるなら、車の色ももう少しカラフルにして欲しかったところ。

マジックアワーでの撮影が多く、全体的にやや薄暗いイメージもあるが、それは物語全体を俯瞰して見るならば、そのトーンは相応しかったことに思い当たる。これは夢のような楽しいミュージカルではあるものの、ビターで切ないラブ&サクセス・ストーリーなのだ。

ミア役のエマ・ストーンが最高に魅力的だ。青、赤、黄、緑と、時と場所が替わる度に原色の衣装に次々と着替え、そのどれもが美しく映える。彼女の表情の表現力が実に豊かで、分かり易く感情移入がし易い。女優を目指すミアのオーディション・シーンでは、ほとんどがエマの正面からのバスト・ショットの一人芝居。彼女の大きな目から、セリフ以上に雄弁に感情が伝わってくる。演技を邪魔された時の芝居の、戸惑い感も半端ない。見事と唸らされることしばし。彼女の衣装は終盤黒とシックになる。そしてあり得たかも知れない、もう一つの可能性での白との対比が鮮やか。

この終盤の脚本・演出力には脱帽。一体どういうことなのか、観客は希望と不安の入り混じった複雑な心境で最後まで心落ち着かない。このザワザワ感が、観ていて堪らなかった。途中、『カサブランカ』の話が出てくる。終盤セバスチャン(ライアン・ゴズリング)はきっと、ボギーのあの名セリフを言いたい気持ちだったことだろう。彼の弾く、ピアノのメロディがまた甘く切なく胸に響く。

冬から冬までの物語。二人の出逢いは最悪で、渋滞時のイライラから、セバスチャンは煩くクラクションを鳴らす。デートのお迎えもまた、近所迷惑なクラクション。迷惑が喜びに替わるのが、恋の魔法。しかし、夢からは目覚め、いつしか魔法も効かなくなるのが現実。二人にはそれぞれ夢がある。何かを得るためには、何かを失わなければならないのか。辛い決断はあっさりと省いてしまう時間の経緯かが潔い。そこに何があったのかは、観客に委ねられるが、大体想像はつく。

女優志願のミアの部屋の、イングリッド・バーグマン。建物に描かれた映画俳優たちの壁画。『理由なき反抗』のグリフィス天文台。映画館でフィルムが燃えてしまうトラブル…。映画ファンの心をくすぐる数々のメッセージに、懐かしさも相俟って切ない気持ちが増幅されて遣る瀬ない。ミュージカル映画とすれば、その楽曲やシーンは確かに少ない。その分、ドラマが重視されている。映画をたくさん観ている人ほど、心に触れるものが多いのは確か。そういった意味では、映画ファンのための映画。一般観客に、どれほどその思いが伝わるかだけが、心配である。

 

2人がこのレビューに共感したと評価しています。
ユーザー登録すると、レビューを評価できるようになります。

  • Re: 夏のクラクション

    2017/2/27 23:08 by みかずき

    こんばんは。のびたさん。
    みかずきです。

    ミュージカルって、あまり観ないのですが、
    前評判が良かったので鑑賞しました。
    ファンタージーとリアリティを巧みに融合した力感あふれる、元気を貰える作品でした。
    パンチの効いた音楽、躍動感溢れるダンスも良かったです。夢を掴み取るということは、もう一つの夢を諦めることという切ない展開で大人の映画という感じがしました。
    アカデミー賞大本命とうのも頷ける作品でした。

    そして、今日は、アカデミー賞発表日。
    あんなことってあるんですね。
    作品賞の誤発表には驚きました。

    本作は主演女優賞、作品賞、監督賞は固いと思っていましたが、作品賞はムーンライトでした。
    アメリカ映画の層の厚さを実感しました。

    無性にムーンライトが観たくなりました。

    失礼しました。

  • Re: 夏のクラクション

    2017/2/28 6:19 by 出木杉のびた

    みかずきさん、おはようございます。

    誤発表には唖然でしたね。もう誰もがアカデミー作品賞は確実と見ていただけに、ショックも倍増です。トランプが大統領になったことを思わせるような大番狂わせ。しかし、やはり『ムーンライト』の期待値が上がります。

    僕はミュージカル映画は楽しくて大好きなので、久々に劇場で観られることが嬉しくて堪りませんでした。しかし、ドラマ重視で、それもまた良かったかも知れません。終盤はビターでありましたが、その見せ方の演出力は、正に監督賞受賞に相応しい力量だと思いました。

満足度データ

ラ・ラ・ランド
100点
54人(16%) 
90点
103人(30%) 
80点
80人(23%) 
70点
55人(16%) 
60点
16人(4%) 
50点
13人(3%) 
40点
8人(2%) 
30点
2人(0%) 
20点
3人(0%) 
10点
0人(0%) 
0点
0人(0%) 
採点者数
334人
レビュー者数
181
満足度平均
81
レビュー者満足度平均
83
満足度ランキング
6位
ファン
39人
観たい人
174人

 

返信を投稿

名前 ※ニックネーム可
メール ※表示されません
見だし
内容
※ネタばれ、個人・作品に対する誹謗中傷はご遠慮下さい。
※ネタばれや質問などは掲示板
オプション この作品のお知らせメールを受け取る(返信をお届けします)
レビューを初心者モードで投稿する



掲載情報の著作権は提供元企業などに帰属します。
Copyright©2017 PIA Corporation. All rights reserved.

Myページ

ログイン

はじめての方はこちらから

新規ユーザー登録
ぴあ映画生活 facebook公式ページ
ニコニコ生放送 週刊ぴあ映画生活


上映情報

目黒 

他の地域

 

この映画のファン

  • すみこん
  • とけしたけし
  • 出木杉のびた
  • DDDDD
  • ぶりんじ
  • amicoco
  • みどりケロン
  • りんこ、
  • Stella
  • すかあふえいす
  • 男のこだわり
  • KERO
  • 萌吉
  • aochanchan
  • みかずき

 

ユーザ登録をするとこの映画のファンに加わることができます

関連動画

モルモット吉田、宇野維正、門間雄介がたっぷり語る!第39回 PFF特集
ぴあ Movie Special 2017 Autumn ぴあ映画特別号 秋号登場! 秋の話題作の特集や最新情報がいっぱい! ご招待も大量放出!
WOWOW『予兆 散歩する侵略者』特集
『エルネスト』<もうひとりのゲバラ>特集
サイン入りポスターほか豪華賞品が当たる! 『あさひなぐ』ツイッターキャンペーンがららぽーと4館で実施!
第10回したまちコメディ映画祭 in 台東 特集
稀代の映像作家C・ノーラン最新作『ダンケルク』遂にそのベールを脱ぐ! エイリアン誕生の真実に迫る『エイリアン:コヴェナント』『散歩する侵略者』など近日更新。映画論評・批評の新コーナー

クチコミ満足度ランキング

初日満足度 観客動員数 DVDレンタル

満足度 投稿数 観たい ファン

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』まとめ
新作続々、公開中!マーベル・コミック映画ニュースまとめ
スーパーヒーロー、遂に終結!DCコミック映画まとめ