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子供たちの未来へ

90点 2017/8/13 3:03 by STAYGOLD

この世界の片隅に

平和な午後の昼下がり。
おなかの大きなお母さんが、二人の姉妹とファミレスで食事していた。気分転換に外で仕事をしていた私は、何気なくその家族をみつめた。姉妹の内の小さい子が、オムライスを頼んだ声が聞こえてきた。お姉ちゃんは、ハンバーグ。ふたりはドリンクバーで選んだみどりいろのソーダ水を飲んでいる。しばらくして注文した料理が到着した。

でも、妹ちゃんが頼んだ「オムライス」は、オーダーミスで「大人のオムライス」が到着。店員さんの「申し訳ございません。お値段は同じで良いので宜しいでしょうか」のお詫びに「やったあ、大人のオムライスだ〜」と妹ちゃんの声が重なる。そして、お姉ちゃんの「いいな〜」とうらやむ声も。姉妹仲良く「大人のオムライス」を分け合って頬張るその姿は、今のこの国では、ごくあたりまえの風景。

しかし、あのときにも平和な瞬間はあった。あたりまえに子供たちの声が響き、大人たちはキネマやハイカラな食事を楽しむ。恐怖はそんな平和な日常の中を、静かに密かに忍び寄ってくる。後悔。なぜ、こんな事に。気がついた時には、もう手遅れだというのに。

明日、かの国からミサイルが飛んできて、そこに冥界の主の名がついた物質が搭載されていたら。はたして、誰がこの子達を、この家族を守る事ができるのだろうか。

今、この瞬間だからこそ、はかられる覚悟。
淡々と流れる日常。この中に今の私たちが飲み込まなければならない行間がある。たまにでいい。8月と言う時期だからこそ、今を見つめなおすきっかけにして欲しいと切に願う。

私たちの、たいせつな晴美ちゃんを失う前に。

※詳細は自己レス「愛の世代の前に」にて。

 

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  • 愛の世代の前に

    2017/8/13 3:55 by STAYGOLD

    昭和20年8月9日。
    あの日3歳になったばかりの私の母は祖母と共に大分から小倉に疎開していた。軍需工場のすぐそばに。
    もしあの日、小倉の空が霞んでいなかったら−。
    だから、どうしてもこの様なテーマには拘ってしまう。

    つい最近のドキュメンタリイで同世代である吉川晃司の祖父が広島の中島地区で旅館を営んでいた事を知った。川を挟んだ向かいは広島県産業奨励館だったそうだ。祖父はあの日の一ヶ月前に旅館の権利を譲渡。家族と爆心地から離れた場所へ引っ越した。ピカからピカドンの距離まで離れたのだ。

    運命。
    きっと、あたりまえの様にこんな話がごろごろしているのだろう。

    そして本作。
    もう語りつくされているタイトルだが、どうしても気になる部分がある。
    その点を振り返りたい。

    まず、【たんたんと語られる日常】についてだ。
    本作には実際に被爆するシーンが無い。その日までの日常が、その日からの未来が、全てが、なにもかもが客観的に語られてゆく。私たちが幼いころから見てきた「はだしのゲン」の凄絶さに比べれば、なるほどたしかに大人しい。だが、そうだろうか。「火垂るの墓」の絶望感に派手さがいるのだろうか。西海岸ブラッカイマー作品の様な、大味で間違いだらけ、ケレンだらけの真珠湾作品だけで良いのだろうか。人間は初見の衝撃には痛みを感じるが、やがて慣れて忘れさってゆく。ひとは生きていく上で、更に強い刺激に耐えなければならない。終わりの無いマラソン。むしろ深く静かにこころの裏側を傷つける、そんな繊細でやわらかな痛みの物語が必要ではないのか。

    町屋のひとたちの中に忍び寄る絶望。それを普通にあたりまえに紡ぐ方が、あの頃の本当の姿に近づく一歩になるのでは無いだろうか。今も昔も同じ。NOを言えないまま眼隠しをされて崖へ歩いて行く。そんな恐怖が感じられないだろうか。物資が無くなり、自由が無くなり、後戻りできない状態になった初めて気付く。もの言えぬ恐怖をあぶりだしてはいないだろうか。砂糖が無ければ子供たちの大好きな森永ミルクキャラメルもサクマドロップも作れない。わずかの間に、そんな時代になってしまうことを。

    それからもうひとつ。【無くした物の大きさ】か。
    おねえさんにとっての晴美さん。すずさんの存在意味である右手。
    あの子のおかあさんも、そして思い出と共に消え去ったあの街も。
    大切なものが、あっけなく消えていく。
    それは私たちが72年間の間に無くしたものに対する暗喩。
    そして「終戦のローレライ」でも語られた、無くなる事のない争いに対する痛みと怒り。エンディングでリンの人生を描き出す、すずさんの無くした右腕の絵は、それでも前向きに生きる為の希望。だからこそ、最後に右腕は明るくサヨナラをしてくれる。

    今、すずさんが生きていれば90歳を超えたおばあちゃん。はたして彼女は、今のこの国を観てどう思うのだろうか。すずさんやローレライのパウラの様に、あの時代に青春を生きたひとたちは−。きっとすずさんは、にこにこ笑ってほわんとしたエガオを見せてくれるのだろう。ほんとは一番強いのだから。

    この作品は私たちのすぐそばにいる誰か。そんな町屋のひとたちの物語。
    平和への祈りと未来への希望、そして贖罪の物語。

    あと数日で忘れてはいけない鎮魂の日を迎える。
    そんなとき、ほんの少しでいい。こころを落ちつけて感じてほしい。
    あの時代を生きてきたひとがいて、私たちの世界があることを。

    2017年2月5日 第38回ヨコハマ映画祭 生まれ変わる前の関内ホールにて。
    他、3回観賞。そして『アトミックカフェ'84』をリスペクトして。

  • 焼き場に立つ少年

    2018/1/9 12:27 by STAYGOLD

    今年1本目には、すずさんとの再会を選んだ。
    のんの柔いこえに逢いたくて。
    昨年のヨコハマ映画祭以来か。

    早稲田の小さなハコには、今でもたくさんのひとたちが訪れていた。今回が初めてだと、話す年老いた親子の姿も。シネコン全盛のご時勢、立ち見すら厭わず、皆が作品を楽しみにしていた。実際、上映前には十数人の立ち見のお客様がいた。本当にありがたいことだ。それだけのチカラが、この作品にはあるのだ。

    小さなハコで小さなスクリーンだが、今まで観た中で一番鮮やかな発色だった。これから新たに公開されるディレクターズ・カット版の為に行なった書き起こしのせいだけではない。あの水彩画の様な淡い画のいろが、しっかりと浮かび上がっていた。美しかった。調整の妙。

    やはりホンモノの映画館で観る映画は、本当にいい−

    意味のある映画は何度も観たくなる。それが価値だと思う。単なるカネ稼ぎのためのエンタメとは違う何か。企画を立て資金を仰ぎホンを書きコンテを切りロケハンをして…。そうして作品を届ける者は、こころに留めないければならない矜持がある。

    軍を欺いて長崎被爆の真実を残した従軍カメラマン、オドネル。彼が残した数百に及ぶフィルム。その中の47枚のシャシンが伝える静かなる地獄。

    「焼き場に立つ少年」のまなざし。親を亡くしたこどもたちの姿。すずさんの右手を、そっと抱き寄せた劇中のあの子の姿と同じ。彼らの瞳を見るとせつなさとやるせなさで息を吸うことすら、苦しくなる。こころざしで作品を届けたいと願う。単なる版権モノではない、何か。ルーティンワークではない、何か。それがあれば、想いは必ず届くと信じている。

    シンプルに。そして、解り易く。

    今年も、そんな作品に出逢えます様に。

満足度データ

この世界の片隅に
100点
141人(40%) 
90点
87人(25%) 
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採点者数
346人
レビュー者数
179
満足度平均
86
レビュー者満足度平均
87
満足度ランキング
4位
ファン
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