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リアルな殺陣で魅せる時代劇の原点
2017/5/6 23:03
by
みかずき
本作は、時代劇の醍醐味である殺陣を惜しげもなく盛り込みながら、死に様を重視する時代劇に不死という真逆で大胆な設定を加えた新感覚の作品である。
本作は、不思議な老人に不死の体を授けられた100人斬りの異名を持つ剣士・万次(木村拓哉)が主人公。不死の体になったことで生きる目的を見失い、無為に生きてきた万次の前に、殺された妹と瓜二つの凛(杉咲花)が現れ、父親の仇討ちの用心棒を依頼する。仇は逸刀流の首領である天津影久(福士蒼汰)。亡き妹への想いから、用心棒を引き受けた万次は、仇一味ばかりではなく、様々な敵を倒し、ついに仇と対峙することになるが・・・。
従来時代劇は主人公の死に様がクライマックスであり、死と隣り合わせの生き様の潔さがクローズアップされるケースが多い。これに対して本作の主人公は不死である。命に限りが無いので、ぼんやり無目的に生きている。優しさを捨てられず、無限(不死)の世界を彷徨っている感がある。そんな主人公が、凛と出会うことで、生きる目的を見出していく。生き地獄のような無限(不死)の世界から立ち上がっていく。木村拓哉が円熟味を増した“らしさ”を発揮して、難役である不死の主人公の彷徨を好演している。福士蒼汰も迷いのない真っ直ぐな青年剣士を熱演している。
主人公が不死になって登場した時、片眼、衣装から、往年の傑作時代劇・丹下左膳を思い出した。丹下左膳へのオマージュが感じられた。これは、かなり泥臭いリアルな殺陣をやる気だなという予感がしたが、その通りだった。主人公は様々な敵を倒していくが、圧勝ではない。不死身の体を活かした泥臭い満身創痍の辛勝である。様式美のようにスマートではないリアリティを重視した殺陣が際立っている。
剣術の流派統一の野心に燃える福士蒼汰のサイドストーリーが、出世、裏切り、虚々実々の駆け引きなど、典型的な時代劇の要素を取り入れていて、儚く切ない。荒唐無稽、無味乾燥に成りがちの作品に落ち着きを与えている。
本作は、全編、殺陣の連続であるが、特にラストの300人斬りとも称される殺陣は壮絶であり圧巻。万次、影久の鬼気迫る一刀入魂の太刀さばきは迫力十分。無限の住人である万次と有限の住人である影久の対照的な生き様がそのまま殺陣に体現されている。
本作は、あれこれ詮索せずに、殺陣の魅力を無心に無邪気に堪能したい作品である。
3人がこのレビューに共感したと評価しています。
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Re: リアルな殺陣で魅せる時代劇の原点
2017/5/7 10:57 by
あらぼ〜
みかずき様
お帰りなさい。
オーストラリアへ行ってらしたのですね。
映画を観た後に、ロケ地をチェックすると
また観たくなります。
意外と 行ったことがある場所が使われていたり。
故郷もよく使われています。
ロケ地巡りにハマる方もたくさんいますね。
みかずき様はご旅行もお好きなので、映画を観てから旅先を選ぶのもありでしょうか。
お疲れにもかかわらず、本作鑑賞。
さすがです。
> 木村拓哉が円熟味を増した“らしさ”を発揮して、難役である不死の主人公の彷徨を好演している。福士蒼汰も迷いのない真っ直ぐな青年剣士を熱演している。
賛否両論が吹き荒れ、他サイトでは書き込みで嘘つき呼ばわりされたり…熱烈ファンからの押し上げにあったり…
キムタク主演はレビューと評価が難しいです>_<
力作ですよねー
> 主人公が不死になって登場した時、片眼、衣装から、往年の傑作時代劇・丹下左膳を思い出した。丹下左膳へのオマージュが感じられた。
丹下左膳!これは勉強不足でした。
是非、観たいです。
>不死身の体を活かした泥臭い満身創痍の辛勝である。様式美のようにスマートではないリアリティを重視した殺陣が際立っている。
片目で、あの殺陣とアクション。ノースタントが話題になっています。木村さんは剣道をやっていたので、殺陣ができる!と友人から聞きました。
> 剣術の流派統一の野心に燃える福士蒼汰のサイドストーリーが、出世、裏切り、虚々実々の駆け引きなど、典型的な時代劇の要素を取り入れていて、儚く切ない。
福士蒼汰さんも初めての時代劇、健闘していたと思います。
> 本作は、全編、殺陣の連続であるが、特にラストの300人斬りとも称される殺陣は壮絶であり圧巻。万次、影久の鬼気迫る一刀入魂の太刀さばきは迫力十分。無限の住人である万次と有限の住人である影久の対照的な生き様がそのまま殺陣に体現されている。
迫力ありましたね。だいぶ早く観させてもらったので、今度は音響のよい映画館で観たいです。
2回目はもっと楽しめるかもしれまん。
来週、やっと美女と野獣を観に行くことになりました。
観たい映画になかなか追いつきません。
では、失礼します。 -
レスありがとうございます。
2017/5/7 14:22 by
みかずき
こんにちは。あらぼ〜さん。
みかずきです。
レスありがとうございます。
仰る様に、面白かった作品のロケ地を目の当たりにすると、作品への想いが強まりますね。今回は、現地に行って、ツアーガイドさんからの情報提供でロケ地のことを知ったのですが。偶然ですね。
さて、我々レビュアーは、鑑賞した作品で感じたことを有りのままに書くのみです。感じないこと、感じた以上のことは書けません。それがレビューというものだと思います。
本作の木村拓哉は、無限(不死)の世界を彷徨する万次を好演していました。力みがなく、やる気の溢れているわけでもなく、淡々とした佇まいが、不死という生き地獄のなかにいる万次の迷い、戸惑いを表現していました。木村拓哉のキャラに被るところもありましたが、不死の人間という実在しない架空設定の難役を、らしい演技で熟していました。
殺陣に関しては、色々な考え方があるでしょう。
様式美のような殺陣も良いですが、綺麗過ぎると現実離れします。殺陣って、殺し合いなわけですから、形振り構わず何でもありの方がリアルだと私は思います。
失礼しました。
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