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後に続く言葉

100点 2016/11/25 6:04 by 出木杉のびた

この世界の片隅に

すずは広島に生まれ、呉に嫁ぐ。軍港である呉は空襲のターゲット、広島は言わずもがなである。○年○月と日付が出て、まるでカウントダウンしているかのように、その日は近づいていく。しかし、戦時下ではあるが、描かれるのは日々の暮らし。食料、衣料などの物資の不足はあれど、知恵を出しながら淡々と生活していく市民の姿がある。背景に戦争はあるものの、ひっそりとした愛情と、温かみのある笑いに包まれている。それはささやかな幸せ。多くの人々は疑いもなく戦争という現実を受け入れ、そんな世界で生き抜くためにそれぞれの居場所で闘っている。

現代人から見ると、辛く厳しい時代のはずなのに、とても穏やかな気持ちでこの映画が観られるのは、主人公すずのキャラが際立っているのが大きな要因だろう。いつもぼんやりおっとりしていて、大人になっても迷子になってしまうような頼りなさ。そしてこのすずに命を吹き込むことになった、能年玲奈改め"のん"の吹き替えの素晴らしさ。それこそのんの顔を思い浮かべてしまうのだが、実写化してものんに演じて欲しいほどイメージがピッタリだ。広島弁がやけに心地良い。思っている人がいるのに、見知らぬ男と結婚しなければならない時代。それでも自分の居場所を探して淡々と生きている。彼女が愛おしくて堪らなくなってくる。すずに幸せになって欲しいと、心の底から願う。

原作3巻からなる作品を映画化するので、当然エピソードのいくつかはカットしなければならない。時折スピーディーな編集についていくのがやっとになるくらい、できるだけ内容を盛り込もうとする努力が見受けられる。原作は映画鑑賞後に購入したが、概ね原作通り。原作者のこうの史代もかなり綿密に当時のことを調べているようだが、片渕須直監督は(例えば時限爆弾の状態など)更なる検証を加えて時代の真実を伝えようとしている。そういう意味でも、歴史に残したい作品である。

ほのぼのとも言っていい展開だが、やはり戦争の悲惨さも伝えなければならない。終盤すずとその家族を襲う悲劇は、やはり辛い。多くの人が空襲によって亡くなった。生き残ってしまった者の罪悪感は半端なかろう。すずは絵を描くのが好きで上手だった。彼女自身も失ったものは大きい。それでも生き残った者は、死んだ者の分まで生きなければならないのだろう。失ったものの代わりに現れるもの。生き残った者同士、お互いを補完、支えながら残りの生を生きていく。

知らない男のもとに嫁いだすずであったが、夫の周作もその両親もとても優しい、唯一義姉がきつい性格だが、悪い人ではない。広島も呉も悲惨な目に遭っている。そんな世界の片隅で、自分の居場所を探し続けていたすず。「この世界の片隅に…」その後に続く言葉を、じっくりとかみしめて味わいたい。二人がどこで出逢っていたか、物語世界に浸り過ぎ、ついぞ忘れていた。そしていつしか溢れていた涙は、とても温かかった。

 

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  • Re: 後に続く言葉

    2016/11/26 3:19 by 未登録ユーザ 焼津のウサギ

    原作が好きなので何年か前にアニメ映画化の企画が発表されてからずっと気になっていたのですが中々一人の時間を作る事が出来ないので観に行けていません。数年前にドラマ化した事がありましたがキャストが自分のイメージと異なり、あまり楽しめませんでしたが今作は予告を観る限りかなり原作を意識した作りになっており、期待しております。

    話しは変わりますが『逃げ恥』観ました。
    一瞬ですが電車から降りるシーンでハッキリと映っていましたね。あのシーンで集められた方の中ではかなり良いポジションだったと思います。
    原作漫画が好きでドラマも1話から欠かさず観ている作品なだけに羨ましかったです。

  • Re: 後に続く言葉

    2016/11/26 6:22 by 出木杉のびた

    焼津のウサギ。さん、おはようございます。

    今年はアニメ映画がいいものが多くて、楽しませてもらってます。本作もとても素晴らしく、今原作読んでますが、ほぼ忠実ですね。原作で描写しきれない部分の捕捉もあり、うまくまとめてあると思います。ドラマ化されていたのは知らずに見逃しました。映画館もほぼ満席で、こういう作品がヒットすめのは喜ばしいです。

    「逃げ恥」一瞬を見つけていただき、ありがとうございました。あのシーンももっと長く撮っていたのですが、やはり使われるのは数秒ですね。ピントは甘かったですが、自分とわかるほど大きく写っていたのでよかったです。これも漫画が原作とは、知りませんでした。ドラマはとても面白いですね。

    今日は浜松まで映画の撮影に行ってきます。県東部では「相棒」も撮っているのですが、こちらは人気のようで申し込んでもなかなか当選しないで悔しい思いをしております。

  • Re: 後に続く言葉

    2017/1/1 21:10 by みかずき

    こんばんは、のびたさん。
    みかずきです。
    明けましておめでとうございます。
    本年も宜しくお願いします。

    本作、大晦日に鑑賞しました。

    今まで観てきた太平洋戦争映画とは違う作品でした。

    本作は反戦映画ではありますが、
    単に、細やかな生活をしている市井の人々が戦争の不条理に翻弄される姿を描くだけではなく、それでもなお、強かに、しなやかに生きていく主人公の姿を通して生きることの大切さを問い掛けていて、とても感動的でした。

    失礼しました。

  • Re: 後に続く言葉

    2017/1/2 6:38 by 出木杉のびた

    みかずきさん、あけましておめでとうございます。
    本年もよろしくお願い致します。

    大晦日に本作鑑賞とは、一年の締めくくりとして素晴らしい作品を選ばれましたね。原作も読みましたが、多くのエピソードを巧みに織り込んだまとめかたもお見事だと思いました。反戦を高らかに謳いあげるのではなく、その時代を生きる一人の女性の日々の暮らしに重点をおいて描いているところが新鮮でもありました。どんな時代、どんな状況下でも、人々の暮らしはささやかに続いていきます。

  • Re: 後に続く言葉

    2017/10/27 1:26 by 未登録ユーザ 焼津のウサギ

    ソフト化されたのでようやく観る事が出来ました。
    そして5年ぶりくらいに原作を読み直しました。
    後から色々と調べてみて映画、原作共に詰め込まれた情報量の多さに驚かされました。
    例えば情景シーンに一瞬だけ小さく映っている人物が実際に原爆で亡くなった実在する人物をモデルにしていた等々…普通に観ていたら気が付かないような所まで徹底しており、何度も観直したいと思いました。
    山田洋二監督の『小さいおうち』もそうですが戦時下の庶民の生活イメージを覆すような当時のリアルな生活感が描かれており、新鮮でした。
    ヒロシマの悲劇を描いた作品は多くありますがそのすぐ近くで起きていたもののあまり大きく取り上げられる事の無かった数多くの悲劇と人々の暮らしを描いた素晴らしい作品でした。

  • Re: 後に続く言葉

    2017/10/28 6:01 by 出木杉のびた

    焼津のウサギさん、おはようございます。

    映画も素晴らしかったですが、やはり原作の持ち味もかなり良いですね。僕は映画観てから原作買いましたが、かなり忠実に丹念にエピソードを拾い上げてまとめられていると感じました。

    ちなみにうちの娘はこうの史代さんにはまってしまい、戦争とこうのさん絡みで卒論をまとめているようです。

満足度データ

この世界の片隅に
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採点者数
320人
レビュー者数
171
満足度平均
86
レビュー者満足度平均
87
満足度ランキング
3位
ファン
48人
観たい人
130人

 

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